まぼろしのように

"まぼろしのように"

粘性の夢はつやつやとして

汗の匂いがする、果実の匂いがする

いつか異国から届いた葉書の匂い

紙の海を泳ぐとき紙の月が空にある

異邦の歌声は艶やかに過ぎて

あなたを思いだす、粘性の夢を泳ぐ

それは黒髪の海、白い月は面影

寝返れば願うほどにからみつく、見知った手


窓を開け放つ、湿った風が汗と混じり

冷たく不快な十二月の空に


冬の虹、つやつやと冬の虹

紙ヒコーキが横切っていく


"まぼろしのように"

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