15

「瑠璃!!」

 そんな声がした。

 瑠璃が後ろを振り返ると、そこには琥珀がいた。

「琥珀」

 瑠璃は言う。

「瑠璃! 今、そっちに行くから、そこでじっとしていて!」

 琥珀は一歩を踏み出そうとする。

「こないで!!」

 瑠璃は叫ぶ。

 その声を聞いて琥珀は立ち止まった。

 琥珀の背後にある森が揺れて、そこから翡翠と先生があらわれる。

 二人は瑠璃と、それから琥珀を見て、無言のまま、森と瑠璃のいる崖のある場所との境界線のようなところで立ち止まった。

「みんなこっちにこないで! こっちに来たら、私はこのまま、崖の下に飛び降ります!」瑠璃は叫ぶ。

「瑠璃! なんでそんなこというの!」琥珀は言う。

 琥珀は泣いている。

 絶対に泣かないって決めていたのに、涙がどんどんと溢れてくる。

 止まらない。

 だって、悲しいから。

 瑠璃が、……崖から飛び降りるとか、……そんなこと言うから。


「瑠璃。どうしたんだい? なにか悩みでもあるのかい?」優しい声で先生が言う。

「悩みなんてありません」瑠璃は答える。

「ではどうして、宝石の国を飛び出したりしたんだい?」先生は言う。

「……初めから、決めていたことなんです」瑠璃は言う。

「次に、夜空に数え切れないくらいに星が輝く、そんな奇跡みたいな夜がやってきたら、……私は天国に行こうって、そう、ずっと前から決めていたんです」瑠璃は言う。

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