今夜はおでんで仲良しさん

勝利だギューちゃん

第1話

俺は水無月良(みなづきりょう)、1人暮らしをしている。

といっても、一時的だ。


住まいは実家で、両親は海外に転勤。

兄弟はいない。


今は高校生だが、両親は少しでも早く自活させようと、

俺を日本に残した。


炊事、洗濯、掃除など、全て自分でやっている。

やってみて、改めてお袋の凄さを感じた。


でも、慣れてみると意外と楽しい。

特に料理には興味が湧いた。

俺は社会に出るよりも、主夫のほうが向いているのかも・・

そう思い、晩御飯の買いだしをしに、スーパーへ向かう。


「今日は、おでんにしよう」

そう決めてスーパーについた。


少しでも経費削減のために、新聞はとるのをやめた。

なので、ちらしで安い所は探せない。


なので、足で探すしかないが、手ごろなのを見つけた。


ちくわ、こんにゃく、ごぼてん、がんもなど、

一通りはかごにいれた。

卵はまだ家にある。


後は大根だ。


今日は大根の特売日らしい。

そのせいか、主婦のひとたちが、手こそぎ持っていた。

残るは1本。


「逃してたまるか」

俺はその大根に手をやった。

しかし、それと同時にもう1本の手が、同じ大根に振れた。


「俺のだ」

「私の」


顔をあげると、そこにはクラスメイトの女子がいた。

「水無月くんも買い物?」

「そういう、早瀬さんも?」


クラスメイトの、早瀬渚さん。

とても、明るくて人気者だ。


「水無月くん、一人暮しなんでしょ?」

「うん、今だけだけどね」

「じゃあ、大根はいらないね。私に譲って」

「なんでそうなる」

「男はコンビニ弁当で十分」

「やだ」

「男の子は、女の子に譲りなさい」

「食に関しては別だ」

周りの眼がこちらに集中する。

でも、気にならない。


そんな時、早瀬さんが提案をした。

「わかった。大根は譲ってあげる」

「ほんと?助かる」

「そのかわり」

「そのかわり?」

「今夜、ごちそうして」

「なんでそうなる」

「でないと、譲らない」

俺は、渋々承諾した。


「わかったよ。俺が作ってやる」

「ほんと?ありがとう」

「そのかわり、妙な事したら、大声だすからな」

「それは、こっちのセリフ」

早瀬さんを招き、家に入れた。


「水無月くん、結構主夫してるんだね」

「まあね」

「大変でしょ?」

「いや、意外と楽しいよ」

こうして、今夜の予定だったおでんを作った。


テーブルの中央に置く。

「美味しそう」

「でも、家に連絡いれなくていいの?」

俺は早瀬さんに、訪ねた。


「そうだね。入れておく」

早瀬さんはスマホを取りだして、話をしている。

その間、食器を取りに行っていた俺には、会話は聞えなかった。


「連絡いれといたよ」

「これで安心。なんだって?」

念のために訊いた。


「今夜は泊まりなさいって」

「それは、まずいよ」

「それは平気だよ」

「どうして?」

「知らなかったの早瀬くん。私の家、君の家の裏だよ」

よくわからんが、目が届くということか・・・


女の子と鍋を囲んで差しつ差されつをしたいという願いが、叶った。

喜んでいいのかもしれないな。


断っておくが、掃除はルンバではないし、食器洗い機も使っていない。

全部、自分でやっている。


洗濯以外は・・・

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今夜はおでんで仲良しさん 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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