101.援軍の到着
一人奮戦する宗谷の元に駆けつけたのは、
崖上に立つ黒髪の女性もおそらくは、イルシュタットに所属する冒険者ギルドの精鋭の一人。宗谷は見覚えが無かったが、その技量に驚嘆していた。
(崖上まで、一五〇メートル以上はある。──こんな狙撃が有り得るものなのか)
絶命した
いずれも
かつて旅を共にした、黄金の勇者アレス、薔薇のロザリンドも弓矢が得意であったし、宗谷も
「遅れました。ソウヤさん、怪我は?」
同じく接敵を試みているセランは、憤怒の形相で
「今の処は。それより
宗谷は、数十メートル先、まだ消え止む様子が無い炎を片手で示した。
その言葉は『色付き』に対し、強い憎悪を抱いているであろう、セランに冷静さを促す意味もあった。
「厄介ね。
「おそらくは。鍔競る分には問題ないが、本体の生命力が弱まると起爆を開始する。腕を落としても駄目だ。だが、どうやら凍結させる事によって、起爆は制御出来るらしい」
「──凍結か。ソウヤさん、俺に任せてくれ」
宗谷の忠告を聞いていたセランは、沸き上がる憎悪を抑えながら、ロングコートから氷晶石を取り出すと、精霊術の詠唱を始めた。
「
セランの詠唱が終わると、宗谷の持つ
武器に氷雪精霊の加護を宿す精霊術。崖上から放たれる矢も、セランが弓に術を施したのかもしれない。実際通じるかはともかくとして、炎を操る
「助かる。これで射撃を待たず、炎の剣を封じられそうだ」
宗谷は言い終えると同時に、接敵した一体の
斬撃をあえて反応出来る速度に落としていた事には、気づかなかったのだろう。狙い通り、氷雪精霊の加護を得た
炎の剣に纏わり付いた氷塊による急激な重みで、
「魔力よ。魔弾となり敵を討て。
体勢を整えようとする
自動追尾が行われず、
一発、二発、そして不安定となった状態からの三発目で、
立ち上がり再起を図ろうとする
【ギアアアアアア!】
宗谷は眼を抑えて呻く
「失敬」
脈動の停止から事切れたのを確認し、刃から血を払い落とした宗谷は、再び索敵を開始した。
崖上に陣取っていた、黒髪の女性は姿を眩ませていた。
近くではルイーズと、一体の
後の先。敵の攻撃動作に対応し、最適解の
もし、この
手を止める事が出来れば、術中からは逃れられる筈である。だが、手を止める事は、おそらく許されていない。
愚直なまでに挑み、刻まれ続けた哀れな悪魔が、まとわりつく氷塊の重みで、よろめくのを確認すると、ルイーズは一刀を鞘に収めた。そして、もう一刀を両手に構え跳躍すると、
(手助けする隙すら無い。──残るは、セランくんが対応している一体)
少し離れた場所で一体を相手する、セランの闘い方は荒々しいものだった。目が血走り、力任せに斬撃を叩き込む姿は、鮮やかな二刀による剣舞を披露していたルイーズと対照的に映った。
復讐に心を支配されている。だが、その憎悪に任せた
「──薄汚い悪魔が。殺してやる」
両手に持ち替えた
「
その精霊術は完成しなかった。セランが詠唱を終える前に、鈍い音と共に
(──
「……ハッ、随分と綺麗に当たりやがったな。これが最後の一体か?」
宗谷が振り向くと、暗闇の向こう側に、
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