74.知識神信仰と二重術師
(……取っておきの方法?)
宗谷はミアの言葉が気になったが、この場での質問は止めておいた。ともかく二人が仲良くなった事は歓迎出来る事である。
メリルゥが酔った時に見せた人懐っこい態度からして、彼女は人見知りする性格ではないだろうし、スレイルの森で数か月共にした、
(……推測と打算で物事を考え過ぎか。……嫌な大人だ。僕の悪い癖だな)
「あの……あたしも、先に東門に行ってます。……どうか
冒険者ギルド前で思考を巡らせている処、護衛依頼を受けた冒険者の一人である、
丸眼鏡と両サイドに束ねた茶色の三つ編み、
「
「ええ。ミアとは、二度依頼で一緒になった事があります。……あっ、お互い宗派は違いますが、その点は心配は要りません。……
アイシャが他宗派の教えに寛容な態度を示した事に、宗谷は安心した。
もっとも
ただ、多くの街に神殿が存在する以上、神殿の運営には最低限の秩序が求められる。よって、極めて
(知識を善悪に選り分ける事自体が不純。か……まあ、確かに)
宗谷は二十年前の旅仲間だった、
「それは安心した。簡単に魔法能力の確認をさせて貰って良いだろうか。……君は
宗谷はアイシャに尋ねた。
ただ、魔術は一朝一夕で習得出来る物ではない、理論の習得には、莫大な費用と時間、そして一定水準以上の高い知力を必要とする。よって
「……はい。
アイシャの話を聞く限り、彼女の実力は神聖術、魔術共に初歩レベル止まりのようだった。
これも予想通りではある。
「……なるほど。ありがとう、アイシャくん。無事、護衛依頼を終えられる様、お互い頑張りましょう」
「ええ。……ソウヤさんは、
アイシャは、
「アイシャくんか……
宗谷はアイシャの努力を認めた。
「ええ。凄いですね。魔術と神聖術を両方。……私とソウヤさんが一緒になってるようなものでしょうか?」
「……くっくっ、ミアくん、面白い例えだね」
宗谷が笑いながら指摘すると、ミアが言葉の意味に気付いたのか、慌てて言い直し始めた。
「えっ……あ、咄嗟に、上手い例えが思いつかなかっただけですよ。……私とソウヤさんの……えっと、上手い例えが出て来ないですね……」
「無理に例える必要は無いのではないかね? と、冗談はさて置き。……凄い事は確かだが、茨の道でもあるのだよ。何せ二つの術の体系に共通項が無いのだから。山登りと素潜りを同時に極めるくらい困難な事だ。……彼女はこれからも絶えず学び、そして祈る必要があるだろう」
上手い例えが思いつかず頭を悩ませるミアを軽く流すと、宗谷はアイシャの歩もうとしている
「……アイシャさんを冒険者ギルドや酒場で見かける時は、いつも本を読んでいる事が多いです。……私は学が浅いので、羨ましく思う事があります」
「ミアくんも少しずつ知識は身に付いている。……森林浴に行ってた間、手が止まってしまったな。この依頼が終わったら勉強を再開しよう」
(……教える事は、苦痛ではない。……僕は
宗谷の頭にその考えが
教えて苦にしないのは、ミアのような素直で模範的な生徒である。仕事となれば、素直に指導を受け入れない、悪い生徒も相手にしなくてはいけないだろう。同時に、学生時代に家庭教師をしていた頃、手を焼いた悪い生徒が居た事を思い出した。そして、厄介な魔術指導の約束をしたシャーロットの事で憂鬱になりかけている。間違いなく向いていない。
「朝は
宗谷は独り言の、先の言葉を紡ごうとして、止めた。それは知り合ったばかりのアイシャを値踏みする事になりかねない。だが、彼女の見せた
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