55.剣を求めて武器屋へ
ミアとメリルゥの二人を見送った後、宗谷は朝食を簡単に済ませると、冒険者の宿を後にした。
さわやかな朝である。のんびりと街でも散策し、休暇を楽しみたい気分ではあるが、次の依頼に備えて必要な準備をしておかなくてはいけない。
第一に、
弱い怪物にまで魔術を行使していては息が続かないし、野盗から拝借した丈の短いダガーを主力武器として戦うには心許ない。武器無しの格闘も一応こなせるが、対人ならまだしも、凄まじい筋力を持つ怪物相手に、格闘を仕掛けるのは自殺行為だった。
第二に、魔術の
だが、
(レベッカくんが居る間に、
幼馴染である勇者ランディを失い、心を病んでしまった女魔術師のレベッカを思い出し、宗谷はため息をついた。昨日イルシュタットを発ったレベッカとトーマスの二人は、まだ、故郷の村に向かっている最中だろう。彼女の心の傷が癒えるまでに、どれくらいの長い時間がかかるだろうか。
そんな事をぼんやりと考えつつ、魔法石の事は一旦置き、ひとまず冒険者御用達である、武器屋に足を運ぶ事にした。
「いらっしゃい」
髭を生やした中年の男が、扉を開け、店内に入る宗谷を出迎えた。おそらく武器屋の
「初めて見る顔だね。どんな武器をお探しかな。……少なくとも、でかい得物では無さそうだね」
武器屋の
「初めまして。納刀が可能な片手剣がいいね。こんな成りだが、一応魔術を扱う魔法戦士なのでね」
「魔法戦士……ん? まさか、その黒っぽい服は、噂のソウヤさんかね?
宗谷の噂は武器屋の
「おや、御存知でしたか。仰る通り、僕が宗谷です」
「おお……ソウヤさん、サインを貰えるかな? その分、値引きさせて貰うよ。片手剣と言ったね。ウチで一番売れている
武器屋の
「ふむ……金貨一五枚か。刃の作りはしっかりしてそうだ。見栄えも悪くないな」
両刃の
「片手武器で剣士に一番人気があるのがそれさ。初心者から中級者にまで、幅広く使われているよ。幅広剣なだけに」
武器屋の
「悪くは無いが。……峰のある片刃の方が僕は好みかな。
「ウチでは
宗谷は折れた
「ははあ……ソウヤさん、これは王都の騎士団の軍用品だよ。ほら、ここに小さな刻印がある。こんなもの何処で調達したんだね。非売品だろう」
「野盗が使ってた物を押収しました。……なるほど、そういう事だったのか。はは、あまり大っぴらにしない方が良さそうですね」
どういった経緯で、草原の野盗の手に騎士団御用達の
騎士団の軍用品という事で、使い続けていたら後々何かトラブルに発展した可能性もあったかもしれない。廃棄する事になって良かったと言えなくも無さそうだ。
「一般品より質の良い武器。というのは手に入りますかね? この
「ふむ……イルシュタットで高品質の武器と言えば、
宗谷はその名前を聞き、驚きの表情を見せた。
「ドーガ・グランディ。彼の工房がイルシュタットにあるのかね?」
宗谷は思わず、武器屋の
「ああ。鍛冶師のドーガと言えば有名だろう。ただ、誰にでも武器を作ってくれる訳ではないよ。昔はウチにも卸してたんだけどね、今は身体が厳しいのか、
「そうか。……彼の武器なら、是非使ってみたい物だが」
宗谷は
「冒険者ギルドの紹介状が必要なはずだよ。実力者以外お断わりという事だな。でも、
「では、冒険者ギルドで紹介状を貰えるか聞いてみるとしよう。……
親切に色々教えて貰ったが、今回この店での片手剣の購入は無くなりそうだった。宗谷は申し訳なさそうに、武器屋の
「いやいや。
特に気分を害した様子も無く、武器屋の
「だが、一つだけ勧めさせて貰おう。ソウヤさんは、荷物を魔術で収納してるようだが、こんなのはどうかね? 服に忍ばせるには丁度いいよ。勿論、怪物退治に使えるものでは無いがね」
武器屋の
「これは……
「殺傷力はあまり無いよ。まあ、見る人が見れば
「
宗谷は交渉の結果、銀貨八枚を支払い、
「毎度あり。……ソウヤさんに何も買わせず、サインだけ店に飾るのも詐欺っぽくなってしまうからな。これで堂々とウチに飾れるよ」
武器屋の
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