ルジャ子供時代

彼女にとって、神は友達であり家族であった・・・いつも隣にいて、当たり前の存在であった・・・・そんな中、意識があって、初めて会った神は、本当に印象的だった・・・・


『フハハハハ!!ほら!!腹踊りだぞ!!!』


そう言って、彼はお腹のあたりに変な顔を書き、変な踊りを踊っている・・・そんな中で、私は思いっきり笑っていた・・・


私にとって、神とは家族であり、友人であった・・・親がいなかった私は神々達がその代わりだった・・・だから神々と会うのは楽しかったし、嬉しかった・・・そんな中でも、一番最初に会った、変な神様は私のお気に入りだった・・・私はその神をダーと呼んでいた・・・何故そう言っていたのかは、忘れてしまったが、喋れない時から一緒に居た為、私が無為意味にダーと言ったのが、そのまま名前になってしまったのかも知れない・・・今となっては思い出せないけれども・・・私はダーと一緒だといつも笑っていられた・・・だが・・・それも・・・本当に短い期間だけだった・・・


・・・私が神卸の巫女として周りから認識されて、私の環境は変わった・・・神卸の巫女として様々な重圧、重責に苛まされた・・・神卸の巫女として様々な住民からの期待、教会からの圧力・・・子供だった私はそれらに耐え切れず段々疲弊していった・・・


私は他の人達が嫌いという訳でも無かった・・・神卸の巫女になる前は、皆、私を普通に他の子供達とな地様に接してくれたし、笑いあってくれていた・・・嫌な大人達はたまには居たが、基本的に皆良い人ばかりだった・・・だが、私が神卸の巫女になって大人達は皆よそよそしくなった、少し上のお兄さんやお姉さん達も普段の様な接し方をしなくなっていた・・・・


ルザーとルウェールも神卸の巫女になってから出会った・・・彼らは私より少しお兄さん、お姉さんだったが私を家族や友人の様に接してくれた・・・大人達は、それを咎めたりしたが、彼らは、それを無視して、親し気に接してくれた・・・後で気づいたが、彼らは私の付き人として、あてがわれた為、本来なら上下関係を気にしなければいけない間柄だった・・・だが、彼らは、敬語も使わず、駄目な時は駄目と言い、辛い時は、抱きしめて支えてくれた・・・私にとってかげがいの無い人達だった・・・


だが、2人が居ても・・・私の心は段々疲弊していった・・・神卸の訓練、神卸による神の力の行使、そして、周からの重圧・・・私は体も心も段々辛くなっていき・・・そして・・・私は倒れた・・・


――――――――――――――――――――――――――――――――


久しぶりに神の世界に来た・・・最近は忙しくて、この世界に来る事さえ出来なかった・・・だが、倒れた事により・・・無意識に意識だけをこの世界に来たのだろう・・・


『フハハハハハ!!どうしたルジャよ!!そんなに悲しそうな顔をして!!!』


そんな中、笑い声が聞こえた・・・この声はダー?


・・・彼は普段と変わらない調子で話しかけて来た・・・私は思わず・・・神の世界でダーに抱き着いた・・・


『・・・どうしたんだ・・・?』


私は今抱えている思いをダーにぶつけた・・・子供だから、そこまでうまく喋れたかも解らない・・・泣き声のまま喋ったから伝わったかも解らない・・・それでもダーは黙って聞いてくれた・・・


『・・・1つだけ聞きたい・・・ルジャはどうしたいんだ?』


そう言われて、黙る・・・私がどうしたい・・・?そんなの・・・解らない・・・まだ、子供だった・・・私はそう言われ、黙った・・・いきなりそんな事を言われ答えられる子供などいないだろう・・・大人だってその問いに答えられない人もいるのに・・・・


『・・・ルジャ・・・はっきり言っておく、神卸の巫女は辞めることが出来る・・・神卸の力を我が無くせば、お主は普通の女の子として生きていけるだろう・・・』


『お願い!無くして!!』


私は泣きながらもそう言った・・・私はもう嫌だった・・・大人達の腫物の様に扱う様子を見るのも、扱われるのも・・・そんなのを続けられるのが神卸の巫女だと言うのなら、私は嫌だ!!辞めたい!!!


『・・・・解った・・・ルジャ・・・今まで無理をさせてごめんな・・・・』


その言葉を最後に、ダーの声が遠くなり、気配も消えていった・・・・


―――――――――――――――――――――――――――


私はその後、神卸の巫女としての力が無くなったことが知れ渡り、巫女の資格を剥奪された・・・・周りも今だにぎごちないが前と同じ様な扱いに変わってきている・・・・ルザーもルウェールも離れ離れになる事が無く一緒に過ごしている・・・・後から聞いたのだが、2人共、戦士と神官としての才能が高く、将来有望だったのだが、出世の道を諦め、半ば強引に私の教会で働くことを決めたと言う・・・・2人には本当に頭が下がる思いだ・・・・


ただ、あの神の世界に行ったのを最後に、ダーを含めた神達と話が出来なくなってしまったのが、心残りだ・・・・今まで、家族当然で会えるのも当たり前の状況が一切会えなくなってしまった現状に悲しくもあるが、自ら決めてしまった事だと言う思いから、涙を飲んで過ごしている・・・・今は、ルザーとルウェールの二人がいる・・・それだけで、私は幸せだった・・・


あの日までは・・・


神卸の力を返還して半年後、その日はいきなりやって来た・・・


私は何時もの様に夜になったので、お布団に入って寝ていると、外が騒がしいことに気が付いた・・・・何だろう・・・そんな事を考えていると・・・


「ルジャ居るか!!」


ルザーが私の部屋に入って来た・・・・何だか慌てているみたいだけど・・・・どうしたの?


「・・・・反乱だ・・・・!逃げるぞルジャ!!」


これは、後から聞いた話ですが、この世界では、神卸の巫女のパワーバランスが大きく、私が神卸の力を返還したことにより、今まで神卸で解決していた事柄が出来なくなって、治安が悪化・・・その不満を神卸が出来なくなった教会に向けたそうです・・・・


他の神卸の巫女に頼めばいいと思いますが、私の神卸は他の巫女以上に力を持っていたらしく、代役になる事が出来なかったそうです・・・・だが、その時にの私はそんな事は解らずに、ただただ・・・震えて・・・ルザーに連れられ逃げていました・・・・


ある程度逃げた時に・・・ふと、外を見ました・・・いえ・・・見てしまいました・・・・


そこには、大量の人の死体と血を流している人達がいました・・・中には見知った人達もいます・・・


「ルジャ!!」


そう言われて、私はルザーに抱かれながら・・・意識を手放すのでした・・・・


―――――――――――――――――――――――――――――――


気が付くと、前まではいつも見ていた光景が広がっていました・・・神の世界・・・何故・・・私は力を神に返したはず・・・


『・・・世界は生まれた時から変化する・・・それが良い事か悪い事かは解らない・・・ただ単に変化して人を変えていく・・・・』


懐かしい声を聞いた・・・声のする方に行くとダーがいた・・・ただ、何時もの様に笑ってはおらず・・・ただただ、苦しそうに話している・・・・


『・・・お前がいる世界は、負の感情が集まりやすい世界なんだ・・・本来我達の世界は全て、争いが無い世界を目指していた・・・・最初に誕生させた人間は優しい心だけを持った人間だけを作り出したつもりだった・・・・だが、人は生きているだけで変化していく・・・例えそれが、負の感情でも、だからこそ、世界に感情が溢れ・・・その感情がいくつかの世界に溢れたのだろうな・・・』


そう言って、ダーは更に悲しそうな顔をした・・・そんな顔しないでよ・・・ダー


『我達神は何か手を打とうと思った・・・だが、極端な手出しは、世界の秩序を奪い、下手をすれば、世界の崩壊を引き起こしてしまう・・・だからこそ、この世界にいる比較的善良な心を持った者を神卸の巫女として力を与え・・・世界の秩序を平定させる様に義務付けさせた・・・そう世界を定めてしまった・・・・』


ダーの顔に一筋の涙が流れた・・・・


『・・・我はお主なら神の力をきちんと使えると思い、神卸の巫女としての才能を与えた・・・・・・お主は才能との親和性が高かったのだろう・・・我が思っていた以上の力を引き出していた・・・お主一人で世界を平定出来るほどまでの力をな・・・』


ダーの拳に力が入る・・・その拳は震えていた・・・・


『だからなのだろうな・・・こうなってしまったのは、お主一人で様々な問題を解決していた為に、お主が力を無くした結果、人々の負の感情が爆発してしまったのは・・・・・』


そう言われて、気づいた・・・・話の内容は難しくて余り解らなかったが、1つだけ伝わったことがある・・・


この争いは・・・私が力を手放した結果なの・・・・?


『・・・お主に、普通の女の子として生きられると言って、結局はこれだ・・・・本当にすまない・・・』


そう言って、ダーは頭を下げる・・・・今までの争い人が死んだ事、人々が血を流している事・・・その全てがフラッシュバックする・・・それ・・・全てが私の所為・・・意識が遠くなる・・・このまま意識を手放して・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う!!そうじゃない!!


私はダーを見つめる・・・そうだ・・・今私がやる事は何だ・・・ルザーはいつも私を守ってくれた・・・何かある時はいつも飛んできて、前に立って守り通してくれた・・・ルウェールはいつも挫けた時、私が泣いた時、そっと抱きかかえて、私を撫でてくれた・・・私の心を守ってくれていた・・・教会の子供達・・・私が神卸の巫女だろうとそうじゃなくてもいつも通りに接してくれた・・・意地悪な子もいたけど、分け隔てなく接してくれた・・・そして、教会の人々・・・大体は腫物を触るか、嫉妬の様な目をして見られてきたが、それでも、優しい人はいた・・・例えそれが、腫物を扱う様な扱いでも、決して突き放す様な態度はとらなかった人はたくさんいた・・・・


守りたい者があるんだ・・・逃げてはいけないんだ!!


「ダーお願い・・・神卸の巫女としての力を戻して・・・」


『・・・いいのか、また、あの生活に戻るぞ・・・苦しい道だぞ・・・』


確かに苦しかった、嫌だった・・・だけど・・・先程までの光景を思い出す・・・様々な人が死に傷つく姿・・・どんだけ、苦しかったのだろう、どんなに痛かったのだろう・・・例え、どんな人達でも知らない人でもそんな姿を見るのは嫌だ・・・そして、知っている人なら尚更だ!!


「・・・さっき、ダーが言った事・・・ほとんど解らなかった・・・だけど、このままだと、目の前の人達が死んでしまう事は解った・・・・私は目の前の人達を救いたい!!」


そう言い放った・・・はっきり言って、ダーの言っていた事はその時はほとんど理解していなかった・・・だけど、目の前に苦しんでいる、人達を救いたい・・・ただ、その一心でそう言った・・・ダーは少しだけ寂しそうな顔をして・・・


『そうか・・・』


とただ一言だけ言い放った・・・そして・・・


―――――――――――――――――――――――――――――――


私は意識が戻るとそこには、私を抱きかかえて、私の名前を読んでいるルウェールと傷だらけになりながらも私達を守っているルザーの背中が見えた・・・


私はおもむろに立ち上がると、神卸の舞を踊った・・・そして・・・・


―――――――――――――――――――――――――――――


結果として、あの反乱は私が神卸をした事により鎮圧した・・・私が神卸が出来なくなった事がそもそもの反乱のきっかけだった為、当り前と言えば当たり前だったが、反乱以外に意思表示の仕方が無かったのかと今でもそう思ってしまう・・・あの日沢山の人達が死んだ・・・


傷だけで済んだものもいるが、私が知っている人達も中には死んでいる者もいた・・・その中には私と遊んだ子供もいた・・・・・


私はもう逃げないと決めた・・・これだけの悲劇を繰り返さない為にも・・・・


治安は私の神卸の力を使いすぐに収まった・・・神の帰り際に『・・・神の力を当てにしたこの世界は長く続くのか・・・』と言っていた・・・私にはそんな事は解らないが・・・過去の惨劇を繰り返さないその為に私は舞を踊り続ける・・・・


あの後、ダーと話が出来なくなってしまった・・・他の神々とは話が出来るのだが、ダーだけは会うことが出来ない・・・・他の神様もダーと言う名前ではどの神様か解らないらしく、その後どうなったのか解らない・・・本当の名前を聞いておけばよかった・・・


だけど・・・聞かなくても良かったのかも・・・もし、もう一度ダーに会ったら、決心揺らいでしまいそうだから・・・・・


そう思いながらも今日も踊る・・・人々の生活を守る為・・・あの日の惨劇を繰り返さない為にも・・・・

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