魔王とダールの考察
・・・我は魔王・・・この偽りの世界を滅ぼす為に生を受けた者・・・生を受けこれまで、幾千・・・いや・・・もはや数えきれない程の世界を壊してきた・・・
全てが順調・・・ここの世界の住人は闘う術を持っている世界自体少ない為、ほぼ抵抗無く壊すことが出来ている・・・
念の為、何かあった場合、逐一連絡をせよと命じておったら、神の力を使う者がある世界で観測されたと報告された・・・その力は微弱だったと言っていたが・・・
何故使える・・・?全ての世界には今、我らの神が偽りの神の力を封じる為に枷を付けているはず・・・どうやって神の力を・・・
念の為、観測された世界に魔界との境界線がある大陸に上陸されない様、海に我の力の一部を与えた、魔物達を放っておこう・・・もし、万が一神の力を使えようとも、わずかな神の力・・・圧倒的な力の前には塵に等しい・・・・
・・・・・・・・・・だが・・・神の力が僅かながら確認できた以上、向こうの偽りの神も侮れないという事なのだろう・・・・・・念の為、見回りを強化しておくか・・・反逆者共の掃除にもなるだろうからな・・・
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・・・・・この世界に来て驚いた事がある・・・魔族が必ずしも全員が我らの世界に敵対している訳では無いという点だ・・・・
船が壊された時、神の力を使わず、何とか魔界に流れ着いた・・・神の力を使わなかったのは、魔王に検知された場合、今度こそ、助からないと判断した為だ・・・魔王の力・・・あの者の力は創造神に言われたことが確かなら・・・神に匹敵する・・・制限を受けている今・・出会ってしまったら・・・敗北は必須なのだ・・・
だから、この世界に、やって来た時に、魔族に会ってしまって・・・我は内心焦っていた・・・このまま、魔王に情報が流れてしまえば・・・ここまでやってきた意味がなくなってしまう・・・そう、思った・・・だが、ここの村の人達は闘う意思を見せず・・・我達に体を休める場所まで提供してくれた・・・・
「体は大丈夫かね?色々傷だらけだったけど・・・?」
「ああ・・・本当に助かった・・・ありがとう・・・」
そうして、今は、集落を見回りながら、魔族の女性と話しをしている・・・
この世界は向こうの神が作った世界・・・そうなれば、必然的にこちらの世界に敵対する者のみ現れるのが必須・・・なのに・・・何故・・・この様な・・・我達を受け入れる人達がいるのか・・・?
「・・・いいね・・・私達溢れた者はこうやって身を集めて・・・助け合うのが習わしだからのう・・・?」
「溢れた者・・・?」
「そうね・・・他の魔族達は、この魔界以外の世界を壊すのが使命の様に動くけども・・・私達はそんな事したく無くてねえ・・・・反発していたら・・・追われて・・・そうやって、そう言った人たちが身を寄せ合ってきたんだよ・・・溢れた者って言うのは・・・あいつらが言っていたのを遠くから聞いた人がいてなあ・・・あいつらは、私らを溢れた者って言うんだ・・・魔族の本分を忘れた・・・魔族では溢れた者・・・って言う意味でさあ・・・」
そう言って・・・彼女は下を向いた・・・・闘いたくない・・・?
「ここに居る人達はみんなそうなのか・・?」
「ええ・・・他にも理由がある人もいるかも知れませんが・・・大体は・・・」
そう言われ・・・我は考える・・・・何故・・・そんな考えが出来る?向こうの神が・・・そんな考えが出来る様に魔族を作る訳が・・・そう考えた瞬間・・・ふと・・・神の力で・・・目の前にいる・・・魔族の精神を見る・・・神の力を使うのは気が引けるが・・・僅かなら感知もされないだろう・・・それにこれは必要な事だ・・・
・・・これは・・・・我達の世界の精神が入っている?
精神とは、神達が肉体を作った際、作り出す。その者の本体に当たるもの・・・その精神は神々によって作り出す傾向が違う・・・我が作り出す精神は、皆笑いを求める人々を作り出し・・・知識の神が作り出す精神は・・・思慮深い者共を作り出す・・・そして、魔界が作った神が作った神は、我達の世界を壊す為の精神を作り出し、破壊を求める人々を作り出しているはずが・・・これは・・・この人達はそれだけを求める精神だけでは無く、他の神達が作り出した精神が入っている・・・
その事実に気づいた時、我は一つの仮説を立てた・・・
(我達の世界と魔界の世界が混ざっている?)
そう考えた瞬間、事態は思っていたより深刻では無いか・・・・そう思ってしまった・・・
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「今・・・いいか・・・」
「ええ、大丈夫よ・・・」
我は見回りをして、集落を一通り見た後、ジュル達の元に戻って来た・・・ヴァエは、自分の主であるナールと先程まで、魔力を渡してくれて、今は眠っているルウェールを別な所に運んでもらい・・・看病してもらっている・・・2人には本当に申し訳が立たない・・・ヴァエに関しても、気を使ったのだろう・・・我達を2人にする為に・・・わざわざ、別な場所に2人を移動してくれている・・・
神なのに・・・・何も出来ない自分が情けない・・・だが、今は出来る事をしなければ・・・そう思い、先程の仮説をジュルに話す・・・
「・・・やっぱり・・・ダールもそう思う・・・?」
「ああ・・・やっぱりお前は既に気が付いていたか・・・」
「ええ・・・ここに着いた瞬間ね・・・・とは言え・・・そうなると・・・色々厄介になりそうね・・・」
そう言ってジュルは溜息をつく・・・
「・・・我達の世界と混ざってしまっているのなら・・・魔界を消滅させた瞬間、恐らく混ざっている我達の世界・・・恐らく全ての世界が、混ざっているから・・・我らの世界が同じ様に消滅されるだろうな・・・」
そう・・・本来、世界は他の世界に影響を与えない様、神毎に世界を区切っている・・・だが、あの神は世界を全て、魔界を軸につなげてしまった・・・そうなれば、魔界を壊す=我達の世界を壊すことになってしまう・・・・
「それだけでは無いわ・・・ここの住民を見て確信したけど、私達の世界にも魔族の思想が混ざってくるでしょうね・・・ここの住民たちの様に・・・」
精神の混合・・・そうか・・・我達の世界にも同じような事が起きる可能性があるのか・・・だが・・・
「だが、この魔界を作った神は・・・何故このような事を・・?我達の世界を滅ぼすだけなら、この様に世界を繋げるのは・・・逆に不具合があるのでは・・・?」
そう、ここに居る住民は魔界で生まれたのに、世界への破壊活動を行わない魔族達・・・そんな者を作り出す可能性をあの神が気づかないはずが無い・・・・何故・・・その様な者達を生み出す可能性が解っていて・・・そのような事を・・・
「・・・・・・・解らない・・・だけど・・・思っていたより、今回の任務根深いようね・・・」
そう・・・ジュルは言う・・・・そして、空を見上げ・・・
「願わくは・・・我らの創造神の計画内の範疇でありますように・・・」
そう彼女は呟いた・・・・ああ・・・・頼むから・・・彼女の魂をかけるのだ・・・絶対失敗をしないでくれ・・・・
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