強襲

「・・・・・・・大丈夫か?」


「大丈夫・・・」


我は、あれから眠らずに作業しているジュルに対し話しかける・・・その身体では・・・本当は辛いはずだ・・・なのに・・・こいつはその事を表に出さない・・・・


「・・・・・・・本当に済まない・・・本来なら・・・」


我が謝ろうとすると、ジェルが抱きしめて来た・・・


「・・・私が決めたことよ・・・それに貴方は・・・なのだから・・・笑っていないと・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・フハハハハハハ!!そうだな!!勇者達に辛い運命を託しているのだ!!せめて笑わせないとな!!」


「うん!それこそ貴方・・・・じゃあ、作業を続けるね!!」


「・・・確かに急がなくてはいけないが、少しはお前も休んだ方が身体が持た・・・」


「ほら!また笑うの忘れている・・・大丈夫・・・最後の仕事でしょう?私達の・・・やらせて・・・」


「・・・だな・・・勇者達には重荷を背負わせ過ぎているからせめて我達の出来る精一杯の事をしよう!!」


「ええ・・・・大丈夫よ・・・あの子達なら・・・どんな結末になっても最善を尽くして頑張れる・・・」


「フハハハハッハ!!ではその最善の手が上手くいく様、我らも修行を尽くさなければな!!」


そう言ってジュルと2人で笑い合いながら夜を過ごす・・・・・・・・・・ああ、本当に最後まで笑っていきたいな・・・・・


―――――――――――――――――――――――――


あれから半月僕達は訓練を続けた・・・訓練場所は船がある洞窟の最深部だ・・・ムファさんには本当に頭が上がらない・・・船をくれただけでは無く・・・私達に寝床を確保してくれているのだから・・・


因みに訓練の相手はあの変態だ・・・・必死にやっているつもりなんだけど・・・あの変態に訓練中一回も攻撃が当たらない・・・


「フハハハハハハハ!!!どうした!!どうした!!」


「クッソーーー!!何で当たらない!!!」


一発もかすらない何ておかしく無いか?そう思って剣を振っていると・・・海賊の一人が駆け込んで来た・・・確かダランさんだっけ?


「大変だ!!街の方から煙が上がっている!!」


・・・・・えっ?


「・・・・煙以外の情報は?」


ルザーがそう聞く・・・えっ・・・何が・・・


「解らない・・・遠すぎて詳しくは・・・ただ、煙の臭いの中に死臭が混じっているように感じた・・・・下手をすると・・・バルーエは・・・・」


その後の言葉をダランさんは濁した・・・僕は・・・


「・・・勇者どうする?はっきり言って・・・今から行っても間に合うか解らない・・・それどころか、相手が魔族だった場合、俺達の存在が相手にばれる可能性がある・・・その上でお前はどうしたい?」


そう・・・ルザーが聞いてきた・・・・僕は・・・・


「・・・・勇者様・・・貴方は貴方の思いのままに動いて下さい・・・後悔する行動より後悔しない行動をしてから悩めばいいじゃないですか・・・・私は貴方を信じます・・・」


そう・・・ルウェールが後ろから抱きしめながらそう言う・・・僕は・・・


「・・・街の人達を助けたい・・・皆力を貸してくれ!!」


そう言い放った・・・それが・・・どう言う意味を持つか知らないままに・・・・・


―――――――――――――――――――――


1000を超えるダエイの兵士がこのバルーエの港街までやって来た・・・何故?こんな外れ街に?こんな大量の兵士が・・・


最初は勧告だった・・・ここに居るダエイの兵士を殺したものを差し出せと・・・私達は兵士達に化け物に殺されたのではないかと伝えた・・・


半月前化け物の死体が裏通りで発見されたのだが、その時ダエイの兵士の鎧が近くに散乱していたのだ・・・なので、状況的に化け物に兵士が殺されたのではないかと進言したのだ・・・


「嘘を申すな!!」


「ほ・・・本当です・・本当に化け物が・・・・死体も保管していますから見て・・・」


そう、言ったバルーエの兵士は・・・次の瞬間首を切られていた・・・


「こやつらは罪人を匿っているぞ!!全員反逆者として死刑だ!!」


「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」


そう雄叫びをあげた兵士は私達の街を蹂躙していった・・・・・・私達の街はものの数分で瓦礫と化していく・・・


「あいつ等すざましい魔法を使うぞ・・・」


「何だよ!!あの動き人間じゃ・・・うわーーー!!!」


「死ぬ・・皆死ぬんだ!!!」


・・・そこは地獄だった・・・美しい景観は無くなり・・死臭と瓦礫の山が街を襲った・・・・


ああ・・・夢なら早く覚めて・・・・・・・


――――――――――――――――――――――


「いいのか・・・もし魔族ならもう街は・・・」


「・・・・・それでも・・・あの子に辛い選択はさせたくありません・・・例えそれが間違いだとしても・・・貴方も何故?彼女に選択の余地を残したのですか?こうなる可能性も考えていたでしょうに・・・」


「・・・・・はあ・・・やっぱり甘いかな・・・」


「ええ・・・でも・・・それでも一緒に行くと決めましたから・・・」


「・・・そうだな・・・・」

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