別世界へ

あの後、隔離した空間は元に戻し、俺もぶっ倒れた・・・気づいた時には、城のベットで寝ていた・・・・


リイムは何度も体を点滅させ・・・存在自体危うかったのだが・・何とか元に戻った・・・


「ロイドの元に戻るだけなのに何で泣いてるの?」


そんなこと言うリイムに俺は怒鳴った・・・当り前だろう・・・リイムが居なくなるなんて許せないだろうが・・もう、体感で十年以上一緒なのだ、リイムの自意識が無くなるなんてありえない


あの後、リイムと話し合った・・・


「このままではこの世界は消える」


とリイムが言った・・・幸い、消されそうになっても、この世界1つ分なら俺かリイムでも出来る様になっている・・・


だから、万が一あの神が消そうとしても何とか俺達が生きている限りは阻止できる・・・


「あの下級神相手ならね・・・」


・・・リイムはその後、信じられない事を言ってきた・・・何でもあの神は神の中でも一番下の位らしく・・・もっと上の神相手だと相手にもならないらしい・・・


他に対抗手段は無いかと俺は藁にも縋る思いで聞いた・・・


「他の世界の神に助けを求める・・・」


何でも今はこちらの世界の神が別世界の神に喧嘩を売っているらしく・・・その為、戦争をする為に世界同士が重なっている状態らしい・・・なので、重なっている世界・・つまり戦争を仕掛けられている世界に助けを求めるという方法を提案してきたのだ・・・


でもそれって・・・


「それって、敵側の国から国が酷いから助けてというかなりめちゃくちゃな要求な様な・・・」


「・・・だけど、それしかない・・・はっきり言って、この世界の絶対神が出てくる可能性がある以上、それと同程度の神の助けが必要・・・」


「他の神に助けは・・・」


「この世界の神達は全て絶対神に心酔している・・・他の世界の神の世界に行こうにもそう簡単には出来ない・・・だから、戦争をして世界が重なっている今、助けに向かうしか方法は無い・・・」


「もし強引に行くとしたら・・・」


「こちらの神に見つかるか・・・下手をすると世界の狭間に閉じ込められるか・・・失敗したら悲惨な事になる・・・」


・・・・・・かなり無茶苦茶な事を言っているが・・・そう言われたらこの手が一番な気がしてきた・・・とにかく・・・動かなくては・・・そう思い、俺は家族を説得する事にした・・・


――――――――――――――――


あの後、家族全員に俺の話をした・・・俺の話を信じられない様な目で見ていたが、それでも最後まで聞いてくれて、ほとんどの人が認めてくれた・・・父上、母上、ジェニー、グバンダ師匠・・・ただ・・・・


「嫌です!!」


妹のファルを除いて・・・・


「いや、どうしても行かなくちゃ・・・・」


「だったらファルも連れて行って下さい!!」


おま・・・・本当に何を言って・・・・


「ファル!!」


母上が妹の名前を言う・・・妹は泣き出し・・・俺に抱きついてくる・・・


俺・・・もう姿青年なんだけど・・・気にしないのか?ファルは・・・


俺だったら、知っている人がいきなり姿が変わったら普通警戒すると思うのだが・・・特に小さな子供の場合、説明を受けたとしても見おぼえない人は警戒するはずなのに、ファルは以前の兄様と呼んでいた頃と全然変わりがない・・・


そんな事を考えながらファルの頭を撫でる・・・


「ごめんな・・・・」


「謝らないで!連れて行って・・・」


「本当にごめん・・・」


そう言ってぬいぐるみを取り出す・・・リイムと一緒にいた時間の間、フェンから教えてもらった縫物を試行錯誤して作り出したものだ・・・・


「これをあげるから・・・」


そう言ってもファルはいやいやと首を振る・・・


「なあ・・・・ファル・・・父上、母上が好きか?」


俺はファルの顔に手を添えて、こちらに顔を向けさせ、目を見ながら言う・・・


ファルは首を縦に振る・・・


「だけどな・・・世界はその父上、母上・・・それどころか世界そのものが自身を壊そうとしている・・・いや、そうなるように仕向けているらしい・・・」


俺のそんな言葉にもまたわんわん泣き出す・・・・


「だけど、それを防げるかもしれない方法があるんだ・・・それを兄さんにやらせてくれないか?」


「だったら・・・私も・・・」


泣きながらそう言ってくる・・・だが、俺は首を振る・・・・


「俺はリイムのおかげでかなり強くなった・・・だけど、それでも勝てるかどうか怪しい相手・・・いや対峙したら確実に負ける相手が敵なんだ・・・解ってくれ・・・・」


「だったら兄様だって危ない・・・」


「そんなの承知の上だ・・・大丈夫、勝てなくても逃げるから安心して・・・・」


そう言ってまた、ファルを撫でる・・・結局、ファルは泣き疲れるまで、俺の胸で泣いていた・・・・


それから3日後、体調がリイムの調子も戻ったと感じた俺は出発する事にした・・・


見送りには家族全員が立っていた・・・・そこにはファルの姿もそこにあった・・・


「ファル・・・」


俺が呟くと俺の近くにファルがやって来た・・・そして、ネックレスを首にかけられた・・・


「・・・・兄様・・・絶対に帰ってきてくださいね!!」


そう言って、満面の笑みでファルはそう言った・・・


「・・・ああ!絶対帰ってくるからな!!!」


俺はそう言うと、後ろにいる父上達に手を振りながら、次元の穴に入っていった・・・・


それが最後の別れになると知らずに・・・・

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