コードの憂鬱

ロイドの入学試験があったその日の夜、騒がしい声を出しながら、魔王城の事務室にある人物がやって来た。


丁度その頃、事務室には書類整理をしていた魔王バイドがそこには居た・・・


「あれは何じゃあ!」


カーン学校の校長ことコードが怒鳴り込んできたのだ・・・


この前の試験の事で文句を言いに来たのだろうが・・・私は学園に言った時、コードに対し、きちんと忠告したのだ・・・


文句を言うのは筋違いだと私は思うのだが・・・コードはそう思っていないのだろう・・・


ちなみに、ロイドを送る際に手紙を持たせたのだが、その際手紙に用いたのは、吾輩の家のバイド家の紋章では無く、カーンの領主であるカール家に頼んでカール家の紋章を使った・・・


まあ、理由は魔王である吾輩が自身の紋章を使った場合、学校側に余計な混乱を起こすと思い、配慮してこうした結果、別の家の紋章を使わせてもらったのだが・・・


・・・結局・・・試験の際・・・それ以上の混乱が起きてしまった・・・


それにしても、文句を言うにしても、こんな夜中に来なくてもいいだろうに・・・もうロイドも寝ている時刻だ。


はっきり言って、吾輩は事務仕事が思っていたより多く残ってしまい、仕方なしに夜遅くまで仕事をしていたからここに居たが・・・


もしプライベートルームに吾輩が居たらそこまで入ってこないよな・・・こいつ。


「うるさいなあ、障壁のやコロシアムの修繕費は出しただろう、怪我もロイドが直したみたいだし・・・」


吾輩はこの程度で済んで良かったと本気で思っていた・・・


ジェニーにロイドの後を付けさせていた為、ある程度何が起きたのかは知っている・・・


国宝である、魔力隠蔽マントを渡してロイドの様子をカーンの街中に居る間、ずっと監視をさせていたのだ。


まあ、本当はロイドが城を出た時から監視をしようと、ジェニーは思っていたらしいが・・・ロイドの移動スピードが速すぎて・・・道中は監視が出来なかった様だ・・・


しかも、余りにも速すぎて、しかも、ロイド自身、隠蔽の魔法をかけていた為、見つけるのに時間が掛かってしまったのだ・・・


ロイドが隠蔽魔法を使っていた理由は恐らく、初めての場所に行く場合、隠蔽魔法等を使う位慎重になりなさいと言ったジェニーの言葉を守った為だとジェニー本人が言っていたのだが・・・


なあ・・・ロイド、ジェニーが言ったそれは、魔物が居る場所に行った際の事を言ったわけで、街中に行った時の事を言ったわけじゃないんだぞ・・・


・・・それに、街に居る間、ずっと隠蔽魔法を続けるって・・・本当に、魔力量が桁違いなんだな・・・普通の魔族なら、一時間も連続で続ける事すら出来ないぞ・・・・


結局・・・ジェニーがロイド本人を自身見つけたのがロイドがカーンに入ってかなり後であった・・・


しかも、ジェニーがロイドを見つけて、近くに行こうとした際、ロイドが一般市民に魔法を放とうとしたのを発見・・・慌ててジェニーが咄嗟に障壁を張って一般市民を守ったらしい・・・


理由は女性が絡まれていたのをロイドが守るために魔法を放ったらしいが、一歩間違えていたら大惨事だった。


その後も、色々手続きをして・・・後始末を終えたらしい。ジェニー・・・本当にお疲れ様・・・。


ちなみに試験はコードに初級魔法を打つだけで終わらせたらしい。


しかも、ロイドが魔法を放った際、この程度なら学園のコロシアムに張っていた障壁で何とかなるだろうとジェニー自身が判断してジェニーは障壁も張らずにただ見ていただけだったと言っていた・・・


・・・・本当に、ロイドが手加減をしてくれてよかった・・・・もし本気を出していたら、学園何て無くなっていたかもしれないしな・・・


だが、コードは納得いっていないらしく・・・不満を吾輩にぶつけてくる・・・


「儂はお主の言う通り、予め全力で障壁を張って勝負に挑んでいたんだぞ、それが一撃で倒され、コロシアム張っていた巨大な障壁も一撃で壊されてしまったのだ!なのに・・・それを一瞬で・・・・」


「試験の前に伝えていたはずだが、彼は剣技で吾輩と肉薄しており、魔法に至ってはジェニーと同等の技量、魔力量も吾輩に追いついてきていると、ちなみに、ロイドが使ったのは、初級魔法のみだぞ」


吾輩の言葉に唖然としているコード、儂の予想ではもっと大惨事になる想像をしていたくらいだからなあ・・・


ジェニーを監視役に付けたとはいえ、あやつでも手に余る事態になる事すら考えていた位だ・・・


本当に、この程度の被害ですんで良かった・・・


「まあ、初級魔法と言っても・・・一応一撃ではなかったみたいだがな、初級魔法の火、水、風、雷、重力、光、闇の属性魔法を位置座標で魔法を放つ場所を固定して・・・一瞬でその場所に全ての属性魔法を叩き込んだらしいぞ!」


吾輩はジェニーの報告をそのまま伝えた。


まあ、一瞬で別属性の魔法を放てるというだけで、すでに規格外なのだが・・・。


それでも、初級魔法を選んでくれた辺り、本当に手加減をしてくれたのだろう・・・本当に安心した・・・中級魔法でも途轍もない大惨事になっていただろうからな・・・


吾輩の言葉に・・・コードは下唇を噛みながら答えた・・・


「儂の学校では手におえぬかもしれんぞ・・・」


「前にも言ったが、剣技や魔法はこちらで教える」


その言葉に何も答えない、コード・・・恐らく問題にしているのは、ロイドが問題を起こした時の事だろう・・・


確かに、ロイドは素直だから、注意すれば、きちんとその事は守ると思うのだが・・・如何せん力が強すぎる・・・いくら力を抑えたとしても、こればかりはどうすることも出来ない・・・


なので、吾輩は、ある決断をした・・・


「ロイドの事で心配なら、グバンダとジェニーをロイドの抑止役として臨時教師として派遣する」


その言葉にコードは顔をあげた・・・


こちらとしても、グバンダとジェニーがこの城に居なくなるのは相当の痛手だが、ロイドの為には仕方が無いだろう・・・・


「一応言っておくがロイドは結構素直でいい子だぞ、向こうから決闘を持ちかねなければ、問題は起こさないだろうし・・・」


一応、ロイドのフォローも入れておく・・・慰め程度にしかならないだろうが・・・


「もし、持ちかけられたら・・・」


・・・やっぱそう言ってくるよな・・・。


ここで嘘を言ってもしょうがない、ロイドは加減が出来ないのだから・・・。


「・・・下手をすれば決闘を持ちかけた奴は死ぬな・・・」


吾輩の言葉に部屋が静寂が訪れた


「・・・一応、グバンダとジェニーを派遣したが、もし本気であいつが暴れたら、あの2人でもどうしようもないぞ・・・はっきり言って、吾輩でも手に余っている位だからな・・・」


その言葉にコードの顔は引きつる。


「・・・吾輩は今の所ロイドに勝てているが・・・一年後、二年後になった際、吾輩が勝てているか解らない存在だぞ・・・ロイドは・・・はっきり言って、あの二人ではロイドの相手は難しいだろうな・・・」


だって、吾輩とロイドの勝負すら・・・いつも何とか勝っているありさまだ。


技術で今はあいつを圧倒的に上回っているが、ステータスだけを見るならもう抜かれてるかもしれないな・・・。


「もし、ロイドが暴れたら・・・」


その言葉に吾輩は首を振って答えた・・・


「安心しろあいつは、普段はおとなしい子だ。理由も無く暴れないから安心しろ。やるとしても模擬戦だけだ・・・」


「・・・あれだけの実力・・・模擬戦で闘うにしても危険すぎます・・・・」


そうコードが言って来た・・・何か勘違いしていないか・・・?


「吾輩と勝負する時はあの比ではないぞ」


その言葉に顔をしかめるコード・・・そうだ、コードに見せた力など、ロイドにとっては、本当に撫でる位しか力を使っていない・・・・


コードは以前SSSの冒険者だったのだが、それでも様々な実力者の一人にすぎない。


はっきり言って、魔族の頂点である魔王であるはずの吾輩と魔法の使い方なら吾輩を上回るジェニー二人の指導についていき、成長していくロイド・・・負けてしまっても当然である・・・


もし、ロイドが本気を出した場合、吾輩すら勝てるかどうか怪しいしな・・・・


「・・・解りました、ロイドには申し訳ありませんが、魔法、剣術の授業において、ロイド本人には生徒としての立場では無く、教育者という立場で授業に参加してもらいます・・・よろしいでしょうか・・・?」


・・・そう来たか、まあ、実力もあるし、魔力、剣術も教えることが出来よう・・・


第一、本来の目的は、親友を作る事・・・それだったら、学校に通えるなら、立ち位置は関係ない・・・年齢が近い者同士触れ合えるのならいい。


・・・精神年齢が20越えだとしても、この城に居る物よりは親しみやすいだろう・・・はっきり言って、精神年齢を加味しても、ロイドより、かなり年上なのしかほとんどいないだろうだからな・・・


「解ったそれでいい」


私がそう言うと、コードはホッとしたような顔で次の言葉を言った・・・


「ジェニー様とグバンダ様の臨時講師の手続きについては後程話します」


そう言えば、ロイドを抑える為に、その事も約束したんだっけ・・・


・・・これからの城の事務処理や指導者どうしよう・・・


「では、失礼します」


コードが出て行ったあと、この後のロイドが学園生活でどんな生活をするのか・・・その事を考えた・・・


吾輩はロイドの行く末がどうなるか・・・心配でもあり、楽しみでもあった。


あいつはどんな人生を歩むのであろうな・・・・

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