【カクヨム小説創作オンライン講座2018】
榎本秋/カクヨム運営公式
物語の作り方 基本編
Vol.1|物語の基本構造 プロットとは
カクヨムユーザーの皆さん、初めまして。私は榎本秋。著述業をさせていただいています。
仕事は色々なのですが、大きな柱として専門学校やカルチャースクールなどでライトノベルを中心としたエンタメ小説の書き方を指導し、またそのノウハウを紹介する本を執筆しているのです。そのやり方は「榎本メソッド」と呼んでいます。
今回はKADOKAWAさんからのご依頼で、創作のためのヒントをいくつか紹介したいと思います。
まずは何といっても創作の端緒、プロットづくりから話を始めましょう。
プロットは物語の設計図です。これからあなたはどんな物語を作るのか? それを最初にまとめておくものです。
でも、プロットは「必ず書くよ!」という人もいれば、「できれば書きたくないなあ」という人もいるものです。
私はプロ作家になりたい人であれば、基本的には書いた方がいいと思います。作品の全体的内容を俯瞰の視点て確認することができるので、粗がわかったり、伏線を張るのに便利だったりするからです。
さらに言えば、プロになったら編集さんに「今度はこんな作品が書きたいです」とプロットの形でお伺いを立てることになるので、今のうちに慣れておいた方がいいのです。
でも、カクヨムで創作をする人は必ずしもプロになりたいわけじゃないですよね。ただ気持ちよく作品を書きたいなら、プロットは必須ではないかもしれません。私も生徒さんから「プロットを書くと先がわかってしまって、執筆時にワクワクしない。創作意欲がなくなる」と言われたことがあります。
それでも作品のクオリティを上げたいなら、プロットは書いた方がいいと思います。でも、あんまり先のことは細かく決めなければいいのではないでしょうか。
プロットには、たとえば以下のような内容を盛り込んでほしいものです。
・一番大事な要素はなにで(テーマ)
・どんな場所が舞台で(世界設定)
・どんなキャラが主人公やヒロインで(キャラクター設定)
・どう始まり、どう展開し、どう終わるか(ストーリー)
この時、ストーリーをかっちりは決めないのです。例えばこんな感じですね。
・主人公がどんな状況になるところから物語が始まるのか?
・主人公に最初に降りかかるトラブルはどんなものか?
・最終的に主人公はどんな風になるのか?
このくらいプロット段階で決めておいて、あとは成り行き次第で書いてしまってもいいと思いますよ。そして誤解されがちなのですが、書いていく中でプロットは変えてしまっていいのです。「最初はこういう展開にするつもりだったけど、書いてみたら違和感があるなあ」と思ったら、勇気をもって変えるべきです。その方がクオリティは上がりやすいですし、何よりも書いていてワクワクしますよね。この「ワクワク」はとても大事です。
それに、WEB小説は紙の小説よりも大長編で、壮大な物語になりがちです。将来のことなんてなかなかわからないもの。だから先のことをプロットでしっかり決めるよりも、おおらかな気持ちでいたほうがいいようです。
もちろん、細かくしっかり決めるのがだめというわけではありませんよ。自分にとってやりやすいようにするのが良いのです。
それではプロットを作ってみるとき、一番大事なものはなんでしょうか。答えは既に出ています。それは、「物語で一番大事な要素はなにか」です。これを榎本メソッドでは「テーマ」と呼んでいます。
テーマというと、「愛」とか「友情」とか「平和」とか、大仰なものをイメージしますよね? もちろん、それもテーマです。でも、もっと俗っぽいものでもいいんですよ。たとえば、「俺TUEEEEを極めたい!」とか「カクヨムの規則が許すぎりぎりのエロが書きたい!」だって、立派なテーマです。
大事なのは、「自分はこの作品でなにをしたいのか?」なんです。そこがしっかりしていれば、先ほど書いたようにストーリー部分がちょっとあやふやでも、ぶれずに自分の書きたい物語が書けます。ここがぼんやりしていると、ぼんやりした作品ができあがります。
なによりも、書いている途中に一番大事になるんです。書いていて、
「あれ、俺って何が書きたかったんだっけ?」
「選択肢が複数あるけど、どっちを選んだらいいんだろう」
と悩むときが絶対に来ます。そんなとき、テーマがはっきりしていれば、正しい答えを出すことができます。ですから、プロットの一番上に書いておいてほしいのです。
テーマが決まれば、あとはプロットを作っていくことになります。世界設定からでも、キャラクターからでも、ストーリーからでも、かまいません。好きなところから書いていっていいでしょう。
ここからはそのときの注意事項を、いくつか。
ストーリーを考えるとき、だいたいの人は「最初こんな感じで、次にこうなって、それからこうで……」と考えていきますよね。このやり方がダメ、というわけではないのです。でも、これだと問題が起きやすくもあります。
どんな問題かというと、
・お話としてのスケールが小さくなりがち
・読者の予想の範疇におさまってしまいがち
です。これは半分は人間の想像力の限界というもので、もう半分は作品としての書きやすさを考えるとついついドラマチックでない、穏やかな展開を選んでしまいがちであるようです。
プロットを考えるとき、最終的な結末も決めておいた方がいい、という話をしましたよね? その理由がここにあります。最終目標をしっかり高いところに定めておけば、お話がこじんまりとしてしまうことを避けられますからね。
それから、主人公の前に立ちふさがる障害も思いつく限り高くしていくこともおすすめです。物語が一番面白くなるのは、主人公がピンチに陥って「さあ、これからどうなる!?」と状況が緊迫するときですからね。ライバルならなるべく強く、テストならなるべくハードルが高く、主人公に課せられるペナルティならなるべく重い方が盛り上がるというものです。
特にWEB小説は連載形式で、「次の回ではどうなるかな」とワクワクしながら読むのが普通ですからね。そのためにも障害は高い方が良いのです。その分書くのは難しくなりますが、より面白い作品を書き、より多くの読者を獲得するためには、相応の試練と言えましょう。
「狭き門より入れ」は聖書から生まれた言葉で、困難な道を選べ、ということです。創作を志す皆さんも、是非狭き門を選んでほしいものです。
そうそう、もう一つ。物語のあちこちに「どんでん返し」を仕掛けていくことも忘れないようにしましょう。
どんでん返しの語源は歌舞伎で使用する舞台装置で、場面を一瞬で転換する機能があります。転じて、創作の世界ではストーリー展開や状況をがらっと変えることをどんでん返しというのです。
どんなに魅力的なストーリーも、長々と続くとそれに慣れて面白さを減じてしまうのです。あるいは、先が見えてしまうとわくわくする気持ちがなくなってしまう、ということもあるようです。
そこで、どんでん返しが必要になります。ほのぼのとした物語があっという間に緊迫した命がけの状況になったり、先ほどまでの味方がいきなり敵になったり、小さな町で展開していた物語が世界を股に掛けた冒険になったり……他にも様々な展開があり得ますね。
どんでん返しというと、ちょっと大仰な印象があるかもしれません。もちろん大仕掛けなどんでん返しも効果的なんですが、もっと細かな工夫も欲しいものです。たとえば、主人公がずっと一人のパートナーと一緒に冒険したり相談したりしているなら、たまにはパートナーを交代しましょう。
毎回毎回似たような事件、似たような解決法になっている、なんてこともよくありますね。主人公の得意技が通用しないような事件を起こしてみましょう。いつも頼っている仲間が役に立たないようなシチュエーションを用意してみましょう。
私はしばしば生徒さんに「物語は始まったように終わってはいけませんよ」というお話をします。物語最初の状況や主人公の目的が最後になっても同じだと、どうしても平板な印象を与えてしまうからです。主人公を取り巻く状況が変わったり、主人公自身が変わったりしてくれないと、長々付き合っていく読者としても飽きが来てしまいますからね。
読者視点の大事さも、忘れないでほしいものです。これ、ここまでに紹介した話ともかかわってきます。
カクヨムで創作をしようという人の多くは、たぶん自分でも小説を読むのが好きな人ですよね。
「こんな話が書きたい!」
「自分の感じた感動を、自分の作品で他の人に与えたい!」
こんな気持ちがあるからこそ、創作に挑戦しようと思った人が多いはずです。
でも、いざ自分が創作をし始めると、読者の時の気持ちはついつい忘れてしまいがちなもの。主人公の前に立ちふさがる障害をつい低くしたり、どんでん返しの数が増やせなかったり……ここまで紹介した問題の背景にも、そんな心があるのです。
だから、皆さんにはことあるごとに「読者としての自分」を思い出してほしいのです。
目の前に二つの道があるとき、私たちはついつい簡単な方を選んでしまいがちです。でも、それは書き手としての自分の選択ではありませんか? 読者としての自分はどっちをより良いものとして考えていますか?
困難な道であっても、読者としての自分が喜ぶべきものであれば、そちらを選ぶべきです。たいていの場合、そっちの方が物語は面白くなるものですよ。
プロットの要素のうち、「テーマ」と「ストーリー」はここまでに紹介しましたね。あとは「キャラクター」と「世界設定」なんですが、キャラクターは次の回でじっくり紹介するつもりなので、ここでは触れません。
そして、世界設定なんですが……これはもう語るべきことが多すぎ、また人によって必要な知識やノウハウが違いすぎるので、今回の内容には相応しくありません。ファンタジーを書きたい人と現代ものを書きたい人には伝えるべき話が違うのです。
でも、皆さんに覚えておいてほしいことはあります。それは「世界設定はあくまで物語の土台なんですよ」ということです。
世界設定は作るのが楽しくてたまらない人と、面倒くさいからなるべく避けたい人がいますよね。私は前者なんですが、どっちがいいというわけでもありません。作りこみたい人は作りこめばいいですし、そうでない人は最低限の世界設定を作って、あとは必要に応じて決めていけばいいでしょう。
でも、作り込む人は「せっかく作った設定だからなるべく物語の中に盛り込みたい」と考えてしまいがちなんです。これはよくありません。読者が楽しんでいるのはあくまで物語であって、設定ではありません。
世界設定は、たとえば以下のような形で物語を豊かにするものです。
・主人公がピンチになる展開、またそれをひっくり返す展開に世界設定が関わってくる
・キャラクターが判断したり行動したりする背景に世界設定が関わってくる
このように、物語やキャラクターの土台になってこそ、世界設定には意味があると私は考えています。設定作りがメインになってしまわないよう、要注意です。
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