☆11
お母さんは出かけていた。お父さんもどこかへ行った。お兄ちゃんは部屋にいる。僕のあまり好きじゃない家から食べ物を持ち運んで、机に並べた。こんなに沢山のお菓子や食べ物を見るのは初めてで、わくわくした。
いっぺんに、しかも好きなだけ二人で食べられるなんて最高だ……って、朝は思ってた。だんだんと天気は悪くなり、いざ始まるという頃にはめちゃめちゃな嵐が直撃する。まぁこれも君らしいかなと思ったけど……予想通り楽しそうなのでいいことにした。僕も雷は別に怖くない。ロウソクだけじゃ足りなかった明かりが盛り上がりに一役買っている。
誕生日会が始まった。いっぱい食べられるかと思ったらあんまりお腹には入らなくて、二人でちびちびと食べていた。それに飽きたようにケーキをぐちゃぐちゃにし始めちゃったので、僕はお祝いの歌を歌う。
「happy birthday dear...」の部分でお互いに目を合わせて笑った。
このタイミングで僕は君にプレゼントを渡す。一番大事な……僕の初恋と、それから永遠の友情と愛を――君に送った。
初めてした口づけはふわふわとしていて、少しくすぐったかった。僕はやっぱり君が大好きだ。
顔を離すと、君は少しじっとしてから目を開いた。やっと分かったという顔だった。
「じゃあ私は……全部消してあげる! 苦しいのも寂しいのも痛いのも悲しいのも、一番嫌いなものをあなたから無くしてあげる!」
僕は前に読んだ絵本を思い出していた。確か親ネコが子供を守って、車に轢かれちゃうやつだ。最後にネコは星になって、子供を空から見守るというお話だった。
君は人は痛い思いをしたら、星になるのかと質問をした。僕は分からないと答える。死んだら無になると思っていたからだ。それを君に言ったら全部なくなるのかと聞いた。僕は、なくなると答えた。
君が楽しそうに笑ってそれをとった瞬間に、僕はちょっとだけ勘違いしていたことが分かった。君に教えていなかったことがあるんだけど、それでもいいや。君が一番消したいもの、それと同じものを僕から消そうとしてくれている。これって君は分かっていないかもしれないけど僕のこと……大切に思ってくれているということだよね。きっとこれが一番なんだろうって、考えてくれたんだ。
君は僕から苦しいのと、寂しいのと、痛いのと、悲しいのを消してくれた。ありがとう、君からもらったプレゼントだ。
でもね、悲しいこと達は消えるけど……嬉しいのも、楽しいのも、暖かいのも消えちゃうんだ。ごめんね、君が一番欲しいものをあげられなくて。でも僕は一生それを君にあげる事はできないよ。ごめんね……。
誕生日おめでとう。
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