その8

「マッカーティさん、マッカーティさん!」

と、ラディスローはその背の低いというか少年っぽい、カーボーイハットを顔に被せて寝ているマッカーティを起こしている。

「うん、なに?」

「なにじゃないですよ、というか寝てなかったでしょ。

 イヤホンが見えてますよ」

「ああ、音楽聴いてて気づかなかったよ。

 ブルース・スプリングスティーンの『ハングリー・ハート』」

「そんなことは、どうでも良いですよ」

「あの……」

「なんですか、唯さん」

 ラディスローは唯に向かっても怒ったように返したので、唯は怯えつつ聞く。

「この方が、マッカーティさんなのですか?」

「そうです。

 全く、ご主人様のご友人だからって……」

「さて、そろそろかな?」

と、マッカーティが言った瞬間に、爆発音が響いた。

「わわ!」

と、唯は倒れてしまい、ラディスローも耳がピンと張ってしまっている。

「マッカーティさん、なにをやったのですか?」

「ダンドレシーに『ヤツは多分ここにいるから、そこにドロボウホイホイを仕掛けておけ』といったのさ」

「ドロボウホイホイって、ただの爆弾ではありませんか!」

「燻り出して、ついでに気絶でもさせようとしただけだけど」

「ヤル気満々じゃないですか。

 ほらごらんなさい!」

と、ラディスローが指差した先には、爆発の衝撃で気絶している唯がいた。

「ああ、唯さんとやら、すまんことしたね」

と、マッカーティは軽い感じで謝った。

 唯は、薄れゆく意識の中

(私、ここでやっていけるのかしら?)

と、思った。

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