君と、キスしたかっただけ。

けしごム

第1話


「やめてよ~!」


幼馴染みのアキトが今日もポッキーを持って私の部屋にズカズカと入ってきた。


「なんで~!いいじゃんいいじゃん!減るもんじゃないんだから~」


あーん、と言いながら私の口にポッキーをさしこもうとするアキト。


「嫌だって言ってるんだってば!」


もう面倒くさくて、適当に怒る。


「ノーカン、ってことでいいじゃんよ~」


ファーストキスをノーカン?ふざけんなっ!


「男のアキトは言いかもしれないけど、女の私はそういうことを軽く見ないんですう~」


え~、と言いながら私に後ろから抱きつくアキト。

アキトとは物心ついたときからずっと一緒で気付けばもう、お互い高校生になっていた。

そしてある日突然、ポッキーゲームしよ!と言ってきたのだ。


「ほかの女の子にお願いすればいいじゃん」


アキトはムカつくことに、女子にモテる。

話しかけやすい社交的な性格、にへらっとした柔らかい笑顔、ゆったりしてへにゃっとした穏やかな、少しかわいいしゃべり方、整った顔。


だから、なんで私にお願いするのよ。

でも私はその答えをなんとなくわかっているような・・・、いや、期待していると言った方がいいかな?


「カオリにしかお願いできないの~!」


私を後ろから抱き締めたまま、耳元で媚びるように言う。


「ほら、こっち向いて?」


優しい声でそんなふうに言われたって、

この手にも私はもう引っ掛からないんだから。

この体勢で初めてそう言われたとき、なんの疑いも持たずにアキトの方を向いたらキスをされそうになった。

このときに、あ、コイツは私とキスがしたいのかって気づいたんだよね。


言っておくけど、アキトは恋人でもなんでもない。

・・・でもアキトは多分、


「カオリ~お願い~!」


私のことが好きなんじゃないかな、なんて。

幼馴染みということもあって、アキトが1番仲が良いのは私だと思うし。

こんなふうに、抱きついてきたりするし。

強い力でぎゅーってしてくるし。


だから、好きって告白してもらえるまでは絶対にコイツとキスなんてしてやんないんだ。


私の唇を奪うなら、告白してからにしてよね!


なんて、一人で少しにやけながら考えてたら、


アキトが顔をグッと私の前まで持ってきて、私の頬を手ではさんであろうことかキスしてきた。


「なっ、」



「隙アリ!」


へにゃっとわらって、なんのためらいもなく何度も私にキスを落としてくる。


「ん、んん、」


「カオリ、顔真っ赤。恥ずかしいの?照れてんの?


・・・すげー、イイ。」



なんだかもう、キスはされるわ耳元でいつもより低い声で囁かれるわ、私の頭はもうパンクしそう。

好きな人にキスされるって、こんなに気持ちいいんだ。

アキトも、そう思ってくれてるのかな?

 


「はあっ、はあっ、」


もはや何回キスを落とされたかわからないくらいしてから、唇が離れて空気をなんとか体内に取り込んでいたら開いた口にポッキーがさしこまれた。


「カオリ、食べて?」


ふっと笑いながらそういうアキトはなんていうか妖艶で、私には逆らう気力もなかった。


「ん、いい子、」


そう言うと、反対側からアキトがポッキーを食べ始めた。


すぐに、アキトとの顔の距離が近くなって思わず逃げそうになると、アキトがそのままキスをしてきた。

チョコレートの、甘い味がするキス。


しまいには深いキスまでされて、もう私はとろけそうだった。

目の前のアキトの、はじめてみたなんだかエロティックな表情に、熱を帯びて重なる唇。卑猥な音をたてながら掻き回される口内。


やっと唇が離れて、私は思わず言った。



「アキト、す、き。」


自分から告白なんて絶対しないと決めていたけれど、もう我慢できなかった。

だって、こんなことするなんてアキトもおんなじ気持ちでしょ?

恥ずかしくてアキトの顔を見れなくてうつむいた。


「・・・・・。」


あれ、?

予想していた言葉が降ってこなかった。

俺もだよ、とかじゃないの?え?


「じゃ、帰るわ。じゃーねー」



私が混乱している間に何事もなかったかのようにアキトは部屋から出ていった。

あれ、なんで?

照れちゃったのかな?
















カオリの家からでたアキトは静かに呟いた。


「恥じらいながらキスをする女とキスしてみたかっただけなのに、バカかアイツは。

近寄ってくる女は全員恥じらいなんてねーんだもん。

はー、にしても、ポッキー加える姿とかエロくてすげー良かったわあ~たまんねぇー」



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君と、キスしたかっただけ。 けしごム @eat

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