第244話
その後も狩りは順調そのもの。
グリーンドラゴンから強奪した存在力は多くのスキルをオレに
オレがドラゴンの存在力を喰らった余波で、当たり前のように気絶したのは……まぁ、いわゆるご愛敬というヤツだ。
今までの傾向からしても、それが起きるだろうということは予想出来ていたし、カタリナはじめ仲間達ともしっかり打ち合わせておいた事態なので、混乱は特に無かったらしい。
カタリナはクレイゴーレム(土の魔法人形)を瞬時に作成し、オレを後方に運んでくれたというし、トムはトムで豪胆なところを発揮したという。
グリーンドラゴンがドロップした巨大過ぎるほどに巨大な魔石を拾いに、ダンジョンの領域内に侵入。
首尾よく魔石を『空間庫』内に収めて帰って来たのだ。
トムに普段ビビりっぽい言動が多いのは、実はかなり高度な擬態なのかもしれない。
それはさておき……オレが目を覚ました時まず気付いたのは、トリアの変化だった。
観音像のダンジョンで初めて会った時以上の魔力を感じる。
カタリナもトリアほどでは無いにしてもかなり魔力が上がっていた。
しかし……見た目にも変化していたのは、なんと言ってもトムだ。
普段のトムのシッポは1本。
それが戦闘時などには2本になるわけだが、今やシッポが3本も有る。
これらの変化は、どうやらオレの今回の成長が急すぎたために起きたことらしい。
今までもオレが成長するたびに、オレの【ロード】スキルの影響下にある全員が恩恵を受けていたというのだが、今回のそれはあまりにも急だったため、こうしてオレがハッキリと理解出来るほどに皆の様子が変化してしまったというわけだ。
実際、グリーンドラゴンの次に遭遇したヒルジャイアント(丘の巨人……丘のようなサイズの巨人?)の末路は悲惨なものだった。
サイクロプスと比べても倍近いサイズを誇る巨人なのだが、全員から一斉に魔法攻撃をされた結果……自慢の怪力を発揮する間もなくあっという間に倒されてしまったのだ。
カタリナに至っては、例の無属性砲すら使っていなかった。
トムのウインドライトエッジは、ヒルジャイアントの左足首に命中し容易く切断してしまう。
カタリナのファイアボールは着弾した瞬間に巨人の右腕を瞬時に炭化させてしまう程の威力。
オレの【無属性魔法】は僅かに狙いが逸れたが、ヤツの脇腹にヒットし滝のような出血を強いた。
トドメになったのはトリアの氷結魔法。
ヒルジャイアントの巨体を余さず凍りつかせ、生命活動そのものを完全に停止させてしまった。
トリア以外は小手調べのような魔法しか使っていない。
トリアの放った魔法が最も大技で発動までに掛かった時間に差が生まれ、結局的にトリアの氷の魔法が最後に巨人を襲ったために起きた悲劇だ。
明らかなオーバーキル。
単にヒルジャイアントを倒すだけなら、トリアの魔法だけで恐らく倒せていたことだろう。
白い光に包まれ消えていく巨人の死骸は、直視するのが
そこからは皆、効率というものを意識して戦うようになってくれたから、結果的には良かったのかもしれないが……フロストジャイアント(氷の巨人)はあっという間に燃やし尽くされ、レッドドラゴンはグリーンドラゴン以上の大穴をブレスすら放つ間もなく胸部に受けて即死。
異界の邪神の配下を模したらしい雄々しい金属像は、数十本有った腕があっという間に全て無くなり最後はボロボロに崩れ落ちていった。
……ちょっと皆めちゃくちゃだ。
思わずドン引きしてしまいそうになってしまう。
『それはこちらのセリフというものなのですニャー』
「そうよ、そうよ」
「同感ね。貴方が一番……アレよ?」
「アレってなんだ、アレって。てかトムもカタリナもトリアも、勝手に人の心を読むなよ」
『ニャニャニャ! 主様たまに声が出てますのニャー』
「アイから聞いて知ってるんだからね? ドン引きの意味」
「そもそも貴方、顔に出すぎ」
……マジか?
ポーカーフェイスには絶対の自信を持っていたというのに。
てか声が出てたなんて……。
「ほら、騒いだからいっぱい敵が来ちゃったじゃない! 分担どうするの?」
「竜が2体に天使の編隊。亡者の群れに、こちらの世界の魔物達……ね。大歓迎じゃない」
『さすがに多いですニャー』
カタリナは最近、地が出過ぎじゃないだろうか……?
トリアもトムも相変わらずなのに。
生きてた頃のカタリナの性格に戻りつつあるのかもしれないな。
「ドラゴンはオレとカタリナとで1体ずつ倒そう。カタリナは白い方。アークエンジェルはトリアが纏めて墜としてくれ。アンデッドはどうせ安全地帯まで侵入して来れないから取り敢えず無視。トムは妖怪どもの相手な。遠距離攻撃可能そうなヤツを優先で」
「了解! 一発で墜としてみせるわ」
「妥当ね。任せて」
『主様、我輩どれがどんなだか分からニャいのですニャー!』
「すぐ手伝うから黙って攻撃! センスだ、センス!」
『了解ですニャ! もうヤケクソにゃ~』
◆
結果的に最初のグリーンドラゴンが最大の山場だったことになる。
オークに四苦八苦していた頃には想像も出来なかった光景が終始オレの目の前に広がっていた。
そして……
『スキル【解析者】のレベルが上がりました』
あろうことか、次なるステージへの扉さえもが開いたのだった。
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