第38話

 朝はオレが、午後は兄達が探索に来ていた甲斐もあってか、ギガントビートルの居るハズのボス部屋までにおこなった戦闘は、たったの3回だった。

 しかし、その中にワーラットが含まれていたのが気にかかる。

 いわゆる『戻り』モンスターであることが確定的なのもあるし、病毒の流行源になりかねないのも、オレがワーラットに嫌悪感を抱く理由だ。

 オレを見るなり文字どおり、一目散に逃げようとしたので、素早く追走して魔石に変えてやった。

 もうココには来ないだろうなぁ……とは思うが、例えばこないだオークにダンジョン前で、タンク役の少年をやられたパーティのような未熟な探索者相手ならば、ワーラットはかなりの強敵に化ける。

 問題なく倒せる者が、見つけるなり討伐していくのは、ある意味では義務のようなものだろう。


 さて……同日中の発生回数制限などが無ければ、目の前にある扉の先には、階層ボスであるギガントビートルが待ち構えているハズだ。

 少しばかり変な緊張感に支配されそうになったが、意を決して扉を開けると……最近すっかりお馴染み感すら出てきた階層ボス。

 ギガントビートルの姿が、そこにあった。

 これでしばらくの間は、1日3討伐がベースになることが決定。


 オレにとって既にギガントビートルは、あまり脅威にならない。

 獄蠍……ヘルスコーピオンの尾針の攻撃力をも加えた総金属製の愛鎗は、ギガントビートルの硬い甲殻を全く問題にしなくなったのだ。

 ハックアンドスラッシュとか言うジャンルのゲームで良く有る要素に、敵をひたすら倒すことで得られたモノ(経験値であったり、アイテムであったり)を活かして、また新たな敵を薙ぎ倒していくというものが有る。

 もちろん、戦闘のみに生きているわけではないが、ソレ(ハックアンドスラッシュ)と似たようなことを、今のオレは実際に自分の身体をもって実践している最中なのだ。

 敵から得た力をも、こうして使いこなしていくことが可能なのなら、無理ゲー呼ばわりされるダンジョンを真っ先に攻略していっているという現状は、ある意味では今後のために非常に得難い環境と言えなくもないだろう。


 第2層もアッサリ間引きするぐらいに留めておいて、ヘルスコーピオンに挑むべくボス部屋まで、ほぼ最短ルートで進む。

 今朝、ヘルスコーピオンの討伐が完了したのは、だいたい8時過ぎといったところ。

 今の時刻が、もうじき19時半なのでリポップまでが、12時間なのか、それ以下なのかの指標にはなる。

 第2層のボス部屋の扉を開けたオレを待ち受けていたのは、ヘルスコーピオンと、取り巻きモンスターのジャイアントスコーピオンが3体……あ、やっぱ取り巻きは少なくなるのね。


 こちらが数的不利の状況下でのヘルスコーピオンは、かなり狡猾なモンスターといった印象だ。

 ジャイアントスコーピオンには連携という概念は無いようだが、ヘルスコーピオンが上手く状況を活かしてくるので、やはり厄介な戦闘にはなる。

 しかし11匹も居た朝の激闘を思えば、これぐらいはどうということもない。

 早々に取り巻きのジャイアントスコーピオンの排除に成功し、既にヘルスコーピオンとの一騎討ちに突入していた。

 そして、取り巻きが消えたことで本気になったヘルスコーピオンの、鋭い毒針やハサミには大いに手を焼きながらも、刺突の威力が上がった鎗は確実にその甲殻を穿ち、甲殻に守られた強靭な筋組織をもボロボロにしていく。

 余裕綽々よゆうしゃくしゃくとまではいかないが、朝とは比較にならない短時間でヘルスコーピオンの討伐は完了した。


 まだ経過時間、体力ともに問題は無いので、更に先へと進んでいく。


 ……また製パン機とか、落ちてたりしないかなぁ?

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