第33話
思っていた以上に硬い!
行く手を阻むジャイアントスコーピオン達を突き倒しながら、何とかヘルスコーピオンに短鎗の一撃を入れたオレだったが、その甲殻の余りの硬さに閉口していた。
ボス部屋の扉を開けたオレを出迎えたサソリの群れは、全部で11匹。
長らく放置されていただろう状況を
何とか包囲されないよう駆け回り、サソリ達の分断に努め、根気強く1匹ずつ排除していく。
サソリが4匹減ったところで、先ほどようやく本命のヘルスコーピオンに、短鎗を喰らわせたところだったのだが、その狙いすました刺突は、上手く甲殻の分厚いハサミで受けられてしまったのだ。
モタモタしていたらハサミに捕まって滅多刺しにされてしまうし、それがヘルスコーピオンのハサミなら、オレの身体自体を
いったん素早く距離を空け、集団の最左翼に位置しているジャイアントスコーピオン目掛けて突進。
首尾良く一撃で
これでようやく、残り6体。
事前に参照していた撃破報告の例では、6体から討伐開始していたので、まだやっとその時の状態に並んだだけだとも言える。
ヘルスコーピオンは、どうやら用心深い性格をしているのか、無理に突出して来たりはしない。
それでいて、オレが取り巻きのジャイアントスコーピオンに攻めかかると、横合いから鋭くハサミや毒針を持った尾を伸ばしてくるのだから、まったくタチが悪いヤツだ。
そして、何とかボスの攻撃を受け流したりしている間に、取り巻きを逃がしたり、危うく取り巻きのハサミに捉えられたりしそうになりながらも、オレはじわりじわりと数の不利を縮めていった。
そして、ついに訪れたヘルスコーピオンとの一騎討ちの時……ヤツは今までのスピードが何だったのかと思うほど、苛烈な連撃で攻め立ててくる。
この動きの変化は、事前に調べておいた時の想定を軽く上回っていた。
今のところ、ギリギリ避けられてはいるものの、これ以上の長期戦はマズい。
父や兄よりは若いが、既にオジサンと呼ばれかねない年齢のオレのスタミナには、やはり限界が有るのだ。
このまま守勢に回っていては、いつかその限界が来てしまう。
致命的な攻撃以外は、多少かすられたり、出血を伴うものでも許容して、攻めに転じる。
つくづく【敏捷強化】スキルを得られて良かったと思う。
素の能力のままだったら、直撃しそうな攻撃が幾度も有ったのだ。
どうにかサソリの攻撃を
刺す、突く、受け流す、回避、刺す、突く、突く、受け流す……パリィアミュレットの能力にも遠慮なく頼りながら、どうにか互角以上に渡り合う。
ギリギリの戦い。
戦闘が佳境に入ってから、随分と時間が経っているように思えてきた……その時だった。
『スキル【槍術】のレベルが上がりました』
今まで都市伝説と思われていた、スキルレベルの上昇。
それが事実であったことを告げる【解析者】の声が頭に響いたのだ。
それからの戦いは、
目に見えて、有効打が増えているのが分かる。
甲殻と甲殻の隙間を
それに伴い、ヘルスコーピオンの動きは徐々に鈍り始めていった。
回避や受け流しに割いていた分の力を、ここぞとばかりに遠慮なく攻撃に傾けていく。
動きに精細を欠きながらも、隙を見せようものなら、一撃で勝負を引っくり返す攻撃力を持ったボスだ。
勝ち目が見えても気を緩めることなく、そして根気強く、攻撃を続行していかなくてはならない。
勝負を焦ったら、それで終わる。
そして戦いの幕は、唐突に降りた。
横合いに回り込んでからの短鎗の刺突が、見事に致命の一撃になったようだ。
あんなにしぶとかったヘルスコーピオンの姿が、やけにアッサリと光に包まれ消えていく。
どうにか終わったな。
サソリの消えた後に遺された、いくぶん暗い色をした赤い宝箱を前にして、オレはようやく長い息を吐きだしたのだった。
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