第23話

 その後も妻と一緒にダンジョン内を隈無く探索するのだが……


「そんなにはモンスター居ないね~」


 ズバァ!


 ザシュ!


 スパァン!!


 いや、確かにまばらに出てくるから対処はしやすいのだろうけど、妻の順応力には驚くばかりだ。

 先ほどから、オレはすっかりドロップアイテムを拾う係と化していた。

 ゴブリンすらも躊躇無く渡り合いトドメすら刺す様は圧巻の一言。

 腕力向上剤の影響も勿論あるのだろうし、小さな頃から鍛え上げた薙刀の技が十全に活かされていて、ジャイアントフライや、ゴブリン、ジャイアントリーチ、ジャイアントピルバグ、このあたりはまるで問題にしていないように見える。


 カササササササ……


 向こうの曲がり角から厄介なヤツが姿を現した。

 ジャイアントセンチピードだ。

 コイツを単独で相手どるのは、さすがにまだ早いので、コイツと戦う場合は前衛を交代し、オレが前に出る。

 オレが防御と牽制に終始し、ムカデがバランスを崩したタイミングで……声を掛ける暇すら無く妻がスッと前進し、横薙ぎにムカデの頭を切り飛ばす。

 最初こそタイミングに苦労していたが、既に安定感さえ感じさせる動きだ。

 すぐに光に包まれたジャイアントセンチピードは、ポーションの瓶を遺して消え去った。

 ようやく出たな。


「スタミナポーションだな。亜衣、飲むか?」


「……ん~、まだ良いや。ヒデちゃん、とりあえず持っといて」


 少しだけ悩む素振りは見せたが、実際そこまで疲れているようにも見えない。

 頷いてポーションストッカーに瓶を仕舞い、探索を続けていく。

 残るは東側の探索のみだ。

 モンスターがあまり居ないのもあって、ここまで僅かに1時間ちょい。

 ほぼ散歩状態とは言え、かなり順調なペースだ。

 ただ、東側はアレの住み処だ。

 ジャイアントピルバグや、ジャイアントセンチピードの甲殻は問題にしていなかった妻の薙刀だが、ジャイアントビートルには少し分が悪いように思える。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 しばらく東側を探索していたが、やはりジャイアントビートルは妻にとっては鬼門になった。


 単純に図体がデカくなった分だけ厚くなった、カブトムシの甲殻が硬いのだ。

 先ほどまであれほど元気だった妻が見る影もなく、疲弊している。


「あとちょっとなんだけどなぁ~」


 それでも僅かずつではあるが、手応えを感じさせる斬擊を繰り出すことに成功した妻は、本当の意味では落ち込んでいないようだ。


 ……とは言うものの、このまま妻を連れてギガントビートルの待ち構えるボス部屋に挑戦するほど無謀ではない。

 今回はいったん探索終了だ。


 さほど目ぼしい戦利品も無いが、とりあえずダン協の窓口で査定をして貰って、魔石は大半を換金、ポーション類は全て持ち帰る。


 疲れ果てた妻を、無事に実家へと送り届けたオレは、再びダンジョンに来ていた。

 まだ時刻は15時前。

 自己の鍛練のためにも、まだ家でのんびりするわけにはいかない。

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