第22話
想定外の戦闘から暫く経ち……兄と父が無事に帰って来た。
戦利品の大半は魔石だったとのことだが、ポーション類も数本入手。
そのうちスタミナポーションを1本、父が使用したようだが、その甲斐も有って時間ギリギリまで探索を続けられたらしい。
もちろんレベルアップを実感するほどでは無いようだが、往時の勘を取り戻しつつある父の技の冴えに兄も舌を巻いていたというから、半日のダンジョン探索の成果としては十分だろう。
特筆すべき戦利品は、1つだけ入手した敏捷向上剤。
これは話し合いの結果、父が飲むことになった。
そして、こちらの報告の中にあったオークとの戦闘だが、戦闘そのものよりもむしろオークの出現自体が問題視される。
これで父の当面の目標が、打倒オークに設定されることになったのだ。
オークに勝てる探索者自体、モンスター災害の前でも全体の半数は居なかったハズなので、コレは中々にキツい。
ゴブリンやコボルトを想定した当初のプランは、当然ながら見直しを求められることになった。
明日は父と妻の探索は休みにして、兄と第2層のモンスターを間引きしつつ、もし可能なら第3層まで潜る予定でいたのだが……まぁ、それはもう仕方ないだろう。
妻はともかく、父には明日以降もスタミナポーションで頑張って貰うしかない。
さて、いよいよ妻とのダンジョンデートの時間だ。
薙刀片手に息子に手を振る姿からは、過剰な緊張感や怯えは見て取れない。
普段ほわほわしてるのになぁ……やはり女性の方が、本質的には逞しいのだろうか?
特に道中でモンスターに出くわしたりはせず、まずはダン協の建物へ。
窓口で所定の登録料を支払い、ダンジョンパスを発行して貰う。
パスケースも同時購入し、準備は万端。
「亜衣、まずはオレの後ろに居て離れすぎるなよ?」
「了解。なんだか緊張するね~」
あまり緊張感の無い声で言う妻。
オレは思わず苦笑してしまうが、油断なく全周囲の警戒をしながら先行する。
昨日と違い、なかなかモンスターに遭遇しない。
「お義兄ちゃん達、ちょっと頑張り過ぎちゃったんじゃない?」
「なんか、そんな感じするな~」
軽口を叩きながらも進んでいくと……出た。
耳障りな音を響かせながら、飛行して迫り来る巨大なハエ……ジャイアントフライだ。
事前に打ち合わせていた通り、立ち位置を2人が横一列に並ぶように変更し、まずはオレが鎗を突き出し牽制する。
これは回避されるものの、スッと前に出た妻の繰り出す斬擊が見事に命中。
地面に落ちてなお往生際悪く、ブンブンもがいているジャイアントフライに、トドメを刺させる。
ドロップアイテムは魔石。
それを拾い上げて渡そうとすると、首を横に振られてしまった。
「なんかそれ持っとくのイヤ。ヒデちゃん、よろしく~」
戦うのは全く嫌がる素振りを見せなかったクセに、ハエの落としたアイテムを触るのには、嫌悪感を示す妻…………解せぬ。
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