第14話
その後も続けて告げられる凶報に、先ほどまでのどこか弛緩した空気は雲散霧消していた。
それは特別番組を流し続けるテレビ局のスタジオ内もそうだが、ウチの中も似たようなものだ。
モンスター発生。
ひとしきり暴れまわる。
最寄りのダンジョンに向かう。
ダンジョン到達。
ダンジョンの深層へ進む。
こうした行動パターンから考えても、都市部のダンジョンかつ、深層まで攻略が進んでいるダンジョンほど、中に潜っていた探索者の被害報告は、これからも増え続けることが予想されるだろう。
それは詰まるところ、今後モンスターが発生した際に同様の被害が考えられるため、半ば国策的に進められていたダンジョン攻略がストップするということに他ならない。
さらにはモンスターの発生箇所から、ダンジョンに至るまでの道筋が常に危険に曝されるということでもあり、具体的にどこにモンスターが発生するか分からないということは、ダンジョンの周囲の大きな半径上に、もはや安全地帯などは無くなるということでもある。
ダンジョンに潜れないなら、発生箇所からダンジョンにモンスターが到達するまでの間に討滅していけば良さそうなものだが、それを行うにも今日これまで……いや、これからもか。
本日中に喪われるであろう、ダンジョン探索の本職達が保有していた分の戦力が、まず間違いなく低下するのだから、発生からダンジョンへの中途でモンスター討伐をコンスタントに行うなど、土台無理な話と言える。
今までダンジョンから得ていたマジックアイテムや金属等の有用資源が、危機的な入手困難状態へと一気に落ち込む。
それより何より、今の世の中、魔石が無いと、途端に麻痺する都市機能が考えられるだけでも、非常に多いのだ。
まずは電力。
そして浄水。
都市ガスもかなり怪しい。
現在の主流になっている輸送手段の多くにも、魔石動力が使われている以上、流通もかなりのダメージを受ける。
通信分野においても同様。
漁業、林業、農業、医療……みな何かしらの恩恵を魔石やダンジョン産のアイテムによって受けていた。
……経済は間違いなく冷え込むだろう。
20年もの長きに渡って、ダンジョンありきで行われていた各分野における研究、発展の数々は、その多くが水泡に帰する。
しかもだ。
今後の世の中は、都市部からの疎開者が増えることによって、比較的安全とされた地域も徐々に、モンスターの跳梁を許すことにならないか?
とても他人事とは言えない。
またも先ほどのコメンテーターの発言に乗せられるようで不快だが、早急に自衛と自給の手段を構築し、それを維持発展させなくてはならないだろう。
では、まずはどうすべきか?
「兄ちゃん、オレ……ちょっとダンジョン行ってくるよ」
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