クラスで一番の彼女、実はボッチの俺の彼女です

七星蛍

1章

プロローグ

四月も中頃に差し掛かり、新学期から一週間が経った。

教室では何人かの生徒が固まるようになり、グループを形成しだしている。


どのグループも眠気を誘う春の陽気を吹き飛ばすように、活発に会話をして楽しんでいるのが見受けられた。


そしてそんな状況とは対照的に、俺──篠宮誠司の周りには誰もいない。

同じ空間に居るというのに、温度差がすごい。

具体的に言うと、結露ができるレベル。


「昨日の部活、なんか顧問の機嫌が悪くてたくさん走らされたんだよなー。体がヘトヘトで動かねえよ」


「昨日大変そうだったもんね。うちらも走らせそうな勢いだったし」


──そんな中で、一際大きな声で会話を続けるグループがあった。

時折混ざる笑い声すらも大きく、教室内に響いている。


気づけば、それ以外の周りのグループは会話のボリュームを先ほどより二段階ほど下げている。

まるでそれを目立たせるために。

だが当の本人達はそれに気づいているのかいないのか。

机に突伏しちらりとその声のする方を見やる。


一つの席を囲うように集まっているその集団は、サッカー部やバスケ部などの体育会系の男子生徒とそのマネージャーやチア部などの女子生徒で構成されている。

いわゆるトップカースト。

容姿や力、運動神経などの才能に恵まれた生徒のみが入ることができる聖域。


そこから聞こえてくるものの全てを、俺達は受け入れなければならない。

仮にも、『テメェらの部活動に興味なんてねえ!』なんて思っても口に出すことはご法度なのである。

……正直そんな大きな声で話すことじゃなくない?

せめてツイッターとかにして。


そしてその中でも中心の席に座る女子生徒が異彩を放っていた。

モデルと言われても信じてしまいそうな整った目鼻立ち。

話に頷く度に揺れるセミロングの色素の薄い髪。


そんな神に選ばれたかのような容姿を持つ彼女の名前は神崎琴音。

あのグループ──トップカーストの中心メンバーであり、俺の──彼女だ。


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