5.魔王様と使い魔
第25話 魔王様とメッセージ
ピコン。
生徒会長から投影機にメッセージが入る。
「またか……」
大きなため息が出る。
喫茶店で生徒会長とアドレスを交換してからというもの、生徒会長から頻繁にメッセージが来るようになってしまった。
しかも来たらすぐ返さないといけないのでプレッシャーが凄い。
俺は渋々メッセージを開いた。
>【生徒会長】カナリスは今何をしている?+(0゚・∀・)+ワクテカ』
【マオ】お風呂上がりだよ
>【生徒会長】何っΣ(゚ω゚ノ)ノエロいな。(;´Д`)ハァハァちなみにどんな格好をしている?
【マオ】白いシャツに黒のズボンだよ
>【生徒会長】ふむ。なる!ほど( ̄▽ ̄)ニヤリ
>【生徒会長】頼む、お風呂上がりのカナリスの
「えーっ!?」
俺はカナリスの方をチラリと見た。
カナリスのお風呂上がりの写真だなんて。何とかして頼んでみるしかないか。
「マオくん、さっきからずっとメッセージのやり取りしてるけど、よほどその人と仲が良いんだね」
カナリスは俺の顔を不思議そうに見やった。
「あっ、ごめん。ピコンピコンうるさかったよね。マナーモードにしようと思ったんだけど、やり方がよく分からなくて……」
「そうなんだ。貸して。僕が設定してあげるよ」
「そう? じゃあお願いしようかな」
カナリスに投影機を渡す。
と同時に、またしても生徒会長からメッセージが入った。
ピコン。
>【生徒会長】おい、まだか? 返事は早くしろといつも言っているはずだo(`ω´*)oプンスカプン
「えっ」
カナリスが俺の投影機を手に固まる。
「あ、あの、これは……」
慌てふためいていると、カナリスは困ったように笑った。
「あ、ごめん。見るつもりは無かったんだけど……つい。マオくんのメッセージの相手ってシラユキさんだったんだね。ちょっとびっくり」
あからさまにテンションが下がるカナリス。一体どうしたというのか。
「あ、うん。でも大したやり取りはしてないよ」
「でもシラユキさんといえば昔から男嫌いで有名なのに、マオくんとはメッセージのやり取りをするなんて」
「いや、それはなんか成り行きで……」
誤魔化すと、カナリスは少し拗ねたような顔をする。
「それにシラユキさんとマオくんが喫茶店でデートしてたって噂も聞いたんだけど」
何なのだその噂は。慌てて否定する。
「いや、デートじゃないよ。ただ用があったから一緒にお茶してただけ!」
「ふーん? じゃあ喫茶店に行ったのは本当なんだ」
しゅんとなるカナリス。
「ま、まぁそうだけど」
「僕はシラユキさんとマオくんどっちも好きだから、二人が付き合ってても別にいいんだけど……でも二人とも友達だと思ってたのに、僕に内緒にするなんて」
「いや、付き合ってないから!」
ピコン。
>【生徒会長】
カナリスが首を傾げる。
「
「あっ、うん。俺たち二人がどんな部屋に住んでるのか気になるんだって。女子は男子寮に入れないし」
早口で適当な嘘をでっち上げると、俺は投影機を構えた。
「丁度いいや。カナリス、そこに座ってて。僕が撮って送るから」
「えっ?」
カナリスが困惑の表情を浮かべる。
「いやいや、僕が撮ってあげるからマオくん、そこに座ってよ」
「何で僕が……」
会長が欲しいのは、部屋の
「マオくん、きっとシラユキさんが欲しいのは部屋の
力説してくるカナリス。
「いやいや、それは無い」
「絶対そうだよ!」
否定するも、カナリスが納得しないので、仕方なくこう提案する。
「分かった。じゃあ二人で写ろう」
二人が画面に収まるように、手を伸ばして投影機を構える。
「マオくん、もっとくっつかないと入らないよ!」
カナリスがピッタリと肌を密着させてくる。お風呂上がりでいい匂いがするし、肌が火照ってるし、何だかドキドキする。
「じゃあ、撮るよー」
無事に
>【生徒会長】おい貴様、カナリスとそんなに密着してずるいぞ!(#^ω^)
>【生徒会長】それにしてもカナリスのやつ、中学の頃よりかなり胸が大きくなったな……( ¯ω¯ )えっちだ。
>【生徒会長】ああ~カナリスは可愛いし格好良いし、その上ドスケベボディーで最高だな!ԅ(¯﹃¯ԅ)グヘヘ
>【生徒会長】でも貴様は男色家だから、こんなエッチなカナリスを前にしても勃たないのだろう? なら安心だ✧(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑✧
「何のこっちゃ……」
その後しばらく、生徒会長の興奮気味のメッセージが続いたのだが、俺は風呂に入るふりをして、しばらくそのメッセージをスルーした。
付き合ってられるか!!
◇
「ねえ、授業が終わったらダンジョンの様子を見に行かない?」
イライラした様子でルリハが提案する。
ダンジョンが使えなくなってから早一週間。俺たちは、相変わらず補習を受けさせられていた。
ダンジョンがいつ直るのかという状況は全く知らされていない。
「そうだね、行ってみようか」
ただでさえ他の生徒に遅れをとっているのに、このままダンジョンに潜れないのはまずい。
レベルを上げないと落第してしまうかもしれないのだ。
調整というのがどういう作業なのかは分からないが、せめて調整がどこまで進んでいるのか、どのくらいの期間で使えるようになるのかは確認しておきたいところだ。
授業が終わる鐘の音と同時に、俺たちは校舎を出て裏庭に向かった。
見慣れたダンジョン前には、クザサ先生と彼の助手と見られる魔法使いが数人作業をしている。
「模擬ダンジョンの調整って、クザサ先生の担当なのね」
「うん。そうみたいだね」
夕暮れ時。
オレンジ色の逆光の中、銅像みたいにクザサ先生は振り返った。
「お前たち、こんな所へどうした」
抑揚の無い声。心なしかいつもより顔が険しい。
「いえ、調整っていつ頃終わるのかなって思ったので」
忙しそうに作業をする魔法使いたちに目をやる。
クザサ先生は眉間に皺を寄せ不機嫌そうに答える。
「見た限りでは大きな異常は無いようだ。もう何度か調整の必要はあるが、もうじき使えるようになるだろう」
「もうじきだって。良かったわね、マオ」
「うん」
ルリハとうなずき合う。
俺はさらに尋ねた。
「ちなみに異常の原因って分かってるんですか?」
クザサ先生は心底面倒臭そうに息を吐き出した。
「恐らく、最近隣国で起きた地震の影響で地中の魔力の流れに異変があったのでは無いかと思う。だから恐らくダンジョン内の魔力量を調整すれば直ると思う」
魔物の増加は人為的なものでは無い。
ということは例の魔王の噂とは無関係なのだろうか。だけど――
俺はクザサ先生の後ろ姿を見つめた。
先生の様子が何だがおかしいような気がするのは気のせいだろうか?
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