第19話 嫉妬

 中村さんの配信が終わり、わたしは急に不安になった。


 そしてついついTwitterに「中村さんわたしのことmammy姫ってわからなかったかも。落ち込むわ〜」などとツイートしてしまった。


 直ぐに、美月から返信がきた。


「中村さんがmammy姫とみゆきちゃんのことを名付けたんならわかってるよ」


 更に、その会話を見た、もうひとりの配信仲間である、理恵さんからも「中村さんは記憶力いいから大丈夫ですよ」ときた。


「そうそう中村さん記憶力いいよね」と美月。


 慰められて恥ずかしいのと、少しは嬉しかったのと、一番は、あなた達に中村さんの何がわかるのよ!という気持ちだった。


「ごめん、美月さん、理恵さん、わたしが悪いの。ずっと中村さんから離れていたから。中村さん、記憶力というより、とてもファンを大事にして努力されてるんだと思いますよ」


 少し嫌味な言い方になったかもしれない。記憶力だけで、ひとりひとりのことを把握できるはずがないではないか、と思ったからだ。


「みゆきちゃんは、前から中村さんのこと応援してたんただね」


 そうよ。配信観てからファンになった、あなた達とは違うの。


 わたしという人間は、なんて嫌な人間なのだろうか……。


 そして中村さんは、きっとこの会話を見ていると思った。姫たちのことは、ほとんど見ているからだ。


 それでも、わたしのことは、みゆきイコールmammy姫だとはわからないのではないかと思っていた。つまり自信がないのである。


 週に一度の中村さんの配信。待ち遠しい。日曜日が来るまでに、少しは他のメンバーのことを覚えておかなくてはと思った。


 Actor Dancersからの通知。入室すると、女性の方、だけど綺麗な方だった。そして、外を歩いている。風の音がゴーゴーと聞こえ、画面も乱れている。何故そんなところで配信を?話を聞いていると、宮崎県の海岸沿いを歩いているようだ。実家が宮崎県らしい。


 宮崎県は、わたしの母親の故郷なので、少し観ようと思った。わたしは綺麗な女性の方が好きだ。お喋りも得意なその女性は、後で調べると、沙織という方だった。


 とにかく、名前と顔を早く覚えなくてはいけないので、

 Actor DancersのメンバーをTwitterでフォローした。


 もちろん沙織さんもフォローして、配信を観たみゆきだと伝えた。


 以前からフォローしていたのは、男性の俳優さん、坂口さんだ。中村さんとTwitterで会話をしているので、なんとなくフォローしていた。お返事もたまにくれるので嬉しかったのだ。


 他のメンバーのアカウントも探してフォローした。ゴリさんもいた。


「ゴリさん、先日は配信でありがとうございました。フォローさせて頂きました」


「みゆきありがとう〜こちらでもよろしくね〜」


 また突然、Actor Dancersの配信の通知が来た。


 また外からだ。画面に、黒いジャンバーを口元まで隠しているイケメンが映った。


 誰っスか?


 わからないときのコメント欄頼り。なんと坂口さんらしい。ええ、Twitterのアイコンはこんなイケメンではなかったのに。


「今日はゲリラ配信です。みんなもいます。新しいプロモーションビデオの撮影を朝からやってます。死ぬほど寒いです」


「坂口さんですか?」わたしはそうコメントした。


「ああ、そうですよ」


「いつもTwitterで見てます。坂口さんイケメンですね〜」


「ありがとうございます。もうすぐ配信終わります。みゆきさんまたTwitterでね〜じゃあまた」


 終わりか。


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