第10話 Surrounds Margherita
織音さんはベンチに手を置き、その顔を近づけてきた。
「コイツの望みが叶えば、先ほど青田さんがおっしゃったように成仏してくれると思うんです」
さらに”ズイッ!”っと顔を近づけてくる。
ちょ、ちょっと、近い! 誓い! 地階! ちか~い!
徹夜で本を作らされて
もしかしたら彼のブース周辺の雌豹たちも表向き無視しながら、実は互いに
なるほど、私に対する
「ま、待って下さい織音……さん」
私はお尻を半歩? ずらして少しでも彼から離れようとするが
「待ちませんよ! このチャンスを逃せば、次はいつ貴女に会えるか……いっそ力づくで貴女をさらってでも!」
相手はともかく、女冥利に尽きるお言葉だけど、その理由が同じ喫茶店で働く嘆願だなんて……まだ廃部寸前の部活に誘われた方がマシに思えてきた。
でもここまで切迫するなんて、やっぱり身体を操られるのが相当いやなんだろうな。
って、さすがのこの状況はマズイ!
道行く人も立ち止まらないけど、こちらを見ているし、なんかコスプレの男性四人組もこっちに近づいてきて、私たちを取り囲んできた!
そのうちの一人、白のタキシードに銀髪長身の男性が、彼を背中から羽交い締め……じゃなく、私がやられたように後ろから……抱き……しめたぁ!?
「《カルラ》ァ~。私という男がいながら
文字にすると、いわゆるオカマっぽい言葉だが、それを端正な男性の声で私の耳に届けられるから、私の脳が軽く
さらに彼の肩越しに頭が動いているのが見えるから、もしかしたら背中でほおずりをしているのかも……。
「えっ……? ええぇぇ~~!」
ようやく状況が理解できたのか、彼は慌てて振り返ると、
「し、『
そして織音さんは、取り囲んでいる他の三人を順番に眺めると、一人一人に向かって叫び始めた。
「おおぉ! お天道様の下で女をくどき押し倒すとは! おとなしい顔をしていっぱしの
にやけながら立てた親指を突き出す、黒いタキシードに浅黒い男性には
「『
「白鳥、こちらのご婦人の顔が引きつっているぞ。トラウマにならないうちにやめるのが賢明だ」
淡々と重い声で話す、格闘家のような身体に茶色のタキシードを纏った男性には
「『
「おい女。気色悪い
勝手に問いかけて一人納得する、金髪に黄色のタキシードのナルシスっぽい男性に向かっては
「『
と、乙女ゲームのようにユーザーに向かって紹介してくれる織音さんであった。
「あ……あのぉ?」
「あ、ちょうどよかった。この方達が僕が働いている喫茶店兼バーの先輩方です」
「は、はぁ。そうですか?」
白鳥って人が顔を上げると、織音さんの肩越しに私を凝視してきた。
「ん? カルラ? ひょっとしてこのご令嬢が、僕の枕元で呟いた貴方の寝言の……」
「白鳥さん! 寝言はともかく! 貴方の枕元には一度も近づいていません!」
次に目黒って人が私に顔を近づけてきたぁ!
「ってことはぁ、このお嬢様が『マルゲリータ』ってか? 本当かよ? 思いっきり日本人の顔をしているけどな?」
今度は乾って人が、私……じゃなく目黒さんに顔を近づけたぁ。
「目黒よ。ご婦人の顔を詮索するのは男子として恥ずべき行為だぞ。マルゲリータ殿申し訳ない。コイツは今ひとつご婦人の扱いに
「あ、いいえ、気にしていませんから」
最後に隼って人が私なんかどうでもいいように吐き捨てた。
「織音。こんなところで遊んでいる暇があるのか? 今さっきおまえのブースに顔を出したが、荷物は置きっぱなしで、周りの人間もおまえがいきなり席を離れたと言ってたぞ。こんな所のマナーはよく知らんが、机を構えた以上、最後まで責任をとれ!」
「は、はい! あ、青田さん、ここではなんですから、また戻ってもらえますか?」
「ハ、ハァ……」
戦利品が入ったバッグを肩にかけると立ち上がり、織音さんの後をついていく。
またあの雌豹の檻の中に放り込まれるのか……
隼さんが言ったように逃げ出してもいいけど、織音さんに取り憑いたウンベルトさん。
そして、私に取り憑いたマルゲリータ……。
身体を操るみたいだから、このまま放っておく訳にもいかないし……。
そんなことを考えながらふと顔を上げると、織音さんの背中……の先には、両手をポッケに入れて歩いている隼さん!?
ええ? 私の左には、織音さんのお尻の辺りを凝視している白鳥さん!
ってことはぁ! 右には……両手を頭の後ろに組んでいる目黒さん!?
も、もしかして……って振り向くと、い、いたぁ!
私の後ろには眼をつぶって歩いている乾さん!?
なにこれぇ!? 囲まれている!?
ひょっとして私を逃がさない為ぇ!?
どうなっているのよぉ~~~!
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