乙女ゲー仕様でイケメン化するのやめてください、白雪姫の魔女様。

@kuramubon0827

第1話

あぁ、この世はなんて残酷だ。

生徒はおろか、教師までもが私をいじめられっ子だって言って。

私はいじめられてなんかない。惨めな子なんかじゃない、一人じゃない。絶対に。


そうだ。あいつらを殺せば気楽になりそうだ。

まずは、悪の美学を教えてもらいましょう。

そう、グリム童話の伝説的な悪役の一人。白雪姫の魔女に。


「かつて、自らの美しさに囚われ、自らの娘を殺そうとした罪悪の魔女よ。

我、芥 百合子と計画し、この世界に顕れよ。

白雪姫の魔女!」


図書室で見つけたこの黒魔術の本によると、これで物語のキャラクターが召喚するはず。

さて、どんな美しい見た目なのかしら。白雪姫の魔女様は。



「俺は白雪姫の魔女。お近づきの印にリンゴは如何かな?」


現れたのは黒髪で白い肌、真っ赤な瞳が印象的なイケメンという部類の青年。

なぜか、王冠をつけている。


「チェンジで」


「えっ、ちょっと待ってくれ。えっ」


イケメンは驚いた様子で、私をみる。

私は黒魔術の本を使い、呪文をやり直そうとした。


「ちょちょっと待ってちょっと待ってお嬢さん」


「ネタが古いです。あなたはだれ!?」


イケメンは本を掴み、プルプル震えている。


「えっ!?お前さんが俺を呼び出したんだろ!?白雪姫の魔女だって」


「あなた男じゃない!!!」


イケメンは頭上にはてなマークを浮かべたようで、体をそっと見回した。そして鏡を取り出す。

その様も美しく、確かに男版の白雪姫の魔女って言ったら信じられそうだけれど……。


ここは現実!!!乙女ゲー展開なんてあるはずないのよ!!!


「ええっ!?本当に男だ!!なんでこうなった……。

まぁ、出てしまったことには仕方がない」


イケメンは私に目線を合わせると、そっと微笑みかけた。


「さて、我が主人よ。たとえ信じてもらえないとしても、今日から俺はお前の従者だ。

俺が知っている限りの悪虐を尽くそうぞ」


その笑みは背筋がゾッとするものがあり、確かに悪なのだなということがわかった。


「あなたが本当に白雪姫の魔女なら、わかるでしょ?

殺したい女がいるの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

乙女ゲー仕様でイケメン化するのやめてください、白雪姫の魔女様。 @kuramubon0827

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ