第6話 始まりの場所

「何だと…?」

イマドが、険しい表情をしながら振り返る。

「あの女が、言ったんだ。“自分が眠っていた結婚式場ばしょへ赴けば、何か思い出すかも”とな」

「それで…例の結婚式場ばしょへ行きたいと、彼女が言ったんだね?」

コディーの問いかけに対し、バーゼルが答える。

彼が兄と弟にその相談をした理由は当然、その場所へ行くには、私を屋敷の外に連れ出す事を意味しているからであった。

「…途中で逃げられる危険性ないかな?ねぇ、イマド兄さん!」

コディーは腕を組んで考えながら、兄・イマドに視線を移す。

一方、イマドも神妙な面持ちで考え事をしていた。

「本来ならば、絶対に許可はしない…が、いいだろう」

「そうだ。無論、見張りとして俺は同行するぜ」

「当然だ。一人で行かせれば、そのまま逃げおおせる確率が一段と上がるからな」

「了解」

兄からの了承を得たバーゼルは、兄と弟に背を向けて、大広間から姿を消す。

バーゼルが広間を去った後、コディーが不意に呟く。

「メル・アイヴィー。彼女の以前の持ち主だった“魔王”について、何か解るといいね」


時間にして夜中の0時頃――――――――――――当然、結婚式場は誰一人としておらず、夜の静けさの中に、メルとバーゼルが降り立つ。

「綺麗…」

式場内にあるチャペルにはステンドガラスがあり、そこから月光が差し込むことで、独特の雰囲気を出していた。

それに対し、私は素直に思った事を口にしたのである。

私が周囲を見渡す一方、一緒に同行してきたバーゼルは、かなり古いと思われる大きなオルゴールを見つける。

「人間が考える事は、よくわかんねぇよな」

を細めながら、バーゼルはそのオルゴールに手を触れる。

おそらく、チャペルに設置されていたオルゴールは翌日に行われる誰かの挙式にて、使われる代物なのだろう。

「…バーゼル」

一呼吸を置いた私は、そんなバーゼルに声をかける。

心臓の鼓動が、よく聴こえる…。話を自分から切り出すのが、こんなに怖いと思うなんて…!

私は、自身の心臓の鼓動を体感しながら、閉じていた唇を開く。

「2年前…私は、“彼”によって、この人間界にあるチャペルに封印された。無論、普通の人間には知覚できない結界を張って…。でも、それって…」

「……何が言いたい?」

私が言葉を紡いでいると、バーゼルは深刻そうな表情かおをしながら、こちらを振り向く。

「それって、本当は貴方の仕業なんじゃないの?バーゼル…。いや………サント」

「…!!!」

私が告げた真実ことに対し、バーゼルが目を丸くして驚く。

完全に記憶が戻った訳ではないが、この後に衝撃の事実を知らされる事となる。

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