くるみ割り人形と遭遇した翌日。

 一連の騒動の答え合わせをするため、部員に加えてフィン先生と藤森に集まってもらった。六人が部室に入ると圧迫感が急に増す。

 俺はいつものように手持ちのホワイトボードを取り出した。


「さて、みんなに集まってもらったところで答え合わせをしたいと思う。くるみ割り人形の背景に隠れた真実を」

「真実……?」

「その前に、先生と藤森には説明しておきたいことがある」


 俺はホワイトボードを使って『世界像』についての説明を始めた。

 この世界は、万人に共通の『世界』と個々人が見ている『世界像』の二つに分類される。共通の『世界』は物理的に存在している空間のことで、『世界像』とは個人のフィルターを通してみる世界のことだと。

 例えるなら、とある小学生の『世界像』は近所周辺にとどまるだろうし、海外経験のない日本人が見る『世界像』は日本内のみだ。このあたりの話は難しいので、だいたいの概要を理解してもらえれば結構。


「なんだか哲学的な話だね」

「一応ここは現象学研究会なんでな」


 と感心する藤森に付け加えておく。

 ただし、これはあくまで前置きだ。


「本題に移ろう。『世界像』とはあくまで個人のフィルターを通してみた世界のことだ。極端に言えば、個人の妄想がふくらんだ世界といえる。『僕はたしかにこの目で幽霊を見たんだ』ってやつだな。思い込みともでも言い換えようか」

「うんうん、なるほど」

「だが、もし同じ『世界像』を持つ人間が複数人いたとすればどうなる?」


 幽霊を見たと主張する少年Aがいるとする。彼は幽霊を見たと言いまわるが、当然周囲の大人は信じない。ただの見間違いだろうと。

 しかし、幽霊を見たとする少年Bが現れたら話は変わる。大人は少し戸惑ってしまうかもしれない。

 さらに少年C,少年Dが次々出てきたとすればもはや見間違いだと否定しきれない。

 つまり、複数の同じ『世界像』が重なったとすれば、それは現実の世界として顕現することになる。


「この現象を俺たちは『多重世界化現象』と呼んでいる。多くの心霊現象にあってきたが、ほとんどが『多重世界化現象』だった。まあ、たまに微妙なときもあったけどな」

「色々ありましたねえ、わたしたちも……」

「あはは……っ」


 部員の表情が明らかにげんなりした。

 そう思うなら引き受けなければいいだろうに。とか思うものの、俺も加担しているから何も言えない。


「ソレジャア、今回ノ出来事モ」

「はい、『多重世界化現象』によるものです」

「ソウデシタカ……」


 俺の話を聞いてフィン先生は安堵の息をもらした。本物の心霊現象じゃないと分かって安心したのだろう。

 だが、騒動はこれで終わりじゃない。


「安心するのはまだ早いです。このままだとくるみ割り人形は現れ続けます。それも、先生と藤森の二人だけに」


 びくりと二人の肩が跳ね上がった。あまりの驚きに先生は言葉を失っている。

 先に口を開いたのは藤森だった。


「どうして僕たちだけだっていうんだい?」

「…………」


 ……ここから事件の核心に触れていくことになるだろう。

 言葉は慎重に選ばなくてはならない。二人の人生を大きく変えてしまう可能性があるからだ。

 目を閉じ、ひとまず大きな深呼吸をする。

 言葉を紡いだ。


「単刀直入にいわせてもらおう。今回の『多重世界化現象』の原因は藤森と先生にある」

「ド、ドウシテッ! 私ハナニモシテマセンヨ?」

「…………」


 動揺を隠せない先生に対し、藤森は妙に落ち着いていた。その様子からして、やはり分かっていたんだろう。俺の推理に間違いはなさそうだ。

 ペンを握りホワイトボードに書き込んでいく。


「そもそもなぜくるみ割り人形なのか。頭部を砕くバケモノのイメージなんてそれこそ他に多くある」

「言われてみればそうですね。どうしても、くるみ割り人形じゃないといけなかったとか」

「琴葉の言う通りだ。くるみ割り人形にこそ意味がある」


 ホワイトボードに書き終え、先生と藤森に見えるようひっくり返す。

 俺は次のように並べた。


 くるみ割り人形

 くるみわりにんぎょう

 KURUMI WARI NINNGYOU


 もう一つ説明を加える。


「くるみ割り人形は『俺を殺せ』と言っていたな。『多重世界化現象』において、無駄なものは一つもない。すべてがその人の『世界像』で構成されているからだ」

「『俺を殺せ』にも意味があるってこと?」

「もここ、『俺を殺せ』を英訳できるか」

「ふぇ?」


 唐突な質問に変な声が出るもここ。

 彼女はあたふたと手を騒がしくさせたのちに、


「『KILL ME』……かな?」

「さすがだ」


 もここが訳したように、『俺を殺せ』とはキルミーと発音する。

 ここまで言うと、泡子が「え……」と声をもらした。


「どうした、泡子?」

「……まさか、『くるみ』と『キルミー』がかかってるわけじゃ……」

「いやいやバブルン、さすがに小学生でも笑わないような洒落では」

「まさしくその通りだ」

「「えええ~~~っ!!?」」


 もうびっくら仰天だった。天地がひっくり返ったかのごとく三人の部員が驚きの声をあげる。隣の部室に申し訳ないくらいに。

 ……いや、最初は俺もどうかと思った。

 ただ、考えてみれば当然なのだ。

 日本人と外国人の音を認識する構造は根本から違う。


「フィン先生。あなたの友人があの踏切で亡くなったとおっしゃっていましたよね。くるみ割り人形をひどく怖がるのと彼の死には何か関係があるんでしょう」

「…………」


 彼は深く顔をうつむけたままだった。

 先ほどまでの言動とは打って変わった静の様相。

 友人を失う傷は十年経っても癒えないものなのか。俺にはさっぱり実感できない。……ただ、ゲンカクの誰かが……と思うと、分からんでもない。

 言葉があったのはしばらくしてから。

 ひどく沈んだ声音だった。


「……烏丸(からすまる)トイウ人ガイマシタ。人形ヲ集メルノガ好キナ、少シ変ワッタ人デス。転校シタバカリノ私ト仲良クシテクレタ、本当ニ変ナ人デシタネ……」


 話によれば、フィン先生と烏丸さんはとても馬があったらしく、あっという間に親睦を深めたそうだ。日本の伝統的な場所を紹介したり、クラスメイトとつながる仲介役になってくれたり、時には女子更衣室をのぞこうとしたとか。


「彼ガイナケレバ、今ノ私ハアリマセン」

「最後の話は聞き捨てならないぞ」

「次の新聞の記事にしようっと」

「こら二人とも! 水を差さないでください!」


 と、部長をはじめとする部員たちにこっぴどく指導される。いやまあ、今のは俺たちが悪かった……のか?

 とにかく、烏丸さんと先生は唯一無二の親友になったらしい。

 そんな、ある日のことだ。

 烏丸さんの部屋で遊んでいるとき、ドイツの土産だといって一つの人形を取り出した。


「烏丸ハ笑イナガラ言イマシタ。ク、ク……キル……エエット」

「くるみ割り人形、ですよね」

「ハイ……。当時ノ私ニハ全ク聞キ取レマセンデシタ。今デモ発音スルノガ難シイデス。ク、ク、キル……?」


 必死になって口にしようとするも日本語とは言えないような発音になってしまう。

 琴葉が首をかしげた。


「でも先生は烏丸くんと話せていたんですよね。ちょっとの日本語くらいは分かるんじゃないですか」

「いいや、くるみ割り人形の発音は海外の人にとって最悪なんだ」

「へ?」


 ホワイトボードの文字を消し、新たな言葉を書き込んでいく。実はこういう言葉の不思議な話をしているときが一番楽しかったりする。

 喜々として、ただあくまで冷静さを取り繕って説明を再開した。


「日本語のラ行は特殊でな、海外のLとRのどちらでもない。先生の授業でもやっただろう」

「た、たぶん」


 寝てたな、こいつ。

 先生にジト目を向けられ気まずそうな琴葉はさておき、


「俺たち日本人はLとRの発音の違いが分かららない。逆をいえば日本人の正確なラ行の発音は外国人にとっちゃちんぷんかんぷんなんだよ」

「ほうほう。それは面白いですね」

「くるみ割り人形には『る』と『り』がほぼ連続して並んでいる。それに『わ』と『ぎょう』ときたもんだ。聞き取りにくさナンバーワンといっても過言じゃないくらい『くるみ割り人形』は最悪な発音をしてるんだよ」

「「へえ……」」


 一同の感心が心地いい。俺もまだ子供なもんで、得意なことを披露したときの優越感には抗えない。先生の同意のうなずきがまたいい。

 ……話を戻そう。


「これらを踏まえた上の状況がこうだ。烏丸さんに気味の悪いくるみ割り人形を見せられながら『俺を殺してくれ』と言われた」

「GREAT。スゴイネ、稲荷君」

「でもゆうやくん。友達の家でキルミー――私を殺してほしいと言われただけでトラウマになるのでしょうか」

「いいや、トラウマになるのはこの後の事件だ」

「事件? …………あっ」

「烏丸さんはその後電車に轢かれて亡くなっている」


 自分のことを殺してくれと言った親友が直後に死んでしまう。これでは本当に死にたがっていたようにしか思えない。

 あのとき自分が止めていればと後悔した夜もあっただろう。もっと日本語の勉強をしていれば理解できたじゃないかと呵責したこともあったかもしれない。

 感情が渦を巻き、しだいに膨らむにつれてついに耐えきれなくなる。

 その結果、気味の悪いあの人形の呪いだと恐れるようになった。

 これがフィン先生の身に起きた真実だ。

 彼は巨体に似合わない消えてしまいそうな声で懺悔する。


「……何度叫ンダカ分カリマセン。一層自分モ死ノウトシタコトガアリマシタ。デモ、出来ナカッタ。誰モイナイハズナノニ、声ガスルンデス。『俺がいなくたって大丈夫。お前なら楽しくやっていける』ト……」


 鼻をすする音があった。

 ぽたぽたと机に滴がこぼれ落ちる。

 来るはずだった明日を見つめて、彼は嘆く。


「ドウシテ自殺ナンテシタンデショウ。ドールノ呪イナンテ馬鹿馬鹿シイ。私ハ自分ニ言イ訳シテイタダケナンデス。……私ハ、親友失格ダ」

「そんなことはない」

「……?」

「そんなことはないと言ったんです」


 茫然とする先生に俺ははっきりと言ってやった。

 彼は今、悲しみと後悔と憤怒の世界に閉じ込められている。そんなの琴葉のあめ玉がなくったて一目瞭然だ。

 ふざけるな。

 そんなものは馬鹿げた虚構の世界だ。


「先生は勘違いしています。本当にくだらない、ちっぽけな勘違いを」

「ゆ、ゆうやくん何を……」

「これを見てください」


 ポケットから四つ折りにたたんだ小さな紙切れを取り出した。安っぽいざらっとした手触りの新聞記事だ。

 手に入れるのに苦労した。なにせ十年前のものだから。

 見出しにはこう書かれてある。


「『勇敢な青年が小さな命を救う』……?」


 ちょうど十年前のこと。

 青年はいつも通り家に帰る途中だった。この見慣れた風景も見納めかと思うと、ちょっとばかり胸が苦しくなる。けれど自分で決めた道だ。後悔はない。

 心配事だってない。親友は一人でもやっていける強さを持っている。

 踏切に差しかかった。ここは魔の踏切と呼ばれていて、一度引っかかったら最後、五分は通れない。

 ペダルに込める力を強めた。一気に加速し、迫りくるバーをくぐり抜ける。

 頭一つ分のところで向こう側まで渡りきることが出来た。


『しゃあ、ギリギリ!』


 自らの運転テクに拳を握りしめるが、そこで妙な音がした。

 背後で自転車が倒れたような気がしたのだ。


『……っ!』


 小さな男の子だった。自転車を横転させ、声をあげて泣いている。青年のあとに続けば渡りきれると無茶をしたのかもしれない。

 気づけば身体が動いていた。

 すかさず踏切の中に飛び込む。

 すでに電車は目の前まで迫っていた。


『行けッ!!』


 男の子の背中を押した瞬間。

 まぶしい光が青年の視界を覆い尽くした。


「これが十年前の真実。烏丸さんは自殺なんかしていない。命を賭して男の子を救おうとしたんだ」

「…………烏丸ハ……自殺ジャナイ……?」

「当時のことを避けまくっていたんでしょうね。烏丸さんの母親が言ってましたよ。息子と仲良くしていた留学生のことがいまだに気がかりだって」

「なるほど。新聞の記事もお母さんから拝借したわけですか」

「今日はずいぶんと冴えてるな琴葉」

「ほめても何も出ませんよ~」

「ほめてませんよ~」


 と、まあ事件の全貌としてはこんなところだ。

 くるみ割り人形の件もあって烏丸さんの自殺は自分のせいだと勘違いしていた先生。だが実際は男の子を助けるために亡くなっていた。

 本当はここで幕引きのはずだった。

 けれど、一人役者が足りない。


「なあ、藤森。今の話を聞いてどうだった?」

「……烏丸さんはカッコよかったよ。今だって僕の憧れなんだもん」

「……エ?」


 深い衝撃にやられた先生の顔が上がる。ついでに部員全員の目も点になっていた。まあそうなるよな、普通。

 震える声の琴葉が言った。


「そ、その言い方だと、藤森くんは烏丸くんを知っているような……」

「もちろん。だって僕が助けられた男の子だからね」

「「――――ッ」」


 そのときの悲鳴というか、歓喜というか、よくわからない叫び声はたぶん建物全体に響き渡ったと思う。謝罪は隣の部室だけじゃすまないようだ。

 まるでドラマのような展開に言葉を失った面々。

 発言権は藤森に移る。


「僕が烏丸さんに助けられたのはちょうど十年前。僕が五歳のころだね。新聞の記者の人に家まで押しかけられたり、烏丸さんのお葬式に参加したりしたけど、あんまりよく分からなかった。……ただ、彼がカッコよかったことだけは鮮明に覚えてる」

「今回の新聞の記事にしたのは烏丸さんの母親に会ったからか?」

「へえ、そこまで聞いたんだ」


 烏丸さんの母親のもとを訪ねたとき、烏丸さんの過去話をうかがっていると、一週間前に藤森に偶然会ったと話してくれた。最後に会ってから五年以上経っていたらしく、長いこと話し込んだそうだ。

 たしかに新聞の記事にするにはちょうどいい機会だったかもしれない。

 だが、俺には理解しかねる点があった。


「どうしてくるみ割り人形の噂として記事を書き上げたんだ。烏丸さんの英雄譚として描くなら全く違った方向性になるだろう」

「思い出してほしかったんだ」


 ……思い出してほしかった?

 藤森の視線がゆらりと移り変わる。

 その先にいるのはフィン先生だ。


「私……デスカ?」

「烏丸さんに親友がいたのは知っていました。ただそれが誰なのかはずっと分からないままです。きっかけは稲荷君の言うように烏丸さんのお母さんに会ったことでした」


 視線がだんだんと遠のいていく。

 声音はゆったりとしていた。


「息子の親友が同じ学校で先生をしていると聞いたときピンときたんです。烏丸さんの親友はフィン先生だったんだって」

「私ガ……」


 なるほど。だからくるみ割り人形の新聞の記事を書くことで、フィン先生に過去の出来事を思い出してもらおうとした。先生にしかわかららないメッセージなわけだ。

 けれど、まだ納得しきれない。


「なんで先生に思い出してもらう必要があったんだ。それに烏丸さんに親友がいたことをお前が知っているのもおかしいだろう」

「まあ、そう思うよね。――コレがなければ」


 そう言って藤森は一枚の封筒を取り出した。手紙なんかをいれる白く洒落たデザインだ。

 日焼けが見られる、年季の入った封筒。

 彼は大事そうに封を切る。

 そうして、フィン先生に差し出した。


「これは本来あなたのものです。十年間、ずっとあなたのことを探していました」

「…………?」


 不思議そうに受け取った先生は手紙に目を落とした。

 静かな空間だった。

 時計の音だけが一定のリズムを刻む。

 ややあって。


 ぽたっ

 ぽたぽたっ


 大粒の涙が手紙の染みとなってしわを生んだ。

 途端、


「うっ、うっ……うう……っ」


 ときどき嗚咽の交じった鳴き声をあげた。

 手紙を置いて、子供のように、ずっと泣き続ける。


「僕は無事にあなたの親友の言葉を届けられましたか?」

「…………エエっ。確カニ受ケ取リマシタ……っ」


 藤森の柔らかな問いかけに先生は何度も、何度も頷いた。

 どうやら長年の愁(うれ)いごとに決着がついたらしい。

 そばの琴葉のひじをついて小声をかける。


「(よかったな、無事に終えられて)」

「(手紙の内容も気になりますが、わたしたちが読むものでもありませんから)」

「(そりゃそうだ)」

「いいえ。あなた方にも知る権利はあると思いますよ。ねえ、先生?」

「ソウデスネ。君達ニハ、オ礼ヲシテモシ尽クシキレマセンカラ」

「……では、お言葉に甘えさせていただきます」


 机の上の手紙を拾い上げ、三人にも読めるような体勢をとる。

 書き出しには『DEAR FINN』とあった。



 突然こんな手紙を渡してわるい。

 お前には言っておかなくちゃいけないことがあってさ。

 俺、留学することにしたんだ。

 お前は気味悪く思うかもしれないけど、世界中の人形を見て回ってさ、いつかは自分でも作れるようになりたいなって。

 くるみ割り人形のときはごめんな。まさかあんなに怖がるとは思わなくて。お前って意外と怖がりなのな。

 ……

 ……

 お前のおかげなんだ。

 お前が日本にはない文化を教えてくれたから、世界のことを知れた。

 それに、不慣れな日本でも頑張ってるお前の姿を見てるうちにさ、俺も負けてられないなって気持ちになってきて。

 恥ずかしいこと言ってるのは自覚してる。

 だから手紙にして渡してるんだろう、察してくれ!

 ……なんて冗談はおいておいて。

 留学先は決まった。

 この手紙を読んでるころには、お前のそばにはいないだろうけどさ。

 俺がいなくたってお前はやっていけるだろ。

 お前は強いんだ。

 いつか教えてくれた先生になるって夢、絶対叶えろよ!

 甘々の先生だろうけど、絶対生徒に愛されるからさ。

 っと、そろそろ書くスペースが無くなってきたな。

 最後にこれだけは言わせくれ。

 ありがとうな、FINN。

 お前と出会えてよかったよ。


 FROM 手紙の前で恥ずかしがってる烏丸



「……ヤッパリ気ノセイジャナカッタンデスネ」


 先生はつぶやいた。

 彼のすぐ隣に顔をむけて。


「君が支えてくれたおかげで、楽しくやれてるよ」


 誰かに話しかけるように。

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