第120話 傷跡が消えない

親指の付け根あたりを、のこぎりで切ったのは、

もう一年以上前です。

ぱっくり切れたものの、血も止まったので病院には行かなかったのですが、

傷はふさがり、痛みもない割に、

傷跡がはっきりと残ってます。

まだ幼かった頃の、点滴の針が入っていた場所の傷跡は、

一応は消えたようですが、

この手にある傷跡は、十年どころか二十年、

あるいは、死ぬまで消えないかな。

何も問題はないのですが、気になると言えば気になる。

自分の手が他人にどう思われるか、気にならないわけで、

つまり自分で自分を気にしている。

そんなことって滅多にないと思いますが、

例外がこの傷跡なのでした。







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