ある力学（詩篇だって、りっぱな方程式）

第69話 ボクでなくなる

「　ボクでなくなる　」

分解するってことは

分子のレベルでバラバラになり他の誰かとく

　っついてなにかになっていくこと

考えたけれど

そこにボクはもういなくてくっついた相手の

　誰かもいなくて

まったくあたらしい（の）がいて

こんにちは、やあ、よろしくって

化学の実験で水を電気分解したなあ

気体と気体が反応すると液体になり

見えなかったものが見えるようになり

電流でまたもとにもどる、もどった

どうして、Ａ＋Ｂが、Ｃになっちゃうのかな

見たところＣだったのに、つくりはＡ＋Ｂ、

　だから、またＡとＢにもどるんです、そう

　いう説明だった

でも、分解されたボクはもうもどらない、も

　どれない

あたらしい（の）は１００％あたらしいので

こんにちは、やあ、よろしくって

もう考えるのはやめよう

考えないボクになる

そうすれば、あたらしいせかいに行けそうだ

　し、きっとさっきと同じで、ボクは、つく

　りはＡとかＢとか、Ｃとかなんだ、たぶん

　きっとそれはものすごい数で、数字で、ア

　ルファベットじゃ足りなくなる

それがまたバラバラになって

もしかしたら、バラバラになったらバラバラ

　は見えなくなるかも知れない、電気分解と

　同じで

見えないのなら、もう考えるのはやめよう、

　（の）なんだから、そのまま、しずかに、

こんにちは、やあ、よろしくって