第38話 濃霧(レーダー)

「 濃霧(レーダー) 」


道がどっちにまがってんだか

もしかしたらあの霧の向こうからこちらを眺

 めているというか

何が

もちろんあちらもこちらのことはよく見えな

 い

臭いかね?

でもそれはこちらが風上のときだがね

だいたいさあだけど

濃霧のときには風はほとんど無い

濃霧の手で首根っこまで捕まれているんだか

 ら

臭いでなくて音波か?

微弱な音波までビンビンと受信している

受信できる周波数の領域がとてもひろいとか

耳が鼓膜が超敏感なヤツ

それは恐らく人間以外の全部?

揺れってものもありますな

そうさねえそうさね

歩きかたにデリカシーが

象さんもあれで理にかなった歩きかた

理解できるのは地震ほどのスケールになって

 からだろう?

人間は仕方がない

濃霧こそわたしたちの世界だと言わん樹木た

 ちにこんなに囲まれて

濃霧だ

道がどっちにまがってんだか見えない

まったく何の手掛かりもない

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