第23話「湯船で寝るのは危険です。失神と同じです。(へーにゃん)」

 額にポツンと一滴の水が落ちた。ゆっくりと目を覚ますと周辺の湯気が周囲を包んでいた。

「ああ、いつの間にか寝てたのか……。ファー〜眠い〜〜」


 ポツンと一滴の水が頭に落ちる。

「湯船だもんな。湯気があれだけ出てりゃ、結露するわな。それにしてもこの場所ってカビとか生えないのかな?」


 湯船から出ると、うーんと手を上に伸ばして伸びをする。

 またポツンと頭に水滴が落ちてきた。今度はなんだか粘っこい水滴が降ってきた。


「……、ん?俺は寝ぼけてるのか?常にこの状態の環境だし、さすがに掃除しないとダメなのかな?」


 ふと顔を天井に向けると、パタパタと飛んでいる一般成人男子ほどのドラゴンが俺の顔に向かってよだれを垂らしていた。

「うわああああああああ!!!!ドラゴン???」


「キュピッ!!」

 驚きのあまり尻もちをついてしまった。だが向こうも驚いたらしくそのまま湯船にダイブした。

 周囲に温泉の水しぶきが飛び散る。当然俺の身体にも桶で掛けられたかのように水しぶきが飛ぶ。


「な、なんだと!!!!」

 思わず声が出てきたけれど、一体なにが起こった?なぜこの空間に得体のしれないドラゴンっぽいものがいるんだ。さては魔王かミィの仕業なのか、はー。あり得そうで怖い。

 俺はこめかみを手で押さえながら、落ちてきたドラゴンの様子を確認する。

 ドラゴンは湯船にぷかぷかと浮いていて、顔が湯船に漬かり、背中を出した状態だった。時折、ビクンビクンと身体を震わせていた。

「このままだとヤバそうだな。しょうがねーな。全く、おーい!起きてるか〜」

 俺は湯船に浮いているドラゴンを揺すりながら、声を掛けるが返事がない。


「おい、おい、大丈夫か!返事を……」

 ドラゴンの寝息と共に、「ぐー、ZZZ」と言う寝言が聞こえてきた。


「こ、こいつ寝てやがるのか?マジかよ」

 いくら揺らしても起きる気配もないので、背中越しから俺の顎にドラゴンの頭を固定し、ドラゴンのお腹周りを俺の手で持つ形で、足をスるように運ぶ。


「う、重たい……。だが持てないほどでもないが、このままでは腰がやばい。早く運ぼう」

 木のすのこまで一人で運び、いまだに寝ているドラゴンを横にしてから、ちょっと汗をかいたのでそのまま温泉にダイブ。

「ふぅーーーー。気持ちいい!!」

 自分の腰をすりすりと触りながら、いまだに寝ているドラゴンを凝視する。


「起きたらどっか行くだろう。さてもうのぼせて来たし、もう帰るか」

 タオルで身体を拭きながら、ドラゴンを見るとブルリと震えているのに気づく。

 もしやこいつ濡れてて寒いのか?しょうがねーな。俺自身の身体を拭き終わるとパンツを履き、手に持っているタオルを自分の籠に置く。

 別の籠に入っている未使用のタオルを手に取ると、ドラゴンの濡れている身体を拭いてやることにした。

「むにゃむにゃ、ZZZ」

 こいつ本当に爆睡してやがるな。このまま起きないんじゃないのか。洗車後の水しぶきを拭き取るように丁寧に身体を拭いてやった。


「ふー。これで大丈夫だろう。風邪は引かないと思うし、バスタオルを身体にかけて帰るか」

 まだ寝ているドラゴンの身体に一般用のバスタオル(白)を身体にかける。やはり身体からはみ出したが無いよりかはマシだろう。

「風邪ひくなよ。さて原稿でもやっかな。ドラゴン物語とかな、ははは」


「…………」

 二枚の使用済みタオルを手に持ち、俺は自室へと帰っていった。後ろから一瞬なにかの視線を感じたが気のせいだと思い、気にすることもなかった。

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にゃーんから始まる温泉相談所by押し入れ 誠二吾郎(まこじごろう) @shimashimao

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