第4話「その少女は猫っぽいなにかでした」

 俺はすかさず、背を向けて、耳まで真っ赤にしてしまった。顔まで熱い。なんでたまたま入った温泉が女湯なんだよ。

「あの~」

 その少女は俺に声を掛けてきた。何て返事を返そうか。これって俺が捕まるパターンじゃない?

 目の前にいるオレンジ、黒、白の三色の髪の毛の少女は口を開けたのと同時に、俺も声を出す。

「ごめんなさい。警察には通報しないで」

「ご主人様?にゃんでここに?」


「「え?」」

 同時に俺と少女は声が被ってしまった。え?ご主人様?俺はこんな少女なんて知らないぞ。まして彼女すらいない俺だ、ご主人様なんて、メイド喫茶でしか言われたことがないぞ。

 もしかして、何かの聞き間違いだろう。こんな無名な小説家なんかに媚を売る奴なんてどこにいるんだ。俺よ、もう少し冷静になれ。ご主人様なんてお金出さないと言われないだろう。

 俺は首を横に振りながら、パンと顔を叩いた。よし、これで冷静に……。

「あの~、ご主人様?なんでここにいるニャン?」


「夢じゃない?」


「驚き過ぎだニャン。にゃんだい、私の裸を見たってぐらいで興奮しちゃったニャン?いつも見てるじゃんかニャン」

 「ぷークスクス」とバカにするかのようにその猫耳少女は俺に話しかけてきた。手の平を口に置き、ニヤニヤ顔だった。


「なんだよ。初対面の癖に、それにお前年下だろう。俺をバカにするんじゃない。それよりもなんだよこの温泉は?マンションの部屋にカビが生えるだろう」

 なんだこいつは?バカにするのも大概にしろ。それよりもなんでこんな場所に温泉なんか作ってるんだよ。こいつが作れるわけないけれど、他にこいつしか居ないからこいつに八つ当たりしてやろうか。


「それよりにゃんでこの場所にご主人様が居るんだニャン?どこから来たんだニャン?」

 こいつ何を言っているんだろうと俺はそんな目で見ながら、言ってもいいのだろうか、変な奴だろうと思われないだろうかと俺は悩みながらも、

「なぜか洞窟があったからはいったんだ。そして向かったらこの場所が出来てたってことなんだが」

 俺がそう言うと、猫耳少女は「あーーーーー」と叫んだ。俺は耳を手で押さえながら、「何しやがる」とその少女に言う。

 だた、目の前の少女は頭にある猫耳の近くに手を置きながら、舌を出して、てへぺろのポーズを取った。

「認識バリアー貼るの忘れてたニャン。ご主人様に迷惑かけてしまったニャン。ごめんね」

 そんな少女は全裸のまま、悪びれる様子もなく形だけ謝っていた。

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