第4部 「摩天楼の決戦編」

35話




ー前回のあらすじーーーーーーーーーーーー

新たに明かされた白石茜の能力、『システム

ディスターバー』 。 " 自身に伴うあらゆる困難や限界" を"克服"できるという代物である。


そんな彼女の圧倒的な実力差を前に桐生達は大苦戦をしいられていた。 そして死闘の最中、桐生に向けて放たれた白石の一筋の光線が彼を庇おうとした敷島の体を貫通してしまう。 怒りと絶望色に染め上げられた桐生は・・・!?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



桐生の身体の細胞が破壊されるまであと十分。 この間に白石が桐生を殺せれば白石の勝ちで世界は滅亡する。桐生が白石を殺せば桐生の勝ちである。


「だが仮に貴様が私を殺せたとしても貴様の肉体はボロボロに崩れるだけだ。それが分かっててなぜそこまでして立ち上がる?大人しくしていれば全て終わりだろう。そこまでしてこの世界を救いたいのか?このくだらない世界のために。」



「プッ、フフフッ。」


「なにがおかしい?」


「ああわりぃ。あまりに馬鹿馬鹿しかったんでな。」


桐生の表情には自信が漲り始めていた。 どこから湧いて出てきたのかもわからない自信が。



「『くだらない世界』か・・・。確かに、俺は正義のヒーローなんかじゃねえ。 特殊な能力を除けばごくごく平凡な高校生だ。 だからそんな人間が偉そうな事言うのはなんだけどさ、俺はそんな『くだらない世界』が好きだったりするんだ。 人間ってのはくだらない事で笑い合い、くだらない事で喧嘩する。そんなくだらない生き物なんだよ。 」



「何が言いたい?そう思うのなら一思いに世界をぶっ壊してしまえばいいだろうが。」


桐生は白石の声など一切耳に入れずに話を続ける。


「俺たち人間の死亡率は百%なんだ。否、人間に限った話じゃない。鳥も、魚も、動物も、それに植物だっていつかは必ず朽ち果てる。これはまぎれもない真実だ。」


だがらこそ、と一度言葉を切ると


「折角生まれてきたんだ。楽しんでやろうとは思わねーか? 確かに、苦しい事があるかもしれない。辛い時が来るかもしれない。 でもそん時は乗り越えればいい話じゃねーか。人生ってのは多分神様が創り出したある種のゲームなのかもしれない。 目的地に辿り着くまでに障害の一つや二つはあって当然なんだ。」



「・・なんだ、その下手くそな例え話は?」


「一ノ瀬・・。ここは空気読めよ・・。」



「くだらん・・。くだらんな。今更そんな出鱈目な感情論で私の心を動かせると思うな。私の魂は五千年もの歳月の間、幾多の世界を渡り歩いてきた。輪廻転生という形でな。あの頃までは楽しかったよ。

食料を手に入れるため、権力を奪うため、財産を守るため、 ある者がなんらかのきっかけを与えれば人間は人間を容赦なく殺す。親を、兄弟を、親友を、仲間を奪われた彼らに残るのはただ憎しみと哀しみだけだ。『戦争』は私に快楽と娯楽を提供してくれる。 ・・それなのに何だ、現代のこの堕落っぷりは?私は平和なんて物には一片の価値も見出す事は出来ない。」



たったそれだけの理由だった。『冥王』がこれまで何度も何度も生まれ変わって来たのはただ”憎しみ“や”絶望“と言った刺激が欲しかったから。 世界を滅ぼすのも、ただこの世界に飽きてしまったから。

だがこんな簡単に説明がついてしまうほど桐生は生易しい人間じゃなかった。

桐生は拳を強く握り目の前の敵を睨みつける。


「今の世界にどんな想いを抱いてるかなんてのはお前の勝手だ。 けどな、 そんな勝手な理屈の為に俺の仲間を傷つけた。大切な友人を殺した。 もう分かるよな? 言いたいことは至ってシンプルだ。」




ー 俺はテメェを許さない!!ー



桐生の表情にはこれまでに無い怒りがこもっていた。

だが『冥王』にとってそれは逆にもってこいだった。


「いい・・、いいぞ!!その憤怒に溢れた顔!もっと私に見せておくれェ!人間の負の感情こそ、私の栄養分だ。この私をもっと楽しませてみろ!!」



桐生は一度辺りに散らばった仲間達一人一人にアイコンタクトを取ると、彼らは全員同時に頷いた。そしてそれぞれが戦いに備える。


「いくぞ」



ドドドドドドドドドドドドォ!!


桐生を先頭に戦士達が一気に地を駆け抜ける。


バッサァァッ


白石は巨大な翼をはためかせ空中を舞う。


「クカカカ!! さあ来い。最終ラウンドだ!」



To be continued..























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る