第4部 「摩天楼の決戦編」

34話





ー前回のあらすじーーーーーーーーーーーー


世界滅亡を目論む『冥王』白石茜。なんだかんだあって彼女の手下である野人の大軍を見事撃破した桐生(+十五名)。

そして戦いもとうとう佳境を迎える。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「さあ、観念してもらうぞ白石!俺には十五人もの強い味方が付いている。」


「そうか。大切なお仲間が増えたようでおめでたい事だ・・なッ!!」


ゴォォォォォォォォォォォ


白石は全長十mを優に越す巨大な翼をふるい、台風をまき起こす。

桐生達は飛ばされないよう必死に耐えることに精一杯である。


「くっ・・、みんな耐えろ・・!!」


桐生は歯を食いしばり、台風に持ち堪える。

その時、視界にあるものが目に映った。


「あれは、」


それは平然としている体重二百キロ越えの敷島だった。白石の台風が唯一通用しない

ヘビー級の少年である。


(そうだ!あいつの背後に隠れれば・・!)


「みんな!敷島の後ろに縦一列で並べ!!」


桐生は我先にと敷島の背後に避難し、周囲に散らばってる他の仲間達に手招きで指示する。 桐生の思惑通り、十五人全員が敷島の後ろに並んだ。


「ちょっ、オイラは盾って事かも!?」


「お前ってデカイし、何とかなるだろ。」


これにより無事全員吹き飛ばされることはなかった。


だが桐生達が姑息な戦法を使って来ることは白石の想定内だった。


「ふむふむ。これが十六人ならではのコンビネーションか。 」


台風を攻略されたので白石は一旦翼を止める。


「僕たちを試しやがったな!?」


叫んだのはサファイだ。


「やはり桐生の周りの人間は少し特別な素質を持っているな・・。」


白石は頷く。


「何勝手に納得してんだよ! くらえ、邪水刃

!!」


サファイは水鉄砲攻撃を白石に繰り出す。



「だが、」


シュゥ・・・


白石が手を前にかざすとサファイが射出した大量の水が一瞬にして気化してしまう。


「馬鹿なッ!?」


普通じゃあり得ない光景に目をパチクリさせるばかりのサファイ。


「どんなに水圧があろうと、液体の蒸気圧の限界を、無理矢理大気圧を上回るように設定してしまえば意味はない。」


「ならばオラの必殺技を喰らうッキ!!」


次に出てきたのは猿男だ。


「ウキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャーーーッッ!!」


猿男が本日三度目の超音波攻撃を行う。


しかしいくら叫んでも白石は動じない。 耳を塞いでいるわけでもない。


「・・ぬるいな。」


「何故だッキ!?オラの奇声を聞いたものは鼓膜が破壊するはずじゃ・・」


「フン、所詮はサルか。分からないなら解説してやる。音というのは空気に触れて振動することによって発生するのだ。 ならば話は簡単。もし"私の周辺だけ"を限定的に真空状態に出来たら・・」


つまり白石は猿男が奇声を発している間のみ

一時的に自身の周囲だけを真空状態にし、遮音した。


「まさか・・、可能だというのか!?そんな都合のいいことが・・」


「冥王に不可能なんていう概念はない。 何故なら私にはコレがあるから。」


「"コレ"?」


すると白石は自らの力の秘密について語り始めた。


「 『システムディスターバー』。それが私の能力だ。 コレのおかげで私は

" 自身に伴うあらゆる困難や限界を克服する"

事が出来る。 」


「そうか、だからさっきのも・・。」



最初に白石が一ノ瀬の攻撃をかわしたのもこの力によるもの。

『人間の脚力の限界』を"克服"することによって人ならざるスピードを実現することが出来た。


サファイの水鉄砲砲撃は、

『液体そのものに含まれる蒸気圧の限界』を操作する事によって水を蒸発させた。


猿男の超音波や、ルビアの炎剣を受けて助かったのも、システムディスターバーによる何らかの作用によるものだろう。


こんな大層な力をもってしてまでなぜ世界を滅亡させる必要があるのか。絶対どこかに彼女の真意が隠されているはずだ。


「・・なんて事を今考えてるな?その顔からすると。」


白石は桐生の心を読み取ったかのように指摘する。


「・・お前、サイコメトリーの能力まであるのか?」


「ハハ、まさか。だが分かってしまうんだよ。貴様の考えていることくらい。」


「逆に俺はお前の考えていることが全く読み取れんがな。」


「別に読み取れなくてもいいさ。どうせここで死ぬんだからな!!」


スタタタタタタタッッ


白石は目にも止まらぬ速度で桐生達の周囲を走り回る。白石はそこら中に残像を残していく。並みの人間の動体視力じゃ到底追いつけそうにない。いつどこから攻撃が来るのかも見当がつかない。


「参ったな。これじゃあ手のつけようがねえぞ。」



高速移動していた白石はやがて桐生の背後五メートル辺りで立ち止まり、人差し指を桐生に向けた。


「死ね」


ボッ!!


人差し指から青白いビームが放たれた。


(まずいっっ!)


桐生はその場から動くことも出来ずただ目を瞑るばかりだった。


ズバッッ


桐生は恐る恐る目を開ける。


(あれ?死んでない?)


桐生の視界を埋めていたのは何やら人の影だ。


ビームがが貫いたのは・・・桐生じゃなかった。


「お前・・、」


「ガハッ!!やっぱこたえるもー。」


咄嗟に桐生を庇い、盾となった巨漢の男が口から大量の血を吐き出す。 背中に大きな穴が空いている。


「敷島ッ!?」


白石のビームは敷島の巨体をも貫いた。


「き、桐生・・。オイラはもう、駄目だ。だが覚えておけ・・。お前は・・・一人じゃ・・ない・・。」


ズシャッ・・


敷島の図体からは力が抜けていき、地に膝をついた後にそのままうつ伏せに倒れた。

瞼をゆっくり閉じるとそれ以降目を開けることは二度となかった。


「敷島・・・。敷島ぁああああああああああああああああああああ!!!!!」


桐生の悲痛の嘆きが響き渡る。


「グスッ、グスッ、ううう。」


まるで幼児のように啜り泣くサファイ。


「敷島。いつもお前のこと暑苦しいなーーーって思ってたけど、いざ死なれるとこんなにも淋しくなっちまうんだな・・。 」


さりげなく本音を漏らす栗山。



そんな空気の中、白石はある事を思い出していた。


「そうだ・・。これだッッ!私に足りないモノ・・、私が "求めていたモノ" ・・。」


白石は口の端を吊り上げ、笑みを漏らす。


(ようやく気付いた。私の喉の渇きを潤してくれる唯一の娯楽・・!! )




「人間の・・『絶望』だッッッ・・!!」



To be continued..

















































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