どこでもドアを作りたい

御劔 深夜

第1話 どこでもドアを、作りたい

また今日も怒られた。

何回目だよ、これ。

そう思いながら俺は職員室を後にした。

そしてまた、ため息をつく。

すると後方から声がかかった。


「おう!!なにやってんだよ、今日で何回目覚の遅刻だよ」

「うるせぇ、俺だって遅刻したくてしてるわけじゃないんだよ。ただ……」

「ただ?」

「ベッドが俺を愛して離さないんだ」


ブハッ、そいつは吹き出した。こいつ……俺は真面目に話してんだぞ。


「そうかそうか、じゃあ、毎朝起こしてくれる彼女でもつくんないとな」

「バカか、彼女を作るだけでSランクミッションなのに、おまけに毎朝起こしてくれるとか……多分それ、次の日に俺は死ぬぞ」


笑い話はさておいて、俺は考える。

どうすれば遅刻せずに学校に来られるのだろうか。

瞬間移動?あと300年はかかるな。

テレポート?いっしょだろ。

なんかそういう便利な道具があれば……ん?道具……?

俺はふと、そしてハッと気づいた。

そうだ、それだ!!なんで今まで思い付かなかったんだ!!そんな簡単な方法があるじゃないか!!


―――どこでもドアを作ろう!!


それから俺は様々な場所を訪れた。

物理学部とか化学の先生とか。

でもみんな、俺の大発見を鼻で笑って否定した。


「そんなの無理だって。てゆーか、お前が起きれたらそれで解決じゃん」


なんだよ、簡単に無理だなんて言いやがって、諦めんなよ……!!

もういい……決めた。

こうなったらもう、自分でやるしかない。

信じられるのは……自分しかいない!!


 そうして俺はどこでもドアを作るためにあらゆる物を引っ張り出した。

作成のために邪魔な物は全部出して捨てた。その場所もホコリっぽいので少し掃除した。

そしてやっと……やっと、完成した。

これで安心して寝られる。安心して朝を迎えられる。

寝よう。世界よ―――おやすみ。



 翌朝――外を見ていないので朝かどうかは分からないが。

時計を目を落とす。すると時刻は8:25を指している。

家から通学路を使えば確定で遅刻だが、このドアを開けば、俺は。


教室に着く。


昨晩用意した制服に着替える。

いつもなら遅刻が確定しているからゆっくりと顔を洗うが今はそんな気分じゃない。

一刻でも早く、教室に行きたい!!

だから俺は洗顔も、歯磨きも、今日だけは省いた。

そして今、扉を開ける。


そこは……教室だった。

俺は涙が出そうになるのを堪える。やっと、やっと時間通りに学校へ来れた。

クラスのみんなも、目を丸くしてこちらを見ている。

ハハ、そんなに俺が時間通りに学校へ来るのが珍しいか。

そりゃそうか、そうだよな。

教室の前に立っている担任の先生と目が合い、俺はニカッと笑い、こう叫んだ。


「先生!おはようございます!!」


そう元気よく挨拶された先生は戸惑ってそれからこう言った。


「お前……なんで掃除用具入れからでてきたんだ……?」


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どこでもドアを作りたい 御劔 深夜 @miturugi_sinya

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