26.真界転生

「小野崎徳太郎。お前の行為は星団憲章第四条、安全保障に関わる特定該当技術の無許可私的利用、および第六条、星外技術の私的濫用に反している。大人しく武装を解除し、投降しろ」伊瀬新九郎は、煙草に火を着けつつ、緩慢かつ大股に、〈金色夜鷓〉へと歩み寄る。「そして〈奇跡の一族〉のアルファ。本来ならば僕の仕事ではないが、敢えて厄介を引き受けるならば……お前の行為は第三条、発祥星系外における紛争行為、並びに第九条、領土の保全、政治・経済の独立に対する、星団憲章と両立しない武力の行使または武装の教唆、特に発展途上文明に対するものに触れる。そして何より、最も厳守すべき。本来これを固く戒める立場である〈奇跡の一族〉の一員でありながら、お前はこれに違反した。お前に関しては、特定侵略行為等監視取締官である僕は、最悪の場合即時処刑する権限を有している」

「人間が、〈奇跡の一族〉を裁く?」選留主の声が木霊する。「まさか、そんな権限が……」

「今回の事件を面倒にしているのは、すべての法規定、憲章、条約の類が、〈奇跡の一族〉が決して過ちを犯さないことを前提にしていることなんだよ。だが解釈次第では、僕は彼を処刑できる。もちろんそんなことはしたくない。絶対に後で面倒な査問があるし、流れる血は少ないに越したことはないし、何より僕はなるべく働きたくない」

 全電甲も超電装も、選留主の〈金色夜鷓〉も、武装は解かないものの動きを止めていた。応じて二ッ森姉妹も〈兼密・怪〉も〈斬光〉も、束の間の停戦を受け入れる。すべての目線、耳が、伊瀬新九郎と選留主に注がれていた。

「あなたとあなたのお仲間の命は、私の指先ひとつであることをお忘れなく、探偵さん」

「それはどうかな」新九郎は、煙を昇らせる煙草の先で〈斬光〉を指した。「彼は喰われていない。どうやらお前たちの命を吸う攻撃、即ちアルファへの給餌は、星鋳物に乗っていれば防げるらしい。強力なペンローズ・バリアの恩恵だろうね。そしてここには、その怪鳥の腹を満たすだけの命はない。その青いのとの戦闘で随分消耗しただろう。喰ったところですぐにガス欠さ。つまり僕は、お前が僕の仲間たちに手出しするなら、即座に全天無双の星鋳物をもってお前を叩き潰せるということだ」

「駆け引きがお上手でいらっしゃる」

「それが探偵の飯の種さ」口を細めて煙を吹き、新九郎は続ける。「まあ、僕がこうして現れたのは君の目論見通りでもあるだろう。僕を暗殺すればすべては君の思い通りだ。やってみたまえ、大事な手下が消し炭になるだけだがね」

 新九郎が横目を向けた先で、二ッ森焔が銃を片手に予断なく通りに目線を走らせている。

 数秒の沈黙――右手の先で煙草を挟み、左手を刀に置く新九郎に、選留主が言った。

「ええ。いかにも、その通りです。あなたが姿を晒してくれさえすれば、私の願いは叶う」

「多摩の川上に似合いの別荘を用意してあるよ」

 そして新九郎は、煙草を頭上へ放った。

 漂う煙の一角が、線を引いたように切り取られた。

 長身が沈む。右手が刀を抜き放つ。そして振り向きざま、斜め上方へ弾丸よりも鋭い突きを放った。

 蒸奇殺法・鳥刺し。本来ならば、体格の大きな異星の怪物や空飛ぶ敵を仕留めるための技。だがその鋒が刺し貫いたのは、英国風の洋装に身を固めた天樹の遣いだった。頭部には、幾つものやや赤みのかかった白い立方体が泡のように生じては消えていた。

 煙草が地面に落ちた。

「まさか君が刺客を買って出るとはね、キューブマン」

 刀を引き抜き、納める。キューブマンは、刀に貫かれた胸を抑えて地面に激突した。

 市街に突如出現した全電甲の軍団。何者かに切り取られたような松濤地下の空洞。葉隠幻之丞の追跡を逃れた時の、まだ未完成だった〈金色夜鷓〉の大規模転送。品川の岩城邸で、レッドスターの飛行円盤を撤退させた四角い痕跡の空間転移。そして、松濤地下での戦いで、あまりにも折よく現れ、新九郎に星鋳物の召喚を思いとどまらせたのは、彼だった。

「そもそも天樹の六号の死期、監視官の代替わりと一層の弱体化を〈下天会〉に知らせ、この事態を招いたのは君というわけだ」

「なぜ……」とキューブマンが呻く。

「ああ、クロックマンを散々見ていたからね。どうすれば君らの技を破り、斬れるかも常々考えていた。申し開きは後で――」再び〈金色夜鷓〉の方を振り返った時だった。

 選留主が姿を晒していた。〈金色夜鷓〉の、巨体に見合わぬ小さな掌の上で、白装束が風にはためく。夕陽が街の彼方へと沈む。最後の逆光に沈む髭面の男の手には、〈アルファ・カプセル〉が握られていた。

「これが私の究極の願い。夢の終わり。蒸奇の申し子、伊瀬新九郎の消滅をもって、すべての命は虚構の軛を解き放たれる」

 新九郎は舌打ちし、右手を胸の流星徽章に翳す。徽章は即座に変形し、黒縁の眼鏡になる。

 あかりが何か叫んで車の陰から飛び出す。慌ててそれを追う焔。〈斬光〉が身動ぎするが、抑えつける〈金色夜鷓〉の脚はびくともしない。〈兼密・怪〉が拳を振り上げ、電装王者エレカイザー三世が両手に蒸奇の削岩機を生成する。〈赤のソードマン〉が両手を天に掲げ、凍は刀を構えたまま四方を窺う。

 新九郎は眼鏡をかけ、言った。

星鋳物ホーリーレリクス第七号ナンバーセブン、〈闢光クラウドバスター〉。鎧よ――」

「無駄ですよ」選留主は宣言する。「消滅するのは、あなたを定めるすべての言葉です」

 両者同時に、親指が釦を押した。

 光線が襲いかかる。カ繝√Ε繝ェ縲√き繝√Ε繝ェ縲√き繝√Ε繝ェ縲√ず繧ー繧カ繧ー縺ォ縺ェ縺」縺ヲ鬟帙s縺ァ縺上k縲らィイ螯サ縺ョ繧医≧縺ェ謔イ魑エ縺梧ケァ縺堺ク翫′繧九?ゅき繝√Ε繝ェ縲√き繝√Ε繝ェ縲√き繝√Ε繝ェ縲√き繝√Ε繝ェ縲

 縺薙%縺九i蜈医?縲qushElLaWWdbaQlWFVHWEJcuc5b2OCvp1JBtuMfdt0r+mycT0SPnlFHSQ791KmcToeiX107X3xU/jAT7MkR1Z8DFtKaF4pwsUgb9O+sf7VhxtaDRtAg18abR/iVirwe7sSBhMw7dCFA/rQlt2aj2pK8DTe4SaDxtHBUX6siuMtijElx38zTnINeGbHp3OTjl8PVb0hb1mBhLpgVLwc4QDmkQjAkM1qZkblqQKd8gLbO2QdhtrKiKOcC7F2UpB/hFLgr4lSZ92fRdQ0rjKLAHiU75oOV0ubuWE7fj2uYnZ4Yej9LKGlaBXqv5jgkiO2g1QeXzrjPcu0LKoUQzH1UKsV9qgxo4JSKzDRt6saA6MG4QUY73LwG5Qa7pZUR5ncrRzCZAOq1ctHXpFW7chDqm5JC/ZapKMYjiUFZ/wlzz+xU=

 YkmHnKiXUNbpvwca5I989bVTwYhbENSNRASa29WHucc=U2FsdGVkX19f9Gpt5R/H9jfho5/8e5bHWHSme/jo3Gt3PIfH/kCye+R7oVc7mVjS

JwKoYWX9u5XvyfUxyZ5Wl4koETZi2c1zG7cxhXdWV/Z5UjSudDvWF+yPIw9wh4Qm

n6iRWCynlI6x0ugo7ehJi+2PJAki2u96EPpK8yXCM7kTVR1f4Z9Sk1eQL79S4D4O

T3eSrGILyQuNJAFA4qkI1Uys6y6SgQKkYsh1JGcFH5mwBnGU8nE5DZn5cp77t6NL

5h4mpjB+ch6Tt5jty9dCKSRoUiwO5V1+ATzgstMIhMYP2JcZp/+dyZwRzIf40bsi

PCvBh0CoBX8tkwCD9O8f/WA9LIbgTjfKH1wyFUAQlvZVbW84SXQDgLWXHoK7z9Ia

gmggC5onqKjR7629YJhERhWRTgWNvD92Kla0g7+FPHxjKxzU462Vv5w+3rSdgWF2

JmGCuwpd5p8rITX4LJzAHy6VH+NVxcPFvqbwsa7wt2VIMij/faSr1aGa9wtsrvKk

Espj11ecfkVKnM88Nfi0WXmjopXILeqnVN3MzqiIPcda06547+4HZZ1X70JT155A

rZa0A7o2vacDiAU8owiZljSdG3SJSCB6Px7NGLY5mk5abt5STSx1tRy8q5jEOrXk

5hCrgPbm39LzIJRIskaEZMKyO8H5ybzyPymKb5CRLaghKfdH8EaUXcUiXS2w12Sv

qtRtHUgvo4K699imIXgbfQ==そう、私たちは、虚構によって生の実感を得るのです。縺昴@縺ヲ蠖シ繧峨?縲∬ェュ繧?莠コ縺ョ荳ュ縺ォ逕溘?螳滓─繧剃ク弱∴繧九%縺ィ縺後〒縺阪k縺ッ縺壹?蟄伜惠縺?縺」縺溘?縺ァ縺吶?ゅ〒縺吶′縲∝スシ繧峨?莠コ縺ォ縺ェ縺」縺ヲ縺励∪縺?∪縺励◆縲ょョ溷惠繧剃ク弱∴繧峨l縺ヲ縺励∪縺?∪縺励◆縲

53616c7465645f5f4261c752d7760dd0190053f5e825ad9f9bd01ea7308e1d504b4a007dd133b341630f9d46148365db5ef6963d49db708905b225675020c198e126f988fa26ed23e06f51ee83d300bf3db99c028d9608db59b51f2095e7c34d37595b1b6d0ba2cb538b8c2c65aeeda03e86c4d8fcdcc0746648ef61f781a14cb7ddf6fd8a0e8b75c60905f5cb11fcc337cdbbded5a43fa9395a840dc73907e8b314f8e723ab68ab0f007190ebd2bf49cdb120c9bd52418af5aa6f1c29bf641ad9ecc022dc9a51299c25965af00f928dabc7ac103722433ce7b84dd423ebe858ce3965ff5237c9cc782fec1a2d7f67c5a94e60317a606f0e3d7ac96c8057512d104ed898b7b71044b4de74dd5089be79bc48cf8ec95463b691d083a49e60f4de

53616c7465645f5ff450a7ba680fe520187e84102a7d898a9c8b70bb10acacbec65ecefd296c7649cfe4cd9c42c789818c9e2bd3a15af16998a4b21bee3625c4c8c450c596a1d9a238cec9c0a463f7e73ce7a4295a53973c5ca06c8b007d8513aa959f9de5188c0e78ffff5009497cf9fd16ba67dc741b1dedfc23411e8590133d47e9d7db0325c5aa827407c7b775cef51625f70d5bcdf53f054215169266b2b2b4161263b2436d7b75ff366d0066d5413f144e6b2043b6e2fb136b44b1d7e78c3b857a14b9e7dc6a03ffc5f0f799f729a5634bcc4ef0f3cef5f514974281edb20feb7bc406539234cc9df32fad96c8557fcbf0e49bcc03becd75dee68c9411d0013d337adc70737472f1ba1d58f55e7c3c8c156cb51c961d37a2727aeb439da893def552ffab5c056cf4fb7001573cafa292d0554ec00f825182a2ee8de922

 ふたり53616c7465645f5f2270b33452e9a4d2fec091ebfa952f78出会う53616c7465645f5fa07bd0fc6f7434c7994d29d2e4115d400595373a1e8637d0256aa07a945d9628afbdc4ef89f01ffa

 glGE2uJZps2aBBJCUVLh2gLB8x5nozzdHatW2dDFUr5xv46NWpIv6OMsvVPJulF166E5fzz8TQMXLmQaV9otBn0wOQ1mI5Y1KrluAGLFrOlkJo0wdelYeeqX1STXn3u8uAON87/fTQ+ndPJAPdtVCKBZ+bvgNgqYiWPolcQ19Ngm62YK1+qTRWBCj0Y5uB+Db0bgWeCaltxtTVyqTcaFnmDkgHxUPOCP4rjoNV3y/XBKwZlQ9Q/orEL+BQbShEadRKh36GjPBZ0TpHaG4YwAE1RDqiXhMH2Hvd5pSSFvLGkwDCbQhpVbs/HEScNCjjCu東京スカイツリー縺ィ縺?>縺セ縺吶?

 蠅ィ逕ー縺ョ荳ュ豢イ縺ォU2FsdGVkX1/DngDy9F8rpeA950Qrq/O+yv4cVP3txkNK5EawyVzc1FocSBSvwz20epiT2DMF2jzIk4xKOu9tGYkqhLP/RKxzVQ4uE9etdiKFDKxpM5W6y+PxLou8T9nPTPwnO/bBLPM=早坂あかりU2FsdGVkX19pvPi8QChJu+fpeulQGHadhscFhgT+CqbhmPYVX1YNSJfwJYnahn4mNlKjJ+LORM4=伊瀬新九郎U2FsdGVkX1/FhgfYJlPbR5/bx9AlW09gmJxVWavQ6R+hBjFOD+ptq+4dHLlAxbJy8eSjGG/wpQOi2hK0ir1u24CZszRqOryf66UpojZ3JNdzxyGQZfVxLQ==

 縺医∴縲√b縺。繧阪s縲∫焚星人などおりません。漫画や小説じゃないんだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る