第4章 決戦ゲーム
第1話 第一ミニゲーム
ミニゲームの企画を行う時間、十分間がスタートした。着々と一秒ずつ進んでいくタイマーを確認したあと、森のほうに体を向けた。
「……さて……、どういう内容でいくかな……。アリス、お前は何か案はあるのか?」
アリスは仮面ごと小さく横に首を振る。
「いや、たいしたものはない。わたしは立場的にもゲームを提案する側にあることは今まで想定していなかった」
……それもそうか。もし、解放者が提案することになっても、どうせ動くのは圭だっただろう。まして、真の王との対決ではなおさら想定外だったか。
「ちなみに、お前の持ち物を確認してもいいか?」
圭の指示を受けた森は、また首を縦に振りながら、スカートや胸のポケットをポンポンと叩く。
「それこそ、たいしたものはないかな……。せいぜい、メモ用紙とペン程度」
ひらりと見せてきたのは、本当に文字通りだった。数枚の紙に黒一色のボールペン。
大したことないといえばそうだが、実は圭の持ち物はそれ以下。今思えば、この想定が頭の片隅にもなかったほど、余裕がなかったのだなとしみじみ実感する。
せいぜい、ポケットに入っている小銭入れと数百円程度、ハンカチ。あとはケータイとスマホ。
と、そんな会話をしていると、急に横から手が伸びてきた。そのままコトリとし直に音を立てて置かれたのはトランプが入ったケース。
圭の隣では、田村がこれでもかと笑みを浮かべていた。
「わたしはそれなりの用意がありますよ? ほかにもよかったらどうぞ。ぜひ使ってください」
そう言ってポケットからガシャガシャと道具を出してくる。
ゲーセンのコイン、ポンポン玉、サイコロ、ポケットティッシュ、ハンカチ、などなど……。
「ガラクタ感……」
森の思わずと言ったセリフが漏れて聞こえてくる。
ちなみに藤島もポケットなどをあさるしぐさを見せた。だが、結局何も出さなかったのを見る限り、たいしたものはなかったということだろう。
「ガラクタでもないよりはマシでしょう。もし、ゲームが思いつかないというのであればお手伝いしますよ」
田村の出してきたガラクタを見ながら言う。
「……お前は魔除け、そう言われていなかったか?」
「いいじゃないですか。それに、真の王だって、ゲームの提案時間の相談は良いって言ってくれていましたのでね。
なんなりと」
右手を前に出し丁寧に腰を折るしぐさをする田村をよそに、真の王が出した道具を今一度見た。
奴が出したものは、確かにバリエーション豊富だ。だが、圭が提案する側で奴の用意した道具を使用するゲームはまずありえない。
奴は堂々と細工していない証拠はないと言ったのだから。
ミニゲームの公平性はあくまで提案者による判断基準で決まる。選んだ道具には仕掛けがあり、受ける側がその仕掛けで勝ちを確信しても、それを事前に報告する義務はない。
圭が気づかずに、相手にとって有利な条件のゲームを提案したとしても、それは問題なくまかり通ってしまうということ。
こうしている間にもタイムリミットは確実に迫ってくる。真の王はタイマーの横で座り込み、頬杖をしてただ待っている。
「……よし、ひとまずゲームは決まりだ……。もともと俺の中で作られていたゲームで行く」
序盤からひたすら悩んでも情報が足りないんだ。まして、基本公平でなければならないのに、無駄に粘る必要はない。
圭はさっそくスマホで集団契約の更新を求める通知を送り付けた。
「おっ? 決まったか?」
スマホの通知を見た真の王が頬杖の態勢を崩し、座りなおした。
「あぁ、まずは簡単に説明する」
真の王、そして森にも顔を向けた。
「単純に言えばマルバツクイズだ。片方がマルバツ問題を出して、もう片方が回答する。ミニゲームということでもあるし、二点先取で行こうと思う」
この説明を話すと森と真の王は軽く頷くしぐさを見せた。そして、拘束された状態の次郎の顔にうっすらと反応が見えたのを確認した。
それはそうだろう、これは前に次郎と圭で行ったエンゲームと同じものだ。
単純に真っ先に思い出したから、というのが大きいが。
説明に合わせて、平行で条文も作成する。
第六条 プレイヤーは甲と解放者である乙と丙。問題はチームごと交互に提示しまう。また、問題を提示するとき、頭の中でマルバツの正解を認識できなければならない。以降、答えを変えることはできない。
第七条 合否の判断をするとき、嘘を言ってはならない。
「基本的な契約は以下の通り。プレイヤー外の人物に貸しては言及しないため、口出し不可能。
あと、こちらはプレイヤーが二人になるが、それはどうする? 基本的にプレイヤーの人数が勝敗に大きくかかわるゲームではない。ただ、頭脳が二つあるという点は影響ありかもしれないが。
そちらが望むなら、回答は俺一人になっても構わない」
真の王はキツネの仮面ごしに手を顎に当てる。
「……アリスとわたしの一対一という選択肢はないのか?」
「それは逆に俺が不利になるから却下だ。お前は絶対に自分で提案して自分でゲームをするのだから、こちらもその権利は主張する」
真の王は圭の反対に対して、首を縦に振った。
「ま、当然の返しだな。いいだろう、プレイヤーはお前たち二人でいい。ルール自体も特に問題ない」
……
「意外だな……。プレイヤー二人相手でいいのか? 言っておくが、これをハンデとは認識しないぞ。代わりに公平性を保たせるため、別のところでお前側に有利を図らせようという考えなら、通じない」
「あぁ、かまわない。お前たち二人が合わさっても、わたし一人に劣るということがゲームを通じて証明されるだけのことだ」
随分と余裕をかましてくるな……、絶対の余裕でもあるのか? だが、二点先取もOKが出ているんだ。一方的にさっさと終わらせて次のゲームに行くとしよう。
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