第16話 決戦の契約
「では、契約を進めていくとしよう。全員スマホを出せ。エンゲームを行うための契約を執り行う」
圭のスマホに通知が入ってくる。それは言わずもがな、亜壽香のアカウント、AAフラワーから来た契約の招待。
画面をタップすると出てくるのは契約条文を決める画面。次々とアカウントがその契約に参加していく。
が、ふと隣で田村が「あっ」と言いながらスマホの画面を前にかざした。そこにはあるメッセージが浮かび上がっている。
『コントラクトのルールにより、この集団契約に参加することができません』
そのメッセージの下に『第二章 基本ルール』のリンクが張れている。
圭の頭の中にルールが過る。
・集団契約は重複して契約することができる。ただし、似たようなメンバーでの集団契約の重複を避けるため、5人以上で契約する集団契約であり、かつ、以下の条件の場合、新たに集団契約を結ぶことができない。
1 自分がすでに契約している集団契約のメンバーの三割以上(四捨五入)が入る新たな集団契約の場合。
2 これから入る集団契約のメンバーの内、三割以上(四捨五入)が既に自分と集団契約を結んでいるアカウントの場合
この場には、解放者契約を結ぶ圭、森、次郎。共闘契約を結ぶ、圭と森と田村。キングダム契約を結ぶ次郎と真の王。
つまり、どうあがいても五人以上の集団契約は不可能。
田村は画面をつつきながら、真の王に向かって不敵な笑みを浮かべる。
「もしかして、真の王。このルールをお忘れでしたか?
もしかして、実は真の王、あなたも少なからず焦りや動揺があるのですか? それとも、決戦に向けた緊張でしょうか? はたまた、友人を相手にすることにためらいがある?」
キツネの仮面は微動だしない。そのまま自分のスマホの画面をさらっと触った。すると圭たちの画面にあった契約条文を決める画面が解かれた。
「……直接エンゲームの契約を結ぶのはわたしとアリス、小林圭の三人だ」
再び、圭のスマホに契約招待に通知が来た。アリスにも確認を取ったところ、確かに届いているようだ。一方、田村のスマホに音沙汰なし。
「おや? では、わたしたちは契約しなくてよいのでしょうか?」
田村はあからさまな表情でおどけて見せる。
「黙っておとなしく話を聞け」
そんな田村をドスの聞いた低い声で制しようとする真の王。田村はまだ挑発し返そうか悩む様子を見せたが、結局やめた。これ以上は必要ないと判断したのか……。
「この集団契約とは別に、田村と藤島とわたしで集団契約を結ぶ。解放者と……すなわちアリスと小林圭とゲームをし、わたしが勝利した場合、支配下にはいることを約束してもらう。
合わせて、ゲーム中におけるプレイヤー外の人物に対する制限もここで儲けることが可能だ。そちらも西田次郎に対して契約で拘束をかけるといい。
第三者となるアリスと小林圭を拘束することはないため、この契約は問題ない。合わせて、エンゲーム契約のほうではわたしたちの支配権を賭けとする」
田村は説明を受け、しばらく黙り込んだ。スマホの画面を何度か見た後、顔を挙げる。
「わたしはそれで構いません。藤島さんは構いませんか?」
藤島は田村からの言葉に対し、頷こうとしたが途端にそれを止めた。そして、田村の指示は受けないとでも言いたげに森のほうを向く。
「アリス。わたしもこれで構いません」
そしてこういった。
「まぁ、少し前はお互いいろいろ言いあった仲ですしね」
田村は藤島を見て不敵な笑みをこぼしていた。
さて、これ以上くだらない話はいい。
「俺も構わん。さっさと契約条文を提示しろ」
ミニゲームとは言えば、数こなせば時間をかかるだろう。巻いていくに越したことはない。
真の王は慣れた手つきでスマホをタップしだした。内容は頭の中であらかじめ作っていたのだろう。素早く条文が打ち付けられていった。
『キングダムVS解放者契約』
第一条 AAフラワー(以下、甲という。)は、仮面ファイター5103(以下、乙という。)と543レイン(以下、丙という。)とゲームを行う。
2.乙と丙はチーム(以下、解放者という。)としてゲームに挑む。
第二条 甲と解放者はお互いにミニゲームを提案しあい、ゲームを進めていく。ミニゲームを先に三勝した側が勝者となる。
第三条 このゲームにて提案できるミニゲームは以下の条件に沿ったものでなければならない。
1・相手側が一方的に不利になるようなゲーム、自分側が一方的に有利になるゲームは提案してはならない。
2・通常プレイで時間が三十分以内に終わると提案者が判断できるゲームに限る。
3・ゲームの会場はこの教室の中に限る。
第四条 このゲームにて敗北した側は、相手チームが指定する集団契約に入ること。この時、新たな集団契約を作成するのも可能。
第五条 このゲーム終了まで、全契約者は教室を出ることができない。
「以上が契約内容となる。三人による集団契約であるため、九条まで条文が追加可能。すなわち、ミニゲームは残り、四条の契約執行でプレイできるものに、必然的に限られる」
……第五条……、教室を出れないと……。道具の外部持ち込みはこれ以降禁止で、逃げることも不可能。合わせて、ゲームの長引きを抑止できるわけか……。こちらにしても都合はいいことだし、いいだろう。
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