第13話 長井の逆襲
コインは現状、森のものが見つかって終了した。よって、二ターン目に突入することになる……が……。
今後は長井……、あいつ……何をやらかしてきた?
いや……今気にするのはひとまずやめておこう。少なくとも長井か王のコイン、どちらかひとつだけでも当てに行かないと……、幸いどちらも四分の一にまで絞り込めているんだ。
さらに、質問二回で突き止めたら三分の一の確率に持っていける。
ここで取り乱すことに意味はない。とにかく、まずは二ターン目の質問に対して……、と言っても質問内容も対して考えることもできないか……。
事実、他のチームも相談することはさほどないのか、すぐに二回目の質問タイムへと入っていった。
「では、アリス以外の残り二人にのみの質問となる。順番は先ほどと同様、アリス、影、長井の順だ」
森はコクリと頷き、影武者のほうに視線を向ける。
「まずはお前にから、隠した場所は……AからE軸の範囲内にある」
影武者は一度目を閉じ答える。
「Noだね」
アリスは頷くと淡々とした調子で長井に視線を移す。
「では、次。長井、同じ質問だ。AからE軸にある?」
「答えも同じく、Noだ」
これでどちらもコインの隠し場所はFからIの間かつ、12から22の間。ここで、さらに17以下か以上かを、次の質問で絞り込むことができる。
そして、王の質問により、12から17の間にあることまで絞り込めた。これにより二十四マスのどれかが答え。九マス単位で考えれば、計算通り役三分の一になる。
「あぁ、僕はもう質問はいいや。ていうか、もう答え書いたから提出しておくね」
そんな絞込み合戦を行っているなら、ひとり我を行く者、長井。箱に入れた折りたたまれた付箋を指差し笑みを浮かべる。
「流石に、これを覗こうなんてしないよね。さぁ、二人も速く指定しなよ」
……一番点が低いのは長井のはずだ……。だが、長井の流れが出てきているとでも言うのか……いいや、長井が強引に流れを掴みにこようとしているのか……。この状況じゃ、ハッタリだと疑うことも難しくなる……。
「別に惑わされる必要はないでしょう。まずは長井の三分の一を当てに行くしかありません。影に対しても六分の一……いや、五分の一ですか……」
「ここまで来たら運しかないよね」
「まぁ……そうなるんだよな」
全員の回答が終わる頃、待っていましたというように長井は森と影が投票した付箋を手にとった。折りたたまれたそれを広げ、……そして笑う。
「あぁ、残念……お見事。影さんは正解、G13。アリスさん、君はハズレだよ。Hの16ではなかったね」
紙をヒラヒラ舞い散らす長井が影武者へと指差す。
「君にはまた一点を取られたけど、これで君とは一点差にできそうだ。アリスさんとは同点だね……いや、君も当てるのかな?
さぁ、結果報告をよろしく」
影武者はクツクツと笑い「言われなくても」と広げる。その紙をみてしばらく停止する影武者だったが、深くため息をついた。
「アリス、君は言うまでもない。ハズレだ。で、長井……君だがね……」
影武者は机の上に紙を滑らせた。書かれていた記号はH21。
「……正解だよ。……まったくどうやって突き止めた? 教えていただけないものかね? 是非ともお願いしたい」
……本当に当てに来やがったのか。それに関してはこっちも是非とも知りたんだが……。二人とものコインを当てたんだ……、何かしらの策があるはず……、
だが……。
「悪いけど、教えることはできないね」
屈託のない笑顔で長井はそういった。
「影武者さん、どうしたのかな? 勝てる確率が高かったゲームのはずなのに、次々当てられ始めてちょっと焦ってきたのかな?」
「……勘違いはしないでくれたまえよ。こっちは完全リーチなのだよ? 一点でもとれば勝てる状況だ。どっちが追い込んでいる立場かは……もう少し冷静になって考えたほうがいい。
同然だ。煽り文句はそれから存分に考えるべきだ
そもそも、範囲を絞り込んで回答しただけ。セオリーで当てたということに過ぎないのだよ」
確かに……そこは気になるところではある。長井の今回の当て方……、森に対しては質問せずに一ターンで指定したのに、影武者に対しては普通に質問をして、しかも外している。
一ターン目の段階でどちらも分かっているのに敢えて片方外した……なんてのはメリットがない。であるならば、森に対しては質問なくても分かった。
だが、王に関しては最低二つの質問、下手すれば三つの質問がなければ絞り込み切ることが出来なかった?
しかし、これだけでは情報が少なすぎる……、マズイ……。
今の点は森3点、長井3点、影4点だ。
長井に策を再度使われたらまた二点を……影はどちらか一方でも当てれば五点にたどり着く……。
ここはマジで勝負どころだ……、せめて延長戦にだけにでも持ち込まないと……。
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