第5章 硬貨探索者
第1話 一回戦目作戦会議
「では、初めよう。エンゲーム、『
森、長井、影武者の三人が契約に同意。ゲームが始まる。
早速一回戦目の作戦会議。用意された影武者のスマホが十分間を刻むタイマーとして教室の中央に置かれる。
圭たちはほかのチームと同じよう端に寄る。
「で、二人の言い方だとまだわたしはゲームのことを理解していないというように聞こえていたんだけど?」
森は腕を組み、圭と田村に視線を向けてくる。まぁ、それに関してはその通りだからそれでいい。
「いいか。このゲームのキーとなるのは俺たちプレイヤー外の人間だ。プレイヤーではない。ロミオがいくらか交渉してそれなりの制限は出来たが、それでも俺たちはなんだって出来る。無論相手もそれは同じ。
俺たちがどうやって相手のコインを見つけ出すが重要になる。このゲームの王道ポジとしては、森はとにかく徹底的に周りを気にしてバレないように隠す。監視カメラの存在も考慮して全力で集中すること。
そして、俺とロミオで」
「田村でいいですよ」
「……俺と田村で相手プレイヤーのコインを隠す動作を見続ける。幸い相手は二人、一人ずつ見張ればそれでいい。これは真の王との大きなハンデと言える。そして、同時にプレイヤー外の妨害に目を向け、それを阻止する」
「わたしは第一フェイズ中、隠すことに専念すればいいわけだ。第二フェイズでは君たちがわたしに隠した場所の推測を教えてくれると?」
「あぁ、それが基本的で、誰もが思いつく戦術だよな。あと、ここから俺が想定した隠すときのゲーム内の定石について」
圭はポケットからポケットティッシュを取り出した。それを一枚、森に渡す。
「まず、コインはこれで包んでから隠せ。包んでいるところは相手にしっかり見せてな。あのコインは大きさにして五百円玉に満たない程度の大きさ。あれじゃ置いたときに簡単に音が出てしまう。それをティッシュで包んで抑える」
「まぁ、全チーム。それはやってくるでしょうね。ハンカチかタオルの可能性はありますが、隠す時の音は絶対押さえたい。もちろん、音を利用してけしかける策もありますが」
「……それはわたしも思っていた。教室の中は絨毯も何もない。それどころか机など硬いものばかり。音は簡単になってしまうよね」
森はティッシュを受け取りながら頷く。
「後は、隠すときの定石だが、基本的に隠すタイミングは十分の中の後半だな。ゲーム中、プレイヤーはもちろん、プレイヤー外の人たちも教室をうろつく。もし、隠し終えたあと見つかってしまえば、終わりだ。
ならば、できる限り終了に近いタイミングで隠すのが定石。あと、できるのならば第二フェイズ中に隠したコインはバレないように回収しておきたいな。回収してしまえば、コインの探しようはなくなる。
このゲーム、一番手っ取り早いのは隠されたコインを見つけてそのマスを指定することなんだ。それを阻止するのは大切だ」
と、ここまで圭が思いついた定石を述べると、隣で田村が指を立てた。
「だけど、あくまで定石です。回収することは、コインの場所を特定されやすい状況にもなる。リスクはあります。
そして、時間終了間近に隠すという定石は、お互いに認識している可能性が高いでしょう。であるならば、十分の後半五分、プレイヤーが歩いた範囲にコインがあると絞っていくことでしょう。
無論、それを見込んで早い段階で隠し、以降そこに近づかないという策も思いつくわけではありますが」
まぁ、そういうことだ。どんなゲームにも定石というのは存在する。だが、定石は相手にとっても想定された状況。お互いに分かっている手を打ち合ったとしても相手を超える事はない。本当に勝ちに行くなら定石の一歩先に行かないといけない。
だが、このゲームはまだ一戦目……。
「ひとまず、この一回戦は様子見を兼ねてその定石になぞったプレイをしてもらおうか」
「……それでいいの?」
「あぁ。まだ俺たちはこのゲームを完全に把握しきれたわけではない。もちろん、定石を打つだけでは真の王を超えることはできないだろう。
だが、一回戦はゲームの中で一番余裕が有るタイミングだ。逆に二戦目以降だと負けられなくなって試せない状況になったりもする。その代わり、この一回戦でゲームのことをしっかり掴みに行くとしよう。
変に策を練りに行って逆に手玉を取られたら相手の流れにもなってしまう。地盤を固めてリスクを抑えていこう」
最後に森から視線を田村のほうへ移す。
「と、ここまでが俺の意見だ。田村、お前は俺以上にこのゲームのことを理解しているんじゃないのか? そんなお前に聞く、なにか提案はあるか?」
「まぁ、そうですよね。とくに一回戦目から真の王に勝てるとはとても思えませんから堅実に行くのがベストかと。とにかく、このゲームがどう動いていくのか見極めることを優先しましょうか」
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