第14話 硬貨探索者《コインサーチャー》

硬貨探索者コインサーチャー

 真の王が述べたゲームの名前。


 真の王がコインを一枚ずつ、ゲームプレイヤーとなる森と長井、そして影武者に渡す。森が虎コイン、長井がバッタコイン、影武者がイーグルコイン。


「このゲームは大きく分けで二段階に分けられる。コインを隠す第一フェイズと、それを見つける第二フェイズ。基本はこれだけ。


 第一フェイズの段階でコインをこの教室のどこかに隠す。そして、第二フェイズの段階で、隠されたコインの場所を当てるということだ」


 つまりは、第一フェイズでは森がこの教室内、敵……すなわち偽物側と王側にバレないようコインを隠す。そして、第二フェイズにて、王側と偽物側のコインを探し出すというわけか。


 内容自体はシンプルなほうだな。


「具体的なルールを説明する。まずは第一フェイズについて。


 第一フェイズの制限時間は十分間だ。プレイヤーはこの時間の間で教室内のどこかにコインを隠す。十分経過した瞬間にコインが存在する場所が、探すターゲットとなる。


 基本的にコインをどこにやろうが、この教室内なら構わない。ただし、プレイヤー以外の人物にコインを渡らせるような行為は禁止とする。


 そして、プレイヤーは十分後、第一フェイズ終了時にコインが存在する場所を把握しておかなければならない。適当にコインを投げたりして、自分でもどこにあるかわからない状態になれば失格。


 これはコントラクトで強制させてもらう。行方が分からなくなれば、それはしっかり告白してもらうぞ。

 これが第一フェイズだ」


 大体のことは分かる。質問は出てくるが……ひとまず続きを聞こう。


「続いて、第二フェイズ。探索の時間だ。ここでは質問タイムと、指定タイムが存在する。まずは質問タイムから。


 各プレイヤーは、相手二人のプレイヤーに一つずつ、質問することができる。ただし、質問内容は「はい」か「いいえ」で答えられるものに限る。当然、質問を受ける側は嘘などつけない。


 全員の質問と回答が終われば指定タイムだ。各プレイヤー、相手二人のコインがある場所を指定する。終わればまた質問タイムから繰り返す。

 三つのコインのうち、二つ見つかった時点で終了とする」


 質問性か……。例えば教室を縦半分に割った場合、廊下側にコインがあるのか、などといった質問で、範囲を絞っていくわけか。


「そして、このゲームにおいて一番重要な点は場所の指定の仕方だが……」

 そう言いながら真の王は影武者に何かを促した。すると、影武者は教室の後ろにあるロッカーの一つに手をかけ、その中に入っていたカバンを取り出す。


 あらかじめ教室に用意していたのか……。まぁ、そういう可能性は十二分に考えられはしたが……。


 影武者はカードの束を取り出した。すると、影武者は教室の端にそのカードを一枚ずつ丁寧に置き始めた。


「今置いているのは、二種類のカード。ABCのアルファベットが書かれたカードと、一二三の数字が書かれたカード。

 そして、このカードは……」


 真の王は教室の床をこんこんとける。

「タイルに沿って置かれる。指定するのはこのタイルだ」


 タイル!

 圭は……というより、ここにいる王側以外の人物全員が床に視線を落とした。確かに、教室は木の床になっており、正方形のタイルが並んでいる。


「十六×二十二、三五二枚のタイルだ。黒板側の壁が十六枚、廊下側の壁はタイル二十二枚分となっている。


 そして、黒板側は、廊下側から外窓側に向けてA、B、CからPまで。廊下側は、黒板側から後ろに向かって一、二、三から二十二までとなる。


 あとは言うまでもないな。タイルを指定するとき、例えば、B3と宣言すれば、すなわちそこ」


 そう言って、廊下側、黒板のほうの端を真の王が指さした。

「だが、それだけでは難しすぎるだろうからその周り含めた九マスに入れば良しとする。すなわち、B3を宣言すれば、周りのA2A3A4B2B3B4C2C3C4に答えのマスが入っていれば正解だ」


 真の王は差した指を解く。

「そして、これを踏まえれば当然、プレイヤーがコインを隠した場所と覚えておかなければならないのは、このマス目の記号となる」


 その説明が終わる頃、影武者は全てのカードを並べ終えたらしく真の王の横に戻ってくる。

 実際教室を見渡すと、壁際のタイルにきっちり、カードが並べきられていた。


「何か質問は?

 最後に真の王はそういい、近くにあった椅子に座り込んだ。


 さてと……このゲームのことを把握しないといけないな……。一応隣に目を向ける。森は仮面越しに顎に手を当て思考中。田村は不敵な笑みを浮かべつつ、真の王を眺めていた。


 このゲームにおける重要な点はマスを指定するというところだろう。実質コインの隠し場所は二次元に限られる。例え天井に隠そうが、床下に隠そうが、同じタイル上なら答えは同じ。


 また、逆に言えば細かく指定する必要はないということだ。一マスは大体、一辺が五十センチほどの正方形。この中であればどこでも答えはまた同じ。


 まぁ、確かにコインのある場所指定を机の上」と言っても、具体的にはどこ、中央あたりか、端かとか、色々キリがない話になる。それを抑止するためでもあるのだろう。


 だが、全体のタイルは三百五十強。周り九マスまで範囲内となるから、実質は四十通りほどか……。それでも、当てずっぽうで当たるものではない。いかにして範囲を絞っていくか……。いかにして効率よくコインを見つけるか……。


 ……このゲーム……隠して探すといえばシンプルだが……、実は結構深い気がしてきたな……。

 そこは、質問で……確かめていくとしようか。

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