第15話 質問タイム

 質問タイム。

 ルールは一通り頭の中に入ったので、ひとまず手を挙げた。


「コインの隠された場所は第一フェイズの開始十分後、終了した瞬間にある場所といったな? ということは、その後コインが移動したとしても、当然答えは変わらないんだよな?


 そこで、もし開始三分でコインをD14に隠したとする。だが、第一フェイズ終了までにほかのプレイヤー、または部外者が勝手にそのコインを移動させた場合はどうなる?」


 圭の質問に対し、王は座ったまま答える。

「その場合でも隠した場所はD14のままだ。ただし、移動したこと、そして移動した先をプレイヤーが知った場合は違う。その移動した先が答えになる」


 なるほど……あくまでも答えの基準は隠したプレイヤーが頭の中で把握している場所ということか。


「では、窓のサッシに置いたりしたらどうなる? 一番端のタイルよりさらに向こう側にコインがあることになるが?」


「その場合、一番近いタイルが答えとなる。外窓側の端P14タイルに隣接している壁にある窓のサッシにおいたなら、それはP14だ」


 なるほどね……。圭は窓のサッシを見ながら頷いた。次に横から田村がぬっと体を出してくる。


「ちなみに、コインの置いた場所がちょうどタイルの線の間だった場合はどうなるのでしょうか?」


「本人が認識した場所が答えになる。ゆえに、例えばちょうどD4とD5の間に隠したと思えば、D4、D5ともに答えとなる。ちょうど十字になるところへ置けば、C4C5D4D5の四つが答えとなる」


「本人の認識……ですか……理解しました」


 ということは、極論、実際はD4に隠したがD5に隠したと認識してしまえば答えはD5になるわけだ。無論、コントラクトで強制される以上、そんなことは簡単にできることではないが。


 ここで、今度は長井が手を挙げた。

「ちなみにこのゲームは何セットやる予定? 勝敗の決め方は? 今回の条件だと、勝敗に一位、二位、三位と順位をつけないといけないんだけど」


「それに回数に関しては君たちに委ねる。セット数を決めるもよし、先取制でポイント先取と決めてもいい。ポイントに関してはコインを探し当てた数だ」


 ……それがハンデというわけか。


「あれ? このルールだと、二人が同時にポイントを得ることもあるわけですよね? アリスと長井くんがともに彼のコイン場所を指定して、正解だった場合」

 田村が質問を重ねる。


「そうだ。その点もしっかり考えて回数を決めておくんだな。もちろんルール上、同点で延長戦の可能性もあるだろうな」


 しかし……ゲームの回数か……。このゲーム、本質を掴むだけでも一ゲームから二ゲームを有するような気がする。少なくとも、この説明だけで肝が分かるとは思えない。


 なにより、王側はゲーム提案者。短いターン数だとこっちが何もできないまま、影武者が勝利をさらっていく可能性が高い。


 だが、当然長すぎるもの悪手だ。長ければ思考パターンが読まれやすくなる。相手との条件も変わらないが、そうなれば実力による差が出てきてしまう。

 であれば策で走り抜けることが出来るちょうどいい回数を模索しないといけない。


 おそらく長井もゲームの回数を思考しているのだろう。そしてこの考えは概ね同じだろう。


 だが、そんな中森がそっと手を挙げてきた。

「ところで、プレイヤー以外のことについてはまったく話してないよね? こっちの要求だったプレイヤー以外のゲーム関与についてはどうなった?」


 森……この質問は……。


 真の王は大きく首を横に振った。

「それをわざわざ言う必要があるか?」


「……どういうこと?」


「プレイヤー以外は、コントラクトの契約を結ばない。エンゲームはコントラクトによる契約がルールの全て。結ばなければそこにルールはない。結べなければルールなどは存在しないということ。


 契約もできないのに、部外者へあれは禁止、これも禁止などといっても、守る義理はないだろう?

 部外者は好きにすればいい。何をやっても自由だ。咎めはせん」


 当然、そういうことだろう。現に、部外者が変に邪魔をしてもゲームは進行できるようなルールになっている。


「……ってことは……、プレイヤーではない二人が、相手プレイヤーを見張り続けるものアリってわけだ……。となれば……元々二人しかいないそっちはかなり不利なように見えるがいいのか?」


「無論、それがこのゲームにおける一番のハンデだ。十分過ぎるレベルのな。それにプラス、ゲームの回数も委ねたんだ。

 まさか、これ以上ハンデをくれなんていうバカバカしい提案などしてこないよな?


 このハンデでも少ない、勝てないとかいうような雑魚などに居場所はない」


 まぁ、予想していたことだ。事実、どうあがいてもこの条件では人数差は大きいハンデだ。これ以上のハンデなど求められないことは察していた。


 にしても……。


「ボブさん……アリスさんはまだ、このゲームの本質を理解していないみたいですよ。事前に情報を共有しておく必要がありますね」

 となりにで一歩前に出て質問していた森を前にして田村がつぶやいてきた。


「……俺もこのゲームの肝までは分かってないがな……。この感じでは不安は拭えないな」

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