第3話 圭たちの対応は?

 偽物と影武者の会合を終えたあと、圭は自宅にて思考を始める。まずは現状の整理だ。


 偽物長井は影武者に対して紙でやり取りを行っていた。話の筋から考えればその紙にエンゲームに関することが書かれているのだろう。場所と時間を指定するようなものか、連絡先か……。


 もっとも、そもそも彼らにつながりがあるなら、その紙自体大した意味もないことにはなるが……。


 どちらしても、エンゲームを行う場所は人気がない場所になることには違いない。少なくとも、今回の会合のように、観衆がたくさんいる中ではかなり動きが制限されるからだ。


 特に、今回の演説で解放者アリスと偽物は互いに偽物を言い合った。観衆は長井に対しても少なからず疑問を抱いているものもいるだろうし、公開エンゲームは避ける。


 あとは、今後のことについてか……。まずは、長井が森、解放者アリスに連絡をよこしてくるかってところか。

 もし、エンゲームを解放者と偽物と王の三つ巴にするというのならば、連絡をよこしてくるはずだ……。


 もちろん、長井が王に対し勝手にエンゲームを挑む構図も考えられはするが、この状況においてはかなり薄い可能性だ。


 ここは、長井からの連絡を待つとするか。



 その予想は的中しており、その日のうちに森からLIONを通じて連絡が飛んできた。やはり、長井は森に対して連絡を出してきたのだ。


『内容は……「来週の月曜日放課後、特別棟四階、一番奥の部屋に来い」というものだった……』


 時間場所指定か……、やはり、影武者に対しても同じ情報を……?


『あと……、「君の要求どおりの客人を用意した」と……』


『そいつは素晴らしいな……』

 奴は三つ巴をしてくる……、可能性としては王と偽物対、圭たちである可能性も考慮されるか……。


『人数の指定とかはないのか?』

『とくにはないね……』


 ……なるほど、時間場所のみか……であれば、その場でエンゲームを始めるというわけではないのか……。


『今回はどういうメンバーでいくの?』

『……そうだな』


 もし、エンゲームをしないと見込むなら、森一人だけを連れて行きたい。現状、形として偽物が知っている本物は森ただ一人であるのだから、色々な可能性を考慮して情報を伏せておきたい。


 だが、もしエンゲームをするとなったら状況は一変して不利になる。もし、人数差が有利に働くゲームとなれば、まずその差を埋める交渉から始まるし、交渉が成功しなければさらに悪手。


 とくに、長井と王がつながっている可能性を考慮すれば、複数人で挑むのが正解。やはり、最低でも森と圭の二人だ……。あと一人、次郎を呼び込むかどうかだが……。


 王に対しても次郎の存在ははっきりと示していない。この情報アドは残しておきたい……。前回みたく裏で情報を共有させるために使いたいな……。


 と、ここまで来て上がる人物は……。


『元気ですか? 解放者さん』


 やはりきたな、田村零士。割って入ってきたそのいつからのLION通知を流し見ながら、顎に手を当てた。


『アリス……田村から連絡が来た。また、あとてで連絡を出す』

 森にその通知を送ったあと、思考回路を協力者田村と話す解放者ボブのものへと切り替えた。


『どうした? なにかようか?』

『何か用って、わたしが何を言いたいのかぐらい、わかりますよね? 今日のことですよ、今日のこと』


 まぁ、確かに聞くまでもないことだな。


『しっかりと見させてもらいましたよ。アリスだけ出して、君は影から見物ですか? ところで、もうすでに長井敏和から連絡が来たのではないですか?』


 ……お見通しか。

『だとしたら?』


『もし、長井や王とエンゲームをすると言うのならば、わたしもぜひ読んでください。解放者側として参加させてくださいよ。役に立ってみせますから』


 やはり……こう来るのか……。無論、圭も可能性としてさっき考えはしたが……。


『お前を横に置くのはリスクが高い。お前の存在はゲームをする上で不確定な要素になってしまうだろうが』


『釣れないですね……。でも、わたしも真の王を倒したいという思いが一致しているじゃないですか。契約もしてそれは確かなものになっています。

 そのため、わたしは全力であなたを応援しますよ』


『だが、お前もまだ、キングダム側の人間であるという事実に変わりはないからな。エンゲームともなれば、ましてや王との直接対決ともなれば、どうあがいても不安要素を拭えんぞ。


 お前がいくら弁解しようと、それは決して揺るがない』


『なにかしら王がわたしに手を回している可能性だって……あるかもってことですよね? 言いたいことは分かります。ですが、せっかく掴んだチャンス……しっかりと確実に掴むには、むしろここでこそ組むべきでは?』


 ……せっかくのチャンスか……。


 まったく……、正直な話、ここまでの流れ、圭が動き掴んだものというよりは、こいつ田村に動かされてつかまされた感覚が否めない。だが……手を組んでいるという状態なら、それでも目的達成に影響はでない……。


 とにかく、王を倒せば勝ちなんだ……王を取れば……。


『悩みますか? であれば、エンゲーム当日……いや、君たちが長井や王と合う当日、その前に一度わたしを会ってください。そこで契約を修正しましょう。

 これから先のエンゲームにおいて君が安心できる契約を作りましょう』


 ……そうきたか!

『契約の改正……か』


『そうです。君もわたしをそばに置いておける、安心できる契約内容を考えておいてください。わたしも君に信じてもらえる契約内容をしっかり考えてきます。それでも、納得できないというのならば、わたしを置いて彼らに立ち向かってくださいよ。


 むろん、そんな選択肢など浮かばない契約条文を考えてきますけどね』


『……いいだろう。その条文次第では……切るぞ』


 まったく、とことん食いついてくる男だ。

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