第7話 対策さぐり
「では六戦目を始めます。ブラインドベットを」
今回、ボタンは森だ。SBは仮の王、BBは圭となる。強制ベットをポットに入れながら考えた。
とにかく今は、冷静に……愚直に……、可能性は考慮して。
情報の得方が隠しカメラか次郎の買収だと仮定すれば……それに対抗できる対策は……。
カードが配られると同時に二枚を完全に重ねて机に伏せた。誰にも見られないように小さくめくり、ランクとスート(トランプのマーク)を確認する。
そしてきれいに重ね、机に伏せなおした。そして、手でそれを覆い隠す。
突然作戦を放棄しだした圭に、さすがに森も動揺したらしく視線を寄せてくる。
『おい、ボブ。俺、手札見えてないぞ。アリスに伝えられないだろ』
むろん、その次郎の声は森にも届いただろう。だが、取りあえず今はそのままでいい。少なくともこれだと次郎にも隠しカメラにも情報はわたってないはずだ。
「早速、真似事? 別に手札など覗き見してないし、なにより契約によってできないのだから、そこまでしなくてもいいんだよ? 自分の好きなやり方でプレーしていいんだからね」
「まあ、ちょっとそれっぽく真似してみたい年頃なんでね。
……それとも……こうやって伏せて手札を重ねられると……不都合でも? もし、気に入らないのなら考え直そうか?」
「……好きにしたらいいけどね」
今回のUTGは田村、一番先にベットする。
「では、ファーストベットを」
森の促しで田村が動く。
「レイズ一枚で」
計三枚が田村の手から放たれる。
そして、次は森の手番。
『おい、ボブ。手札を見せろ。森が動けないだろ』
悪いが動くわけにはいかないのでな……。とにかく察してくれと森のほうに視線を合わせ続けた。対する森もこちらをうかがっているように見える。
「どうしたんです? 君の番ですよ?」
自分の手番を終えた田村が森を煽るように見てくる。
対して森は静かにコールした。
さらに全員がコール。
ポットに十二+三枚が出揃う。
SBである仮の王から順番にカードを交換。まず、彼女は二枚交換。
次は圭の番になる。ここで、圭は今一度落ち着かせるため息を吐いた。
コミュニティカードはクラブKとハート5、クラブ2。ここで圭が取るべき行動は……
「交換はしない。このままでいく」
手札二枚を重ね、手で覆い隠しながらそう言った。
そのセリフにより森も含めて全員の視線が圭に集まった。対して圭は特にリアクションを取ることもなく、顔をうつむかせた。
伏せてあるカードに視線を寄せながら。
『おい、手札がいいのか? 超強いのか? 言っとくかアリスは役なし、ブタだぞ』
そんな次郎の言葉を軽くスルーしながらうつむき続ける。
カードを交換せずにうつむく。普通ならいい手札で笑みがこぼれるのを隠しているように見えるだろう。
だが、仮面の裏ではひたすら真剣な表情で次の一手を考えていた。
田村の手札交換、一枚だけ交換を果たす。
最後は森、こちらにじっと視線を寄せてくる。
『おい、ボブ。答えろ! アリスはどう動いたらいいんだ? お前の手札が分からないと、アリスはどう行動したらいいのか分からないだろう!』
圭は反応しない、というかできない。ルール上それは不可だ。
『お前はカードを交換しなかった。それは無論、いい手だと判断していいんだよな? 今のアリスの二枚とお前の二枚、そして公開カードそれを含めて』
……。
『分かった……アリス。交換はなしだ。それでいこう』
森はその後もしばらく黙ったが、やがて交換なしを宣言した。
「……ではセカンドベットに」
森はSBの仮の王へ最初のベットを促す。
が……机をトントンと軽くたたいた。
チェック……様子を見るということだ。まあ、そりゃそうなるだろうな。おそらく仮の王は次の圭のアクションに注目するつもりだろう。
さてと……、このオープニングベット、どういくかな……。
圭は手元に有るチップを触りながら机の中央を見ながら、一手を打つ。
「ビット……上限いっぱい」
そう言ってチップ十枚をポットにたたきつけた。
またもや圭は三人の視線をかっさらう。
さあ……どうでる? こちらはカードを隠している。相手には見えない状態だ。だが……もしこれでも相手に情報が筒抜けならかなりやばいことになる……が。
次のアクションを起こす田村は仮の王と顔を合わせた。ルール上、あからさまな意思を伝えるのはダメだ。だが、表情を読み取る程度なら可能。
「フォールド」
田村は特に悩むといった様子もなく勝負を降りた。必然的に仮の王も降りることになり、このゲームは圭たちの勝利となった。
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