第12話 解放者契約
集団契約『解放者契約』
第一条 仮面ファイター5103(以下甲という。)、ドラゴン@ハンターGXアーキタイプ(以下乙という。)及び543レイン(以下丙という。)はグループ:キングダムを倒し、乗っ取るべく結成された解放者である。
第二条 甲、乙及び丙は解放者として動く場合、仮面を装着し、正体がばれないよう細心の注意を払いながら活動する。
第三条 甲、乙及び丙は仮面を装着している間、互いの姓名及び姓名を連想させるあだ名などで呼び合うことを禁止する。
第四条 丙は仮面を装着している間、甲及び乙に対して敬語を使用してはならず、甲と乙が行うのと同じような雰囲気で接すること。
第五条 甲、乙及び丙は仮面を装着する姿を全契約者以外の他人に見られてはいけない。
第六条 甲、乙及び丙は解放者であること、この契約のこと及びこの三人の関係性を口外及び発信してはならない。
「徹底してるな……」
「そうですね……でも、これぐらいのものを見せてもらわないと……。少なくともわたしたちが墓穴を掘るようなミスは絶対避ける必要があります。徹底できるところはするべきですね」
「ほかに何か契約の提案があるなら聞くがどうだ?」
圭がそう二人に尋ねると次郎は特にないといった表情を見せたが、森は何か考えた。
「契約とは関係ないですけど、本当に徹底したいなら変声器を使用すべきかと」
そんなことを言われ、確かにとすぐ感じた。もちろん、仮面をかぶっている間は意識して声を変えればある程度はごまかせても、やはり無理があるだろう。
声……真剣に見破る目的で聞けば、それは確かな情報となってしまうだろう。
「それはいいと思う。だが……変声器などどうやって手に入れる? まさか、毎回ヘリウムガスでも吸うわけにはいくまい」
「スマホに変声アプリも存在します。とりあえず電話に関してはこれで問題ないかと」
「変声マイクならネット通販で買うのが一番だろうな」
なるほど……そろえることはできそうだな……。
「よし、それでいこう」
「なら、俺が買っとくよ。通販で買った足跡残さないようしとくべきか? ほら、履歴を消すとか、受け取りをコンビニとかにして住所を特定されないようにとか。いや、本気でやるならパソコンの中にある根本の履歴から削除」
「流石にお前のパソコンにクラッキング仕掛けてくるほどガチな野郎はいないだろうからそこまでしなくてもいいと思うぞ、うん。大体、お前にそんな芸当できるのか?」
「無理だ」
「知ってた」
次郎の即答にこちらも即答で返してやった。
「無線とか用意するべきか?」
「いらん。俺たちゃ警察か! 自衛隊か!」
「盗聴の恐れを考えて」
「盗聴の恐れを考えるなら、相当な代物用意しなけりゃいけないと思うが」
「……なんだよ、せっかくいろいろと俺も意見だしたのに」
「加減を知れ、加減を」
「なんだよ、さっきと言ってること違うじゃねえか。しすぎることはないとか行っていただろうが……」
「おう、そうか。ひとつ修飾語を付けてしてやろう。俺たちに出来る範囲で、だ。できないことを無理にする必要はない。墓穴掘っても知らんぞ」
「真剣にやってます?」
「「はい、すみません」」
森が例の冷たい表情を向けてきたので、とりあえず黙ってうつむいた。しかし、すぐ一つ言い忘れていたことを思い出し、顔を上げた。
「無線機で思い出した。俺との連絡の取り方だけど、基本的に小林圭としてはこのガラケーで取り合おうと思う。
スマホで連絡を取るときは解放者としてということになる。周りからはもう徹底して、小林圭はガラケー持ちだということで統一しておきたいと思う」
「……なんかそれ、せっかくスマホ持ったのに、残念だな」
「……いいさ……これが終わったら自由にスマホを使えるようになるし」
「先輩……ここで妙なフラグを立てるのはやめときましょうよ」
「…………」
「実際、ひとつ前のフラグは丁寧に回収してるしな。おかげで圭がキングダムに少なからず解放者として疑いをかけられている中で動くことになったな」
「……だ、だからこそこうやって念には念を押した対策をしている。これからは徹底して解放者としての俺たちと普段の俺たちは切り離して動くことにするぞ。いいな?」
「「……了解」」
そうしてその意思を確かめるためにも、圭たち三人は同時に集団契約「解放者契約」を同意し、成立させたのだった。これによって契約的にも正式に解放者が結成された。
「あ、ところであたしが用意した水、飲まないんですか?」
「「ギクッ」」
…………。
「……そ、そうだぞ、次郎。せっかく後輩が用意してくれたんだ。さっさと飲めよ」
「俺に毒見させる気か!?」
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