第13話 作戦会議
解放者契約を成立させてから、圭はずっと対キングダムの策をねっていた。
キングダムを倒す、森の目的を果たすことができる手としては、大きく二つ挙げられる。
一つは、キングダムの集団契約ごと解除する方法だ。ネイティブを解放したときと同じ方法というわけだ。
だが、キングダムの集団契約も王の許可なしに解除するのは不可能なようになっているらしい。まあ、当然だよな。
そして、なにより問題なのはあの情報網だ。王に契約解除の意思を締めさせたところで、三分の二の了承を得ることが出来る可能かも問題だ。
もう一つの手は、やはりキングダムを乗っ取ること。王を倒し、その上に君臨することさえできれば、解決する。
この二つの手のうち……まだ可能性が見込めるものは……なんて考えるまでもない。どちらも同じぐらい難しい。大体、どちらにしても学年、性別全てにおいて正体不明の王を見つけ出し、倒すなり言いくるめるなりしなければならない。
だが、せっかく乗っ取れる仕組みになっているのだし、なにより既に乗っ取られる前例が起こっている状況だ。乗っ取りを目標にすることでいいだろう。
では、ここで問題になってくるのは……どうやって、王の正体を突き止めるか、ということになってくるが……。
『何とかして、王を呼び出すことはできないものかな?』
森からメッセージが送られてくる。
今、次郎、森、そして圭の三人グループのLIONチャットを利用して、会話していた。LIONに表示される名前は「アリス」「ボブ」「チャーリー」で固定させてある。よって、正しく言えば今の発言は「アリス」からのもの。
そして、例の契約によって、LIONのメッセージでも森は敬語をやめている。
『出来たら苦労はないな』
王は徹底的に正体を隠しに来ている。よっぽどのことがない限り、自ら正体を明かすよう名前はしないだろう。ならば、そのよっぽどのことを起こさせればいいのだが……いや、そもそもよっぽどのことがあっても正体を晒すかどうか。
『なにかしら弱みを握れたら、それを餌にして王を呼び出すこともできるかもしれないけどな』
今度は次郎がそんなことを言い出す。だが、それに対して森がすぐに返事を返した。
『弱みを握れたんだとしたら、その時点でほぼほぼ王の正体掴めてない? むしろ、弱みを握るといったことも目的に無まえて、じゃあ、そのためにどうしようか、って話をしているわけだよね』
『……だよな』
そのまま、しばらくメッセージの更新が途切れる。まあ、こんなことになるのは大体察しが付いていた。
そして、薄々感づいてはいた案をテキストに打ち込む。
『やはり、王様を真っ先に取りに行くのは不可能らしいな。であるなら、ピラミッドの下から順に登っていくほかないんだろうな』
『まあ、ひとつ上の人物であるならば、分かっているのだから、従順に潰していけばいずれ王のもとにたどり着ける……という話にはなるね』
『セオリーだが、確実な方法っぽいな。四天王を倒さずに魔王を倒すなんて選択肢がそもそも無謀なんだろうぜ』
次郎がゲームみたいな言い方をしてきたが、その表現は消して間違っていない。もっとも、今回であれば、四天王のうち、一人でも倒せば王のもとにたどり着ける可能性は十分あるだろう。王の正体を知るのが第一目標なのだから。
『ってことは、あたしのひとつ上に立っている人物から叩いていくってことになるのかな?』
森はそうメッセージを送ってきたが、それに対しては圭が先に返事を返した。
『その人物はキングダムの立場としてはどの程度なんだ? それこそボブが言う四天王クラス……王に近い存在なのか?』
『いや、確信を得ることはできないけど、そんな高い立場にいる奴ではないと思う。少なくとも四天王クラスである可能性はかなり低いと見ていい』
『その根拠は?』
『情報の伝達スピード。情報が王を中心に送られてくる以上、全体メッセージのあと、王に近ければ近いほど直後に上からメッセージが流れてくる。でも、あたしの場合、ほとんどが一日以上空いていた。三日ほど遅れてくることもざら。
上から順に個別に情報を送る以上、末端になればなるほど情報は遅れて入ってくる。上が意図して遅らせている、ということでもない限り、王にそこまで近い人物だとは思えない』
なるほど……確かにその通りだ。
『であるならば、そいつよりはもっと王に近そうな人物を知っている。そいつをひとまずのターゲットにしよう』
『そんな人物を知っているの?』
『あぁ、聞いて驚けアリス。そいつは自らの口で『王』と名乗った人物だ。この状況だと、かなり面白い相手になりそうだと思わないか? 少なくともボブが言う四天王クラスに近い可能性はある』
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