第8話 キングダムの契約条文
書かれた内容を見てみた。
『グループ:キングダム 個々契約(甲のアカウント名)+No』
第一条 『グループ:キングダム』の組織に置いて、甲は乙から見て『上の立場』、乙は甲から見て『下の立場』となる。
2 この立場は『グループ:キングダム』の組織に置いて、情報伝達の上下関係をしめすものである。
第二条 乙は甲から個々のチャットを通じて『キングダムからの情報』という前置きで情報を受け取った場合、『グループ:キングダム』の組織に置いて、乙から見て『下の立場』となるアカウントに同じ情報を個々のチャットを通じて展開しなければならない。
2.乙はこの契約で発生する場合を除き『キングダムからの情報』という前置きで情報を展開してはならない。
第三条 甲は乙から個々のチャットを通じて『キングダムへの提案』という前置きで提案を受け取った場合、『グループ:キングダム』の組織に置いて、甲から見て『上の立場』となるアカウントに同じ提案を個々のチャットを通じて報告しなければならない。
第四条 甲乙の間で勝手にこの契約条文を変更することはできない。
2.「グループ:キングダム」の組織に置いて、甲から見て『上の立場』から『契約内容の変更』という前置きで変更条文の情報を受け取った場合は、乙に同じ情報を伝達したあと、必ず契約内容を情報通りに変更しなければならない。
3.契約内容変更後、乙は『グループ:キングダム』の組織に置いて、乙から見て『下の立場』となるアカウントに同じ情報を伝達しなければならない。
4.乙はこの契約で発生する場合を除き『契約内容の変更』という前置きで情報を展開してはならない。
第五条 乙は別のアカウントを『グループ:キングダム 集団契約』(代表:甲)の集団契約に加入させるには、この契約と同じ内容のもの(タイトル、アカウント名はその限りではない)をその別のアカウントと成立させなければならない。
さらっと見た感じ、この個々契約は「グループ:キングダム」の情報伝達を確実に行うために特化したものとなっているらしい。
そして、この契約条文は非常に面白いと感じた。
コントラクトのルールうまく回避するための工夫が確かに施されているのだ。
この契約には「乙から見て『下の立場』というこの契約と直接関係ない第三者がでてくる。そして、ルール上第三者を拘束する契約は効果が得られないとなっている。
この契約では一見、第三者を拘束してそうだが、第三者に行っているのはあくまでも情報の伝達、展開。その情報が展開されたあとの話は、この契約ではなく、この契約における乙とさらにその『下の立場』との個々契約で処理される。
この契約の中では、情報を伝達される側に拘束されることはなにもない、という格好になるわけだ。情報を展開することが拘束になるはずがない。
また個々契約の中では甲と乙以外の情報は入っていない。ゆえに、この契約では、甲のさらに上の立場の人物、逆に乙のさらに下の人物のことは、何も分からない。言ってしまえば直属の上司と部下しか、顔が分からない形になっている。
そしてこの契約を下へ下へと連ねていけば、情報がしっかりと最後まで流れてくれる。本当に……練られた契約条文だと感じ取れた。
契約内容を簡単に変えることができないという点も重要だ。もし、勝手に変えられたら、その時点で情報伝達に支障が出てしまう。
この形にすることにより、王が自ら契約内容変更の指示を出さない限り、契約が変わることはない……だが……。
「なるほどね……一番てっぺんを叩かれたわけだ」
「そうです。組織形態を守ろうとする第四条が、逆に組織の方向を大きく変えられてしまうきっかけにもなりました。
確かに、王の意思が絶対に近い組織でした。その絶対のもと、ある程度の支配から逃れられる保証がありました。でも、その絶対者が叩かれたら終わり。簡単の乗っ取れることができてしまうということです」
おそらく、この話は本当のことだろう。これが全部作り話だというのならば、いくら何でもこの契約は考えられすぎている。だが……これほどの契約を考える人物は……少なからず馬鹿ではないはず……。
だが、そいつは負けている……エンゲームに負けたのか、なにか陥れられたのかは知らないが……この契約を作り、大きな組織を作り上げていった人物を負かすやつがいたということだ。
「ま、間違いなく、その乗っ取った奴は……要注意人物だろうな」
「はい……そして、それがあたしたちの敵です」
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