第12話 攻める圭
目の前の男子生徒がネイティブであることを確定させた圭。
対して、ネイティブは、自分をネイティブだと認める言動を見せてなお、諦めた様子は見せていなかった。
「なるほどな……。小林圭……どうやら、お前の牙が……随分と俺の首に近づいてきたみたいだな……」
「……くだらない言い回しですね。余裕でも見せているつもりですか?」
「余裕を見せている? いやあ、余裕だね」
ネイティブは後ろから見ても分かるほどに、強烈な笑みに表情を変えてきた。
「ところでお前、何が目的だ? 俺の正体を破って……何をしたい?」
「あなたも分かっているのでは? 当然、エンゲームを申し込むためですよ」
「断る」
……想定はしていたが、想像を遥かに超えるほど、間髪入れず、何一つ動揺することなくきっぱりと断ってきた。この状況で……そんなはっきり言えるのもなのか……。
「断る? いいのですか? あなたのことを学校中に言いふらしますよ。ネイティブの正体があなたであるということを。
あなたは随分と好き勝手やってきた。今、ネイティブの正体がバレたら、どうなるでしょうね」
ネイティブは圭の脅しに対して、理解しているというように首を縦に振ってくる。状況は理解しているというような仕草をする。しかし、「だが」と言いながら、人差し指を天に向けてきた。
「浅はかだな、小林。どうやって俺の正体をバラす? お前、俺の名前でも知っているのか? 知らないだろう? それとも顔写真か? 無理だろう。いつ、俺の顔を撮れる時間があった? タイミングがあった?
お前は俺の正体をばらまく術なんてないんだよ。少なくとも今はな」
圭はネイティブの言い分もまた、正しいことを理解している。
「つまり、今のお前は、俺にエンゲームを挑めるほどの立場はない。改めて、俺の名前か顔写真でも手に入れてから、出直してくるんだな。
その間に……俺は対策させてもらうとしよう。小林圭……少し舐めていたが……今度は油断しない」
「何を勘違いされているんですか? 今度はないですよ?」
「……なに?」
はっきりと言い切り、圭はスマホにある画像を映し出し、ネイティブの前に持っていった。流石にその画像を見たネイティブから、息が漏れる音が聞こえてきた。
「……この写真……」
唐突にあたりを見渡すネイティブ。だが、周りには誰もいない。
「いつ撮った?」
「俺があなたの背中についた時に……」
「ふざけるな。これはどう考えても前から撮ってる。てめえ……仲間がいたのか?」
「正解です」
圭がベンチで待機するより前から、次郎には校門の近くで隠れながら待機してもらっていた。そして、圭がネイティブと思しき人物に接近したとき、その人物の顔を写真に収めるように指示。
あとはその写真を送ってもらって、こっそり別の場所に移動してもらっていた。
「まあ、「こんにちは、ネイティブ」なんて話しかけられたら、周りに注意を向けるほどの冷静さは失われていたみたいですね」
ネイティブは圭のスマホを奪おうと手を伸ばしてきた。当然、その行動は予想済みだったので、スマホをすぐに引っ込め、代わりにネイティブの後ろ頭を掴む。決してこっちに顔は向けさせない。変にやつに心理を読まれるのは避けたい。
「別に、エンゲームを断るというのならばそれでも構いませんよ。そうなった場合、俺はこの写真とネイティブの正体だというコメントを合わせて、学校中にばらまくだけです。
もう、そこまでなったら、例えあなたが本物のネイティブであれ、偽物であれ、あなたにとって都合の悪いことはたくさんあっても、いいことはないでしょうね」
「……小林……!」
「怒るなら好きに怒ってください。でも、これだけは答えてもらいますよ。俺のエンゲーム……受けてくれますか? それとも、断りますか?」
ネイティブはしばらく沈黙を見せていた。手がワナワナと震えているのが見える。おそらく、ネイティブは今、どうにかして圭を出し抜けないか、打開策はないか思考を巡らせていることだろう。
だが、ネイティブは黙ったまま、首を横に振った。その反応に合わせて、圭は掴んでいたネイティブの後頭部を離す。それに対し、少しは安堵したのか大きく息を吐いたネイティブは、こちらにちらりと顔を向けてきた。
「いいだろう、そのエンゲームに乗ってやる」
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