第13話 連行開始
エンゲームにやっと乗ってきてくれネイティブに、圭はネイティブの後ろに陣取り続けた。
「では、これから俺が支持する場所に行ってください。俺は後ろをついていきます。少しでも妙な動きをするようなら、すぐにあの顔写真はネットに拡散します。
もう、俺が一回スマホをタップすれば、拡散できるという状況であることを承知願います」
「分かったよ……そこまでしなくても従ってやる。どこだ? どこへ行けばいい?」
「俺とネイティブが、初めて出会った場所です」
そこでネイティブは黙りこくった。
「今更、知らないなんて……言わせませんよ」
「……それ、俺がネイティブかどうかを、確かめるために言ってるんじゃないのか? だったら、その支持に従う理由はないな」
「写真」
「……ちっ、分かったよ」
いろいろあがこうとしていたが、ネイティブはやがて、再び校舎に向かって歩みだした。圭はその後ろをついていく。
少し遅い足取りで目的地に向かうネイティブの後を歩きながら、ネイティブのことを観察してみた。
とりあえず、今の段階で言えるのは……おそらくネイティブは警戒を怠っていたらしいということか。
もし、取立てのあと、本当に警戒していたならあのあと、三十分程度で出てきたりしないだろう。圭が想定していたように、部活動を終わらせた生徒たちに混ざって下校する。
ましてや、一人だけの状態で校門を出ることなど、圭だったらまず避ける。
そこまでしなかったのは、そこまで思考が回らなかったということもあるかもしれないが、やはりそこまでする必要はないという思いがあったからだろう。今のネイティブにとってこの状況は、想定外のはずだ。
ならば、ここで畳み掛ける以外の選択肢はない。
「ついだぞ。ここでいいんだよな?」
ネイティブがある教室の前で足を止める。特別棟四回、奥から2番目の教室は、確かにネイティブと圭が初めて出会い、そして初めてエンゲームを行った場所。
「ええ。その通りです。さあ、入ってください」
ネイティブは黙って従ってくれ、教室へと入っていく。そして、完全に中へ入ると同時に、ネイティブの視線が教室に元々入っていた人物へと向けられた。
「……お前……西田次郎か……まさか、てめえがこいつに手を貸していたのか? そんな馬鹿な……契約していただろう!」
次郎にはあらかじめこの教室にて、エンゲームを行うためのセッティングを行ってもらっていた。そんな次郎に向けて怒りを示すネイティブ。だが、そんなのは百も承知だった圭はあらかじめ次郎にこの場合のセリフを指導していた。
「安心してください。契約に従っています。あなたの契約に従って、小林圭、お前を止めに来た。お前にネイティブとエンゲームをさせるわけには……いかない」
そう言って次郎は圭に近づいてくる。これに対して、無論圭もセリフを準備していた。だが、ネイティブは圭の用意していたセリフより先に言葉を発した。
「やめろ。今変にこいつに手を出すのは絶対に避けろ」
「……ほぅ」
「そう指示しないと、お前……写真をばらまくとか、言い出すんだろう?」
……わざわざ、俺がプレッシャーをかけるまでもないということか。こいつ、的確に自分の現在の立場を理解している……。
「さすがですね……正直、そこまで見越していたとは驚きました」
そして次郎はネイティブの指示に従ったように、黙り一歩後ろに下がる。ここで少しは次郎に食い下がってもらったほうが、ネイティブの信頼を得られただろうが、まあ、充分な成果で出ている。贅沢は言うまい。
むしろ、全てはここから。まだ、舞台のセットが整っただけ、勝負はまだまだこれから……、ここでいかに圭の思惑通り事を進められるかが、勝負の鍵となる。
「さあて、ネイティブさん。早速交渉を始めましょう」
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